音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2013年12月号

列島縦断ネットワーキング【新潟】

「新潟県発達障害者支援体制整備に関する基本方針及びアクションプラン」について

新潟県福祉保健部障害福祉課

1 はじめに

本県では、平成25年4月、医療・福祉・教育・保健・労働等の関係機関が連携を図り、共通の視点に立って、発達障害者への支援を総合的、計画的に進めていくため、「新潟県発達障害者支援体制整備に関する基本方針及びアクションプラン」(以下「基本方針等」)を策定しました。これまでの本県の発達障害者支援の取組とともに基本方針等の概要についてご紹介させていただきます。

2 これまでの取組と基本方針等策定までの経過

県では、平成17年4月の発達障害者支援法の施行を受け、平成18年7月に「新潟県発達障がい者支援センター「RISE(ライズ)」」(以下「ライズ」)を開設するとともに、平成19年3月に「新潟県発達障害者支援体制整備検討委員会(以下「検討委員会」)」を設置、平成20年度からは、教育委員会が主宰する発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業運営会議(現 特別支援教育総合推進事業運営協議会)と共同開催しながら、発達障害者の支援のあり方等について検討を重ねてきました。

これまで、検討委員会が平成20年3月に取りまとめた、発達障害者支援の課題や対応策についての「中間とりまとめ」に基づき、「相談支援ファイル」(平成21年度)・「発達障がい者支援のための手引き~チームアプローチのすすめ~」(平成23年度)の作成、普及啓発のための公募によるシンボルマークの作成(平成21年度)や各種研修の実施等、優先度の高い課題から順次取組を進めてきたところですが、平成24年6月開催の検討委員会において、これらの取組を各地域に着実に普及させ、県内の一層の発達障害者の支援体制の整備を図るため、基本方針等を策定することとされました。

これを受け、平成24年7月に設けたワーキンググループにより、市町村の支援体制の状況を把握するため毎年度実施している「市町村基礎調査」の結果なども参考としながら検討が重ねられ、平成25年3月開催の検討委員会において「新潟県発達障害者支援体制整備に関する基本方針及びアクションプランの策定に関する提言」が取りまとめられ、本年4月、福祉保健部障害福祉課と教育庁義務教育課の連名で公表しました。

3 基本方針等の概要

基本方針等は、二つの基本方針とそれに連なる取組の柱、そして、具体的な取組となるアクションプランから構成されています。

基本方針に沿って取り組む期間は、平成25年度から平成29年度までの5年間で、当初3年間(平成25~27年度)のアクションプランを策定しています。その後の2年間(平成28~29年度)は、達成状況を評価した上で改めて策定することとし、必要に応じた見直しも適宜行うこととしています。

取組の体系

基本理念 基本方針 取組の柱と今後の取組・対応策
障害のある人もない人もお互いの個性を尊重し、支え合いながら共に生きる地域社会 身近な地域で適切な支援を行うための支援体制の構築 1 市町村を中心とした相談支援体制の構築
2 それぞれのライフステージに応じた支援・連携体制の構築
3 ライフステージ移行時の円滑な情報の引継
4 人材の育成
5 医療機関の確保及び連携
6 保護者支援
7 発達障害の理解の促進(県民向け普及啓発)
8 情報の集約
ライフステージに応じた支援体制の構築 乳幼児期の支援の充実 ◎早期の気づき
○市町村による体制整備(乳幼児健診の充実等)
○保護者への気づきの支援
◎早期支援
○療育支援体制の整備(発達支援コーディネーター配置、障害児通所支援の利用)
就学期の支援の充実 ◎気づきの強化
○教員の専門性向上(研修実施)
○保育所・幼稚園からの情報の提供(就学指導委員会への情報提供)
○校種間の情報の円滑な引継ぎ(小学校→中学校→高等学校への引継ぎ)
◎支援の充実
○小・中・高等学校における特別支援教育の充実(個別の教育支援計画の作成促進等)
○学校と福祉の連携強化(個別の教育計画と個別支援計画の連携)
○学校外の居場所の確保(障害児通所支援等の活用等)
○家庭教育の支援
○自己理解の支援
○生徒・保護者への発達障害の理解促進
○職業的自立、就労に向けた支援(職業教育、職場実習の推進等)
○保護者への特別支援教育の理解促進と卒業後の進路の周知(キャリア教育の実施)
成人期の支援の充実 ◎気づきの強化
○発達障害の理解・相談窓口の情報提供(相談しやすい窓口設置)
○専門医の情報提供
○学校中退・卒業後の情報の引継ぎ
○ひきこもりへの対応(ひきこもり地域支援センター等との連携)
◎支援の充実
○相談支援の充実(障害福祉サービスにつながらない人の相談支援等)
○生活支援の充実
○就労支援の充実

●基本方針1「身近な地域で適切な支援を行うための支援体制の構築」

県ではこれまで、ライズが「新潟県障害者地域生活支援センター」(各障害保健福祉圏域に設置した相談支援の拠点機関(以下「圏域センター」))とも連携して発達障害のある方の相談支援を行なってきましたが、発達障害に関する認識の高まりとともに相談・支援件数も増加し、離島や広い県土を持つ本県において、全県域でライズが直接支援を実施することは困難な状況になりつつありました。

一方、制度的には、発達障害が障害者自立支援法(現:障害者総合支援法)等のサービスの対象に明確に位置づけられるとともに、地域における相談支援体制の強化が図られ、市町村においても発達障害のある方の支援の取組が進んできました。このような状況の中で、ライズ、圏域センターと市町村等との連携を一層強化し、当事者ご本人と保護者ができるだけ身近な地域でニーズに即した支援が得られるよう、市町村を中心とした相談支援体制の構築に向けた取組を進めることとしました。

具体的には、県教育委員会との共催により、地域の行政、福祉、保健、教育、保育等の支援者および保護者を対象に、平成23年度から県内各地で開催している連携体制を推進する説明会を引き続き実施し、「相談支援ファイル」の利活用や「発達障がい者支援のための手引き」の周知とチーム支援・個別支援会議の進め方などについて、事例報告も交えて普及の働きかけを行います。また、ライズは、直接支援だけでなく、個別支援への助言等を通じた地域の連携体制を構築するためのコンサルテーションを行います。さらに、支援者育成のための研修や医療機関との連携のための医療機関調査、そして、保護者支援のためのペアレントメンターの養成・活用を図るとともに、シンボルマークの一層の普及、世界自閉症啓発デーを中心とした官民連携の普及啓発活動等に積極的に取り組むこととします。

●基本方針2「乳幼児期から成人期までのライフステージに応じた支援体制の構築」

乳幼児期においては、できるだけ早期の気づきと支援の実施が必要となります。県内の市町村においても乳幼児健診時のスクリーニングの充実が図られているほか、専門職による相談会や保育所等への訪問、保育所での発達支援コーディネーターの配置等による気づきと支援への取組が行われるようになってきましたが、これらの取組をさらに広く普及させる必要があります。

就学期には、教員の専門性の一層の向上はもとより、支援に当たっての学校と福祉との連携強化が必要になります。そして、保育所等から小学校入学時、中学校・高等学校への進学時、高等学校卒業後あるいは中退後の情報の引継ぎ等が重要となります。

また、成人になってから初めて相談される方も多いため、相談しやすい窓口の設置や専門医の情報提供、障害福祉サービスも活用した生活支援や就労に向けた支援の充実を図ることも必要です。ニートやひきこもりの中にも、発達障害があり支援を必要とする人が少なからずいらっしゃることから、地域若者サポートステーションやひきこもり地域支援センターとの連携も強化する必要があります。

これらの課題等を踏まえ、乳幼児期から成人期までのライフステージに応じた適切な支援と、その支援がライフステージを通じて途切れることがないよう取組を進めることとしています。

4 基本方針等の取組の推進

二つの基本方針は、発達障害のある方が県内どの地域においても必要な支援を受けられるようにするという「面」の整備と、年齢に応じた特有の困難を抱えるそれぞれの時期に適切な支援を受けられるようにし、その支援が次のライフステージに引き継がれるようにするという「線」の整備を進めるものです。面と線の両方の整備を進めることで、発達障害のある子どもから大人までを支える体制を作っていくこととなります。

今後、本基本方針等が机上のプランとならないように、関係機関と連携を図りながら、一つひとつの取組を着実に推し進め、それぞれの支援者が「発達障害者の自立と社会参加に資する」という共通の目的に向かって、自らの役割を認識し、責任を果たしていくことができる体制を構築していきたいと考えています。