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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年6月号

1000字提言

誰にとっても働きやすい会社とは

橋谷有造

お客様に役立つ商品とサービスの提供のほか、より広く社会に貢献できるCSR活動を積極的に推進している当社ですが、雇用も会社が果たすべき大きな社会的使命のひとつとして認識しています。

当社では現状、障がいをおもちの方に働いていただくために、特別な部署や業務を設けているわけではなく、適性を見て配属を行い、他の社員と同じ待遇で活躍いただいています。しかし全体の社員数に占める人数としてはまだかなり少なく、特に自閉症や発達障がいをおもちの方の採用についてはまだまだという現状にあります。CSR活動をきっかけに、ぜひ会社の戦力となってほしいと感じる能力をおもちの自閉症や発達障がいの方々にお会いすることもあり、そういった方々に当社で働いていただくためにはどのような環境が必要なのか、まずは私自身がきちんと理解する必要性を感じました。

そこで、当社のCSR活動で協力させていただいている一般社団法人Get in touchにご協力をいただき、当社の国内グループ各社関係者をはじめ、同じように感じていらっしゃる企業の方にもお声がけをし、障がい者雇用の推進に尽力されている専門家の方々をお招きした勉強会を2013年6月、11月に開催しました。

講師の方や、参加された企業関係者の方とのお話から、どのような仕事を担当いただくのが良いのか、というところで立ち止まってしまう点が各社共通の課題として示されました。それに対して、まずは働くことに自信を持っていただき、段階を追って戦力になっていただく、という考え方を持つことの重要性や、企業側は業務の洗い出しをして、場合によっては仕事を創り出す必要性があること、そして、入社される方の障がいの程度やその特徴を職場全体で理解することが特に重要であることを、講師の方の現場経験をもとにお話しいただきました。

なかでも、「配慮はぜひしてほしいけれど、遠慮はしないでほしい」という講師の方の言葉が大変印象に残っています。障がいをおもちの当社の社員に対しても、遠慮がなかったかどうか、個人の適性やキャリアを見据えた育成ができていたか、改めて考えるきっかけとなりました。その後、当社でも早速、業務の洗い出しから着手しましたが、今後、さらに専門家の方々の力をお借りしながら、個人の能力に応じた育成ができる環境整備に取り組んでいくことにしています。

企業の成長の原動力は、言うまでもなく「人」です。さまざまな個性、特性、意見を持つ人が集まり、お互いに切磋琢磨できる自由な環境を創っていきたいと考えています。


【プロフィール】

はしやゆうぞう。アメリカンホーム医療・損害保険株式会社 社長兼CEO。2010年より現職。「お客様中心主義」の徹底を掲げ、通販型保険会社の肝といえるコールセンター改革の推進や、がん経験者でも入りやすいがん保険の発売などの取り組みを行う。