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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年9月号

フォーラム2013

「精神保健福祉法」の改正とこれからの課題
―家族会の立場から―

川﨑洋子

評価できるもの

◆家族会の長年の要望が実った―保護者制度の削除

保護者制度とは、精神障害者をもつ家族に課せられるもので、家庭裁判所で認定を受け、一生その責務を果たさなければならないという家族に重責を負わせるものであった。

そもそも精神障害者とその家族の制度は、今から100年以上前に制定された「精神病者監護法」に始まる。精神障害者を病者として位置づけた。当時は、治療技術が未発達で、薬や他の治療法が開発されていない状態であったため、一部を入院させ、その他は医師の診断の元、本人の家族に私宅監置させることであった。その後、制度が改正され、私宅監置はなくなったが、この保護者制度は存続し続けてきた。

この保護者制度の保護者義務とは、治療を受けさせること、医師の指示に従うこと、財産上の利益を保護するなど、精神障害者を物心両面で世話をすることであった。家族会は他障害にはないこの制度は差別的であり、削除を訴え続けてきた経緯があり、今回の改正は評価できるものとしている。

◆精神障害者の医療の提供を確保するための指針の策定は賛成

特に、訪問支援の充実、多職種による医療提供の推進は、家族の負担を軽減し、受診・受療の機会を広げ、健康な生活を維持するために役立つものと考える。特に在宅医療の充実が望まれる。

今後の課題

◆医療保護入院に際して、家族等の同意が条件づけられたことは遺憾

この家族等の同意を要件とすることは、本人と家族等との軋轢(あつれき)を生じさせるもので、家族に過度の負担をかけることから、今までの保護者制度の弊害を払拭するものではない。

附則にあるように3年後の見直しでは、「家族等の同意」を削除し、また、本人の権利擁護の仕組みとして、代弁者制度を定めることが必要である。

◆これからの精神科医療について―家族の期待―

まず、入院制度については将来的には措置入院と任意入院とすべきで、強制的な入院制度である医療保護入院はなくすべきと考える。そのためには、訪問型の支援体制を充実させることにより、早期に治療につなげたり、必要な支援サービスが提供され、今のように重症化してからの入院はなくなっていくと考えられる。医療保護入院は必然的に必要ないものとなる。

また、現行の精神科特例は廃止されるべきで、精神科医療を一般医療化することにより解決できるものと考える。

(かわさきようこ 公益社団法人全国精神保健福祉会連合会理事長)