音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年8月号

知り隊おしえ隊

ゴールボール競技をご紹介します!

樫尚史

1 ゴールボール競技とは

◎歴史

本競技は、第二次世界大戦で視覚に傷害を受けた傷痍軍人の、リハビリ効果を促進するために考案されたプログラムの一つでしたが、1946年、ハインツ・ローレンツェン(オーストリア)、セット・ラインドル(ドイツ)の両氏によって、競技として紹介されたのが始まりと言われています。

パラリンピック大会には、1976年トロント大会(カナダ)で正式種目となり、1978年オーストリアでワールドチャンピオンシップが開かれ世界的に広まっていきました。

現在、IPC(国際パラリンピック委員会)の加盟団体であるIBSA(国際視覚障がい者スポーツ連盟)の公認競技であり、また、パラリンピック夏季大会競技の視覚障がい者競技(団体球技種目)として行われています。

◎競技概要、特徴、魅力など

この競技は、アイシェード(目隠し)を着装した1チーム3人の選手同士が、重さ1.25キログラムの鈴入りボールを転がすように投球し合って、味方のゴールを防御し、相手ゴールにボールを入れることで得点し、一定時間内の得点の多少により勝敗を決するものです。

本競技の特徴として、競技中の選手は「アイシェード」という用具を着装しなければなりません。これは、視覚障がいには、状況等により物体を認識できたり、光の明暗が分かったりする者もいれば、全く光すら感じられない者まで、その感覚に大きな幅が認められます。これを「アイシェード」という目隠しを着けさせることにより「見えない」という単一の状態にし、感覚の均等性を保たせています。

国際規則では、視覚に障がいが認められる対象者のみが選手として大会に出場できますが、この「アイシェード」着装という特性を活用することにより、国内では視覚に障がいがない者でも、選手として参加できるよう取り組んでいます。

次に、本競技のように視覚からの情報をわざと遮断し、身体を動かそうとする場合、それに代わる感覚として、「聴覚」や「触覚」を有効に活用する必要があります。物音を聞き分けたり、音源を探ったり、身体に触れるものがどの位置のものなのか、触れた位置からどの方向に動いたらよいのかなど、視覚以外の情報すべてを総合的に、瞬時に判断し、チーム内の選手個々が的確に動くこととなります。そのための手がかりとして、ラインの下に「紐」があり、触れるとその若干の隆起で、ラインの所在が分かりやすくなっています。

また、ボールの中には鈴が入っていて、転がしたりすると音源を示してくれます。さらに、バスケットボールなどの競技球のように、空気が入るような仕組みがなく、そのことでわざと弾みにくくしてあります。これは、この競技が二次元的な平面を活用することを主とする競技だからです。

ただし、パラリンピックなどに出場するようなチームの選手は、豪腕で、剛速球を投げ込んでくる選手ばかりなので、弾みにくくしてあるそのボールを、わざと弾ませることにより、三次元的な攻撃を仕掛けてきます。

これは、この競技で鍛錬された者たちのみができうる、最高のパフォーマンスであり、そのことがこの競技に魅了される大きな理由なのかもしれません。

2 日本における状況など

日本でこの競技が初めて紹介されたのは、1982年スポーツコンサルタントのクラウス・ボス氏(デンマーク)が来日し、都立文京盲学校で競技紹介が行われましたが、全国的な普及には至りませんでした。

1992年、現在の(公財)日本障がい者スポーツ協会による競技規則の翻訳が行われ、全国的に紹介されました。

これを機に、東京都多摩障害者スポーツセンターや京都市障害者スポーツセンター等でゴールボール教室が開催され、競技紹介と競技者の育成等に取り組むようになりました。

1994年、フェスピック北京大会に日本男子チームが初参加し、結果4位となりました。

同時に同年5月には、本競技の国内における普及・発展を目指し、その統括組織として「日本ゴールボール協会」が発足しました。

この後、パラリンピック出場を目指し、1995年8月、イギリスで開催されたパラ・アトランタ大会予選に男子チームを派遣(結果予選敗退)したのをはじめ、毎年、男女各代表チームをさまざまな国際大会に派遣してきました。

2003年8月、カナダで開催されたパラ・アテネ大会予選に女子チームが出場し、第3位となり、パラリンピックに初出場することになりました。女子チームは、2004年アテネにおいてパラ初出場ながら銅メダルを獲得することができました。

また、2008年パラ・北京大会に連続出場しましたが、8チーム中7位でした。この結果を反省材料に女子チームは、2012年パラ・ロンドン大会に3大会連続出場を果たし、金メダルを獲得しました(金メダル獲得は、国内の障がい者団体競技では初めてのことでした)。

男子チームは、残念ながらパラリンピックへはいまだに出場することができておらず、2016年パラ・リオ大会出場に向け、鋭意強化を図っています。

国内では、1994年当協会発足と同時に、当協会主催の「日本ゴールボール選手権大会」を開催し、選手の発掘・強化につなげてきました。本大会は、年度優勝チームを決定する大会として、毎年開催し、今年度で21回目(東京都青梅市)を迎えます。

また、大会開催に伴い、競技に必要な審判員養成など講習会等も毎年開催し、全国的な競技の紹介や普及・強化を行なってきました。

今後の取り組みや課題として、男女ともに選手をはじめ、チームやそのスタッフ・審判員等の人材を増やす必要があります。

冒頭にも触れたように、「アイシェード」を着装することで、障がいの有無にかかわらず本競技に親しむことができることから、視覚に障がいをもたない方々にも、奮って挑戦していただきたいと思います。視覚に障がいをもつ選手自らが、自分たちのチームを形成していくことは、最も望ましいことと思えますが、視覚に障がいをもたない選手がチーム作りをし、視覚に障がいをもつ仲間を迎え入れるようなことも必要に思います。

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催が決まりました。現在、大会組織委員会を中心に、関係各方面が動きを加速し始めています。当協会も本競技開催に向け、現任の役員や選手、関係者が一致団結し、まずは本大会成功に向け、力を注ぐこととなります。しかし、現在関係する役員等は、主とする本業を抱えている傍らで、この競技に関係している者ばかりです。海外の代表チームを受け入れるホスト国として、胸を張って精一杯のおもてなしをし、なおかつ、相応の競技結果をもたらすためには、早急に組織強化に取り組まなければならないと思います。そのためには、障がいの有無にかかわらず、本競技に関心を持っていただき、しいては、一緒に本競技を前進させていける人材を確保したいと望んでいます。

3 今後の予定

◎国際派遣大会

  • IBSA GOALBALL WORLD CHANMPION SHIPS(Finland)
    6月26日(木)~7月7日(月)
  • INCHEON 2014 ASIAN PARA GAMES(Korea)
    10月13日(月)~25日(土)

◎国内主催大会

  • 日本ゴールボール選手権大会男子一次予選大会(埼玉)
    7月26日(土)~27日(日)
  • 日本ゴールボール選手権大会女子予選大会(埼玉)
    9月6日(土)~7日(日)
  • 日本ゴールボール選手権大会男子二次予選大会(岐阜)
    9月27日(土)~28日(日)
  • 2014日本ゴールボール選手権大会(東京)
    11月15日(土)~16日(日)

◎国内共催大会

  • ジャパンパラゴールボール競技大会(東京)
    8月8日(金)~10日(日)
  • 京都ゴールボール大会
    8月30日(土)~31日(日)
  • 福岡ゴールボール大会
    8月3日(日)

(かたぎたかし 日本ゴールボール協会理事)