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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年1月号

1000字提言

小規模作業所の想いを今こそ

福島龍三郎

私は佐賀市という地方都市で「ライフサポートはる」というNPO法人で福祉事業を行なっている。一つひとつの事業は小さいが、日中系事業(生活介護・B型・就労移行)、居住系事業(居宅介護・行動援護・移動支援)、居宅系事業(ホーム・ショートステイ)、児童系事業(放課後等デイサービス)といくつかの事業を行なっていて、それぞれの事業を活用して障がいのある方たちが「地域で生涯を通して幸せに暮らしてもらうこと」を目指している。

私が福祉事業を始めたのは平成14年であるが、もちろん障害者自立支援法の施行前で、いわゆる「小規模作業所」としてスタートした。当時は、補助金の低さにほとんどの小規模作業所の運営は非常に切迫しており、目の前のご本人やご家族のために何とかしなければならないという熱い想いで開設したものの、長期的な視点で見ると、事業の継続性も危ぶまれる状態でもあった。

とはいえ、運営的には厳しかったものの、小規模作業所は「障がいがあっても地域で当たり前に暮らす・働く」という熱い理想のもとに開設されたところが多かったので、ご本人やご家族との距離も近く、働くスタッフも理想に向けて懸命に働くという熱い時代でもあった。

障害者自立支援法についてはいろいろな立場からさまざまな意見があったが、少なくとも小規模作業所の運営者にとっては未来に向けて一隅の光を差し込んでくれた。そして、小規模作業所を利用していたご本人やご家族にとっても将来に向けたサービスの継続性が担保されたという面で大きな意味を持つ。

しかし、ご本人にとって本当に大きな意味を持つためには、小規模作業所から障害福祉サービス事業所に移行したそれぞれの事業所が、これからご本人のニーズや特性に合わせて事業展開ができるかどうかにかかっている。ややもすると、(小規模作業所の頃に比べれば)安定した収入が入ることに安心して、今までと同じサービスをただ提供しているだけという事業所もあるかもしれない。

しかし、「わが子に地域で当たり前に暮らしてほしい」と願い、小規模作業所時代から歩みを共にしてくれたご家族の高齢化は進み、これから家庭で支えていくことが厳しくなる世帯がどんどん増えていく。もちろんご本人の高齢化も進んでいる。日中系の単一事業だけでは、もはやご本人の生活を支えていくことが困難であることは明らかだ。

家庭で支える力が低下してきた時に、その代わりになる環境を用意しておくことが将来への備えであり、ご本人やご家族の安心につながる。

「障がいがあっても地域で当たり前に暮らす・働く」という小規模作業所の原点を実現するための正念場はこれからなのである。


【プロフィール】

ふくしまりゅうさぶろう。平成14年、佐賀市に「福祉作業所ハル」開設。現在、NPO法人ライフサポートはる理事長。NPO法人全国地域生活支援ネットワーク監事。障がいのある方たちが、地域と共に生涯を通して幸せに暮らしてもらうことを目指して活動中。