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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年8月号

1000字提言

原産協年次総会から
~この温度差をどう埋めるか

大和田新

原子力産業に携わる電気事業者や原発関連企業、原発立地自治体などでつくる原産協(日本原子力産業協会)の年次大会が4月15日・16日の両日、東京有楽町の国際フォーラムで開かれた。2日目の16日には福島の復興を議論する、「福島セッション~福島の復興と地域再生」と題した討論会が行われ、私は、震災から3年1か月経った福島県の現状を次のように報告した。

「福島県は昨年暮れ、地震・津波による直接死を関連死が上回った。震災関連死の主な原因は、原発事故による無理な避難からくるストレスや持病(高血圧・糖尿病・高血糖・痴呆症)などの悪化。そして将来の不安から自ら命を絶つ人もいる。これは震災関連死ではなく、『原発事故関連死』である。この原発事故関連死を止めることが、福島県の復興・復旧の最優先課題である。特に、仮設住宅での避難生活は我慢の限界を越えている。

震災の翌年の3月1日、福島県立富岡高校卒業式で答辞に立った卒業生代表の18歳の少女が言った。『私達は人間がコントロール出来ない科学技術の発達によって、大切な故郷と母校を失った。しかし、天を恨まず、自らの運命は自らの力で切り開いていきます』と。震災からまる3年、原発はいまだコントロールされていない。最後にここにいる皆さんにお願いしたい。福島に来て、福島を見て、福島から聞いて、福島から学んでほしい」と。

1週間後、参加者からの感想文が送られてきた。「原子炉のオペレーターをしていた。事故は起きたが、国策による国の指針を守って運転してきた事業者をここまで責めなくても」「帰りたいけど帰れない。地元住民が原発が収束していないと考えているようだが、住民に正しい情報が伝わっていないのではないか」「怒りの矛先が東電に向いているのは理解できるが、仕事が無い理由等が本当に原発事故なのか疑問だ。冷静なデータを出してほしい」「汚染水の話があったが、下水処理した水も海に流している。それも安全とは言えない。もうそろそろ、福島原発の汚染水を放流した場合、どの程度の安全基準になるのか示してもよいのではないか」「大和田氏の発言に違和感を覚えた。マスコミ特有のサイドストーリーに終始しており、問題の本質を狭小化している」

この温度差を埋めていくのは至難の業だが、人は立場が違えば考えも違う。「原子力は必要だと強く信じて活動してきたが、大和田氏の話を聞いて心が動かされた」この感想文で救われた。私の10分間のスピーチは、フリージャーナリスト・堀潤さんの「8bit.news」に公開されている。


【プロフィール】

おおわだあらた。1955年生まれ。ラジオ福島アナウンサー。学生時代、朗読ボランティアに参加したのをきっかけに現在も障害者との交流を持っている。編成局長を経て2012年4月からは役員待遇編成局専任局長。