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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2012年9月号

列島縦断ネットワーキング【東京】

NPO法人ぱれっと設立30周年記念イベント
「ぱれコレ2012~融合と創造~」障害の有無、世代を超えたファッションイベント

左右木歩

7月29日(日)、東京・恵比寿を拠点に独自のアイデアと実践を通して社会に挑戦し続けてきたNPO法人ぱれっとが設立30周年を記念し、渋谷の文化ファッションインキュベーションにて「ぱれコレ2012~融合と創造~」を開催しました。このイベントは、障害のあるなしだけではなく0歳から90歳までの幅広い人たちが出演し、専門家を含め100人を超える協力者と共に創り上げたファッションエンターテイメントです。前売り券は販売開始より3週間で完売するなど、その斬新な企画が反響を呼びました。当日は第1部、第2部公演とも満席となり約300人のお客様が来場。ステージ上ではこの日に向けて準備を進めてきた出演者が個性溢れるパフォーマンスを力いっぱい表現しました。

開催の経緯

「誰もがこの社会の中で生かされていて、そして自らを社会に活かしていくことができる」。それが、私が知的に障害のある人たちとの出会いを通して感じたことです。障害の有無にかかわらず誰(だれ)にでも得意なこと、不得意なことはあります。障害があるが故に健常者にはできることができないというケースは確かにありますが、一方で、健常者にできないことを簡単にやってしまう障害者もたくさんいます。

たとえば、それが「感じるままに自分を表現すること」であったりします。なかには人の胸を打つほど豊かな表現力を持っている人もいるのです。その表現は社会のルールや概念に縛られている私に、何かとても大事なものを気づかせてくれるものでした。彼らの「表現」に大きな「価値」を感じ、彼らの表現を多くの人に知ってもらいたいという思いで、2010年に障害のある人とない人が共に創り上げるファッションショー「ぱれコレ2010」を開催し、大きな反響をいただきました。

「ぱれコレ2012」とは

違う色と色とが交ざり合い、新しい色が生み出され、それが思いもよらない彩りに変わり、人を魅了する。ぱれっと設立30周年を記念するこのイベントは、まさに「ぱれっと」の名前の通り、人と人との結びつきから生まれる無限の可能性にワクワクし共に未来を描く、そんなイベントにすることを目指し、昨年12月に実行委員会を立ち上げ、準備を進めてきました。実行委員には職員だけではなく、ぱれっとで活躍するボランティア、外部協力者で構成されました。

1.多くの協力者と共に創り上げる

ステージ作りにはプロの演出家、音楽家、デザイナーが関わってくださいました。また衣装制作では、株式会社オカダヤ様から生地や服飾材料をご協賛いただき、杉野服飾大学の学生有志、NPO法人ユニバーサルファッション協会に所属するデザイナーたちが制作を手掛けてくださいました。当日のヘアメイクチームとして「Tokyo de Volunteer(ビューティーアクティビティーを提供するボランティアグループ)」を筆頭に、ヘアメイクの専門学校BeSTAFF MAKEUP UNIVERSALの学生たちを含む約30人の方が集まりました。その他、音響、照明、映像や撮影などさまざまな分野の専門家と、設営や運営では多くのボランティアがイベントを支えてくれました。また、ゲスト出演したNPO法人自然生(じねんじょ)クラブの「田楽舞」や笹塚和太鼓の会の太鼓演奏も迫力に溢れ、観客を魅了しました。

2.開催資金集め

昨年12月に実行委員会を立ち上げた「ぱれコレ2012」ですが、私たちが目指していたのは「障害者のためのチャリティーイベント」ではなく、入場料をしっかりいただき、見ごたえある一つの作品としてクオリティーの高いステージでした。そんなステージを創るためには、まずは第一に資金が必要となります。全体の予算として、200万円の出費が見込まれたこのイベントの開催資金集めの方法として、さまざまな資金集めに取り組みました。公益社団法人ヤマト福祉財団様からいただいた助成金100万円を足がかりに、今回始めて「クラウドファンディング」というインターネットを使った支援金集めにもチャレンジしました。またその他にも協賛企業集め、個人の方からの寄付集めを行い、開催資金を確保することに成功しました。

3.ステージ創りに向けたワークショップ

このイベントの最大の見どころは、出演者自身の個性溢れる「表現」です。一般公募で集まった出演者約30人の表現を引き出し舞台にしていくために金野泰史氏(舞踏家)をファシリテーターとしてお招きし、4月から計5回、ワークショップを行いました。実際にワークショップを開始してみると、出演者、私を含めたぱれっとの職員共に本格的な舞台づくりが初めてのメンバーばかりのなか、出演者の型にはまらない自由な表現を作品として創り上げていくことは想像以上に難しいものでした。

ワークショップの回数を重ねるごとに「もっとみんなできるはず」と思いながらも、出演者の豊かな表現力を引き出し切れないもどかしさや、自分の力量不足に焦りを感じる時期もありました。しかし関係者、協力者が紆余曲折ながらも気持ちを一つに、出演者たちの可能性を信じ、彼らが大いに楽しみながら自由に表現できる空間創りを続けたことで、その期待に応えるように出演者からも活き活きとした動きが出てくるようになりました。

そして迎えた「ぱれコレ本番」

ステージでは「色」をテーマに、白・青・赤・黄の4つのチームが、華やかな衣装を身にまとい登場。見どころはなんと言っても、関係者・協力者の期待以上に活き活きとした輝きを放った、出演者一人ひとりの圧巻のパフォーマンスです。

会場の一体感と熱気。そして観客の大きな拍手と歓声。なかには涙を流しながら見ている観客もいるほど最高の盛り上がりとなり、イベントは大盛況のうち終了しました。

以下、観客の皆様からいただいたアンケートの一部をご紹介します。

●興奮して涙が出そうでした。来てよかったです!ここ最近で1番心が動かされました(22歳女性)●クオリティーが高くてアートとして楽しめましたし、ファッションがその人の個性を引き出してくれるものだと改めてその役割を感じることができました(27歳ファッション関係女性)●目が奪われました。出演者一人ひとりがその人らしくいること、存在することの楽しさを伝えてくれました(24歳女性)●明るく力強く本当に良いひと時でした。皆さんから元気をいただけたようで楽しかった(68歳男性)●各々が目を輝かせて真剣に精一杯出し切っている感じで、特にフィナーレが感動的で涙が出そうになりました(77歳男性)●皆の色が鮮やかでした。人のエネルギーを感じました。神秘的な空間でさわやかな気持ちになれました。素敵なステージでした(43歳男性)

最後に

私たちが暮らすこの社会は障害のある人だけではなく、高齢者や赤ちゃん、外国人などさまざまな人たちで構成されています。さまざまな人たちが、違いを認め合いながら関わり合い共に生きていく。そんな社会を目指し、私たちNPO法人ぱれっとは、これからもさまざまな分野の多くの方たちを巻き込みながら共に活動してまいります。私たちぱれっとの「これから」を、ぜひ応援お願いします。

(そうきあゆみ NPO法人ぱれっと)