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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年2月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●「白杖」は自信を持って歩く私の象徴、他●

提案者:野々村智子 イラスト:はんだみちこ

野々村智子(ののむらさとこ)さん

弱視で、全盲の夫と2人暮らし。障害者相談支援センターに勤務。小・中・高校を地域の学校で学んできた経験からインクルーシブ教育に関心があり、視覚障害児(者)の点字教科書等の保障を求める会に所属。現在、当会代表。


「白杖」は自信を持って歩く私の象徴

白杖。ご存知のように、視覚障害者が歩く際に持つ白い杖ですね。私はその杖を持つようにしています。こう書くと多くの方は「当たり前じゃないか。それのどこが工夫なんだろう?」とお思いではないでしょうか?

実は、私のように杖がなくても歩けないわけではない弱視者が白杖を持つまでには、ある程度の葛藤と相当の勇気が必要な場合が少なくありません。「自分が白杖を持った時、これまで親しくしていた人は今までどおりに接してくれるだろうか?」「白杖を持つことによって、自分には必要でない手助けをしていただくことになるのではないだろうか?」等々。

では、私がなぜ白杖を持つ決心をしたかと言うと、「自信を持って歩きたい」という思いがあったからです。白杖を持つことによって戸惑うこともありますが、自分は目が見えにくいということを周囲の人に知ってもらうことで、回りの人も自分も、気持ちよく歩けるようになったと実感しています。


困っている時はさりげなくアピール

障害があると、人のサポートをお願いする場面がたくさんあります。私の場合は、スーパーやデパートで買い物をする時や慣れない場所に行く時など、あげればきりがありません。

困った時は、周囲にいる人に自分から声をかけられればいいのですが、それも視覚障害者にとっては至難の業。

私などはよく、「すみません」と声をかけて、慌ててイヤホンを外させてしまったことが何度もあります(ゴメンナサイ)。急いでいる人には声をかけにくいのでゆったりとしている人を探す結果なのですが、イヤホンをしているかどうかは見えづらく、そのたびに申し訳ない気持ちになります。

そこで私がしているのが、「困ってます」オーラを出すことです。地図を出して辺りをキョロキョロ。買い物で商品が見つからない時は、「○○…、○○…」と呟いてみます。私もオバチャンになってきたのかな…(笑)


全盲の夫との役割分担は細かい説明で

障害のあるなしにかかわらず、夫婦の役割分担に関しては、みなさんさまざまな工夫をされているかと思います。

うちの場合は、夫が全盲、私が弱視で共働きです。私の方が自由になる時間が多いので家事の大部分を担っていますが、休みの日には、手伝ってほしいなぁと思うもの。

でも、慣れていない家事をいきなりやりこなすことは、「見よう見まね」ができない全盲の人にとっては無理なこと。それを期待して怒ってしまっては、やってもらえるはずのこともやってもらえない結果になるかもしれません。

私は、確実にやってもらえるように細かく説明します。どこにあるか、どんな形をしているか、どのようにすればどうなるか、など。多少の違いは気にしません。ただし、性格によって、伝え方の好みの違いがあるかとは思いますが…。

一緒に家事ができれば、夫婦の絆も深まりますよ(^^)