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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年6月号

私のコミュニケーション保障

コミュニケーションツールの文字盤、パソコンについて

中村忠一

私は岩手県紫波町在住の在宅の65歳の男性です。2003年1月に盛岡の岩手医科大学でALSの告知を受け、翌年の2004年12月には盛岡の友愛病院で気管切開をしてカニューレを取り付け、同時に胃ろうのチューブも取り付けました。

ALSの進行は個人差が有り、私は進行が早くて、気管切開してカニューレを取り付けると声を出せなくなりました。声を失うと、身振り手振りで意思伝達をするか、文字盤かパソコンで意思伝達をするしかありません。身振り手振りには四肢が徐々に動かせなくなり、すぐに限界がきました。

パソコンも初めは手で操作していましたが、それもできなくなり、次は足の指で、現在は、手足の指は全く動かず、動くところは左の眉が少しと顎の噛む力だけです。そのため左の眉には合図をするためのセンサーを24時間取り付けていて、文字盤のときも合図に使用します。口は歯で空気のチューブを噛んでパソコンを操作しています。

私のパソコンのソフトはオペレートナビです。これは、もりおか往診クリニックの木村先生にインストールしていただきました。その他のソフトもオペレートナビではできないものをインストールしていただいています。

現在のパソコンは2台目ですが、オペレートナビをはじめいろいろセットアップしていくときに、よくフリーズして困りました。1台目もそうでした。今は時々です。フリーズすると文字盤でしか意思伝達手段がありませんので、仕方なく時間がかかっても一字ずつ伝えて、パソコンを元に戻していただきます。

日中の、看護士やヘルパーさんの訪問時はパソコンで意思伝達しています。夜は、パソコンを止めるので文字盤だけです。家内も慣れてきて、文章ではなく単語で、たとえば、文字盤の「あ」のときは、暑い、頭、足、顎というように家内が聞いてくれます。日中に、パソコンがフリーズするときがあります。事前に、回復方法を説明してあるので何とか元に戻してもらいます。

ただ、3.11のように停電すると、文字盤しかありませんので、普段から練習しておけばよかったと思っても後の祭りです。東日本大震災のときは、呼吸器の電源確保のため盛岡赤十字病院に入院させていただきました。ついついパソコンでするのが楽なので、文字盤よりパソコンになってしまいます。

これまでも病院に入院すると全く文字盤が通用しないので、退院するまでノートパソコンを点けたままのときもありました。文字盤の重要性は認識しています。文字盤については、ぜひ担当する看護士やヘルパーさんには折あるごとに知っていただきたい、練習していただきたいと思います。

眉に付けているセンサーは、少しの動きでもキャッチしてくれますが、目を動かしても眉が動いてキャッチしてしまいます。文字盤のときは鳴り過ぎて、受け取る人は当然ながら鳴ったところの字を読みますので人を呼ぶにはいいのですが、文字盤にはいまいちのところがあります。あくびでもくしゃみでも鳴ります。

最近は、視線を下に向けるときに時間がかかるため、文字盤が近過ぎるとなかなかうまくいきませんし、視線を上に向けるとセンサーがキャッチして鳴ってしまいます。自分で考えて作ってもらったものなので、文句を言えません。センサーはピエソニューマティックセンサスイッチにマイクロインダクターとコンデンサーを直列につないだもので、マイクロインダクターに磁石が近づくと動作することを利用しています。磁石は模型のモーターを分解して取り出したものです。

オペレートナビは時々フリーズしますが、使い勝手はよいと思っています。各ソフトをアプリケーションに登録するとワンクリックで開けます。各ソフトに応じたキーボードを作成して関連づけると使い勝手はよくなります。また、キーボードに文字ばかり並んでいると数が多くなり探せないので、絵を作って表示しています。キーボードの配列、大きさ、数は自由に作成できるので使い勝手がいいようにしています。1年程前から小さい字を見ると疲れるので、拡大鏡を使用して画面の上5分の1くらいに表示させています。

ソフトはいろいろ利用しています。メールはOutlook Express、文章作成したり意思伝達したりするときはメモ帳、調べものや買い物、ラジオを聞くのはInternet Explorer、私はよく買い物をします。電気部品や身の回りの物です。まず良さそうな品物を探して、次にその品物の型番で検索します。同じ品物でも随分と価格が違うので一番安いところに注文しています。

その他、利用しているソフトを列記します。ボリュームコントロール(音量調整)、Word(文章作成)、Excel(表計算、文章作成)、ペイント(主にオペレートナビの絵を作成)、Mdia Player(CD、ビデオの再生)、Sonic Stage Mastering Studio(FMチューナーの録音、再生、CD作成)、Click to DVD(DVD作成)、DV gete Plus(ビデオ編集)、ムービーメーカ(ビデオ編集)、フォトコレクション(写真編集)、筆まめ(年賀状)、オートON/OFFスケジューラ(フリーソフト・夜中にFM放送を録音)、jw cad(フリーソフト・図面作成)、クロッサム(テレビ鑑賞)。

最後に、介護者の吸引の講習のときに、ぜひ、文字盤の練習も組み入れていただきたいと思います。

(なかむらちゅういち 日本ALS協会岩手県支部)