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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年7月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●軽くて、長さもピッタリ!傘の心、他●

提案者:勝矢光信 イラスト:はんだみちこ

勝矢光信(かつやみつのぶ)さん

1947年生まれ。進行性筋萎縮症。江東区の夢グループに所属。障害者の旅行や散歩を研究。著書『車いすといっしょに旅に出よう!』(日本経済新聞)。


軽くて、長さもピッタリ!傘の心

移動が完全に不可能になって、周囲の物を引き寄せるのに「傘の心」が大活躍している。軽くて、ちょうど良い長さなので、遠い物を引き寄せるにはリーチャーよりも便利だ。

作り方は簡単で、傘の周囲のビニールと枝を外し、心棒だけにするとグリップと心棒で平仮名の「し」の字になる。

使い方は、グリップを握って先端で押したり引いたりする。また、逆にして、グリップの部分に物を引っかけて、おもいっきり引っぱると、パンやヨーグルトなどサバイバルに欠かせない食品を手元に持ってこられる。

以前は、70cmのリーチャーを使っていたが力が入らなくなったので、今はもっぱら「傘の心」を使っている。美的にするには、ペンキスプレーで彩色すれば良い。簡単にできる工夫なので、皆さんもぜひ試してほしいと思う。


使いやすい日本の伝統的工芸品、曲げわっぱ

秋田杉でできた「曲げわっぱ」の湯のみは、きわめて軽い。手に力のない私でも、持ち上げられる。ラーメンやうどん、ご飯、おかずなどを、この「曲げわっぱ」に分割して入れてもらい、少しずつ自力で食べる。

これは妻が青森旅行のときに見つけてプレゼントしてくれたもので、大切に使っている。妻はいつも、軽くて使いやすいものを探しまわって、機会あるごとに買ってくる。

この「曲げわっぱ」を使うことで、自力での食事を維持できるのは、大きな喜びである。いつまで手で持ち上げて、口元にスプーンを運べるだろうか?右手首を左手で支えながら持ち上げて、一口一口お茶を飲むたびに、日本の伝統技術のすばらしさ、見事さに感動している。

福祉機器と名がついていなくても、伝統に磨かれたものは使いやすい。北欧の食器にも使いやすく、優れたデザインが多いというが、日本の伝統品もそれに負けないほど良くできている。このような品物を探す旅もおもしろいだろう。


操作はこれ1本で。学習機能付きリモコン

私は1本のリモートコントローラーで、エアコン2台、テレビ2台、リフト、電灯を操作している。リモートコントローラー数機を使って暮らしている障害者は多いが、リモコンを一つにまとめると、とても便利である。

私は、2年前からソニーの「学習機能付きリモートコマンダー」を使い始めた。同じようなコントローラーが、数社から販売されている。

以前、押しにくいコントローラーを床に落としてしまい、リフトで宙吊りになったショックが大きかったので、軽い力で操作できるコントローラーを探して、購入した。だが、リフトは外国製なので、もしかしたら日本製リモートコマンダーは使えないかもしれないと恐れたが、それも杞憂となった。容易に使いこなせて、家中の電気器具の操作を1本のリモコンでできるようになった。驚きと感動であった。

このリモコンは方向を定めなくても、電波が飛ぶ。ただ、エアコンの温度表示はないなど、欠点もある。また、コントローラー自体、やや重たい。しかし、キーは押す力が無くても軽く押せる。これが一番である。

これでとても快適な生活になった。運命に負けてはいけないと思う。