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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年4月号

障害者権利条約「言葉」考

「ユニバーサルデザイン」

後藤芳一

国連障害者権利条約はユニバーサルデザイン(UD)について、「調整や特別な設計をせず、なるべく多くの人が使える製品、環境やサービスの設計」(X)と定義し、「必要な場合は補装具も合わせて用いる」(Y)としている(権利条約第2条、政府公定訳を意訳(以下同じ))。

条約を締結した国は、障害者の人権と自由を実現するため、調節や費用が少なくて済むUDの製品、サービス、設備等を研究・開発、使用する、基準や指針を作る際にはUDを含めると約束している(第4条第1項f)。

大筋として4点を押さえておきたい。第1は、UDは障害者のニーズへの対応について、合理的配慮の基礎の部分になること。UDの定義(上のX)は、個別に調整・適合をめざすのではなく、共通の設計で効率よく多くの人が利用できることをめざす。その前提は、個別性が高くてUDで対応できないニーズは合理的配慮(例:補装具)で対応する(Y)ことがセットで提供されることである。UDが共通的・基盤的部分(家に例えると1階)であり、合理的配慮がより高度な個別対応(2階)にあたる。

第2は、UDには、合理的配慮の負担を抑える役割があること。合理的配慮(個別対応)は人的、経済的、利用できる知見ともに個別性が高い分だけ提供者側の効率が低くなり、その分、負担が大きい。よってUDは、極力広い利用者の、より高い水準に合わせて整備することが求められる。それによって合理的配慮は限られた資源のもとでよりきめ細かく対応できることになる。障害者差別解消法は行政機関や事業者の責務として「合理的配慮を的確に行うため、設ける施設のUD化に努めなければならない」(差別解消法第5条、意訳)としている。立派な家にするには1階をしっかり作る必要がある。

第3は、UDと合理的配慮は、互いを念頭において整えること。第1と第2を正しく押さえると当然のことと理解できるが、合理的配慮は差別解消法、UDは別の法律(例:バリアフリー法)で義務化しているため、国や自治体の担当部署が別であり、縦割になる恐れがある。現に差別解消法の条例を先取りして検討中の自治体があるが、合理的配慮だけ議論している。利用のしやすさに切れ目を作らないことという、実現すべき結果から逆算し、制度の谷間を作らない必要がある。

第4は、UDが障害対応全体の体系に位置づけられたこと。従来は個別部門的、技術的な政策だった。権利条約の背景に障害の社会モデルがあり、アクセシビリティ(政府公定訳では「施設及びサービス等の利用の容易さ」、上の第1では「障害者ニーズへの対応」とした)を確保するため社会環境の整備を求めている。UDは社会環境のうちで中心になる位置を占め、障害者権利条約、改正障害者基本法、障害者差別解消法という一連の体系の基盤を支える役割を担う。

以上から、UDの水準をみればその国の権利条約への対応の水準が分かるという「リトマス紙」の意味をもつことになる。

(ごとうよしかず 日本福祉大学)