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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年12月号

1000字提言

「鎮魂から復興へ」
~福島からのメッセージ

大和田新

障害者の祭典「きょうされん全国大会」が、9月21日・22日の両日、福島県郡山市熱海町で開催された。

きょうされん(旧称・共同作業所全国連絡会)は、障害のある人たちが働く小規模作業所や授産施設などの全国組織。東北で初の開催となったこの大会には、障害者を含め全国から2千人を超える関係者が集まった。縁があって、私が大会実行委員長を務めた。

開会式の後、私が「鎮魂から復興へ」と題し、2時間30分のステージを担当。私にはどうしても全国へ伝えたい「福島からのメッセージ」があった。それは、福島県の復興・復旧を担う高校生をはじめとする若者たちの前向きな姿だ。

「鎮魂」のステージのオープニングは、福島県立いわき海星高校有志による「じゃんがら念仏踊り」。この踊りはいわき市の郷土芸能で、新盆を迎えた家を供養して回る踊り念仏。同校は津波で2人の生徒が犠牲になった。2人とも家族を助けに戻って亡くなった。友への鎮魂と震災で亡くなったすべての人のために彼らは踊った。チームリーダーの高橋純香さんが言った。「私たちはこれまでに、多くの人たちに支えられてきました。今度は私たちが笑顔で支える番です」と。会場は大きな拍手に包まれた。

「復興」のステージのフィナーレは、県立小名浜高校フラダンスチームが務めた。メンバーは3人だが、華麗でダイナミックな演技はステージの広さを感じさせなかった。同校は、「フラガールズ甲子園」で2年連続優秀賞を受賞。しかしこの春、3年生の卒業と同時にメンバーは1人となった。「このままではフラガールズ甲子園に出場できない」。草野七海(なつみ)さん2年生は、先輩の築いてきた「地域をフラダンスで笑顔にする」の精神を絶やさないために、同級生や後輩にフラの魅力を説いて回った。その熱意に2人の後輩が応えた。フラ甲子園まで2か月を切っていた。今年、同大会で小名浜高校は努力賞にとどまった。しかし、草野さんの目に涙はなかった。その表情は、仲間と踊り終えた充実感に満ち溢れていた。

3人を指導している元フラガールの横山寛子さんが言った。「大舞台を経験するたびに、彼女たちは成長して行く。高校生の力は計り知れない」と。

原発廃炉まで40年、気の遠くなるような歳月の先にある福島県の復興・復旧を担うのは間違いなく若者たち。高校生に見捨てられたら福島県は終わりだ。政治家や行政は分かっているのだろうか。


【プロフィール】

おおわだあらた。1955年生まれ。ラジオ福島アナウンサー。学生時代、朗読ボランティアに参加したのをきっかけに現在も障害者との交流を持っている。編成局長を経て2012年4月からは役員待遇編成局専任局長。