「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年10月号
工夫いろいろエンジョイライフ
実用編●50音ボード―通訳者を介さず直接コミュニケーション、他●
提案者:森敦史 イラスト:はんだみちこ
森敦史(もりあつし)さん
先天性盲ろう者。目は光が分かる程度、耳は補聴器装着時に大きな音は聞こえるが、声の判別などはできない。また発話もできないため、主に触手話(相手の手に軽く触り、手話を読み取る方法)などを使用。現在はルーテル学院大学で社会福祉を学んでいる。
50音ボード―通訳者を介さず直接コミュニケーション
私は普段「触手話」や「指点字」というコミュニケーション方法を使っています。しかし、周りは手話や点字を知らない人が多いので高校時代に行なった単独での買い物の練習をきっかけに、一般の方とコミュニケーションが取れるよう、50音ボード(文字盤)を作りました。
プラスチック製のボードには墨字(普通文字)と点字の50音が書いてあるので、指で指し、相手に言いたいことを伝えます。たとえばりんごを買いたい場合、「り・ん・ご」と一文字ずつ指すことで、店員さんに伝えることができます。逆に店員さんが私に何かを言いたい時は、私の指を持って、文字の上に「わ・か・り・ま・し・た」と一文字ずつ指し、伝えてもらうこともできます。
そうすることで、点字や手話が分からない店員さんと通訳者を介さずに、直接やり取りができるようになりました。50音ボードは買い物だけでなく、単独での外出や大学生活の中でも役立っています。
コミュニケーション用カード―よく使う単語や文章はあらかじめ用意
通訳者を介さず、直接コミュニケーションできる50音ボードは、一文字ずつ指して相手に要件を伝えるため、難しい内容や長い文は伝わりにくく、時間がかかるという欠点があります。高校時代の買い物では、濁音や半濁音を含む「ペットボトル」がうまく伝わらず、困ったことがありました。
そこでよく使う単語や文章は、あらかじめカードにして、相手に見せる方法も取り入れています。
最近は一人で列車やバスを使うことがありますが、その時には「私は盲ろう者です。お手数ですが、ホームまで誘導をお願いします」と書いたカードを改札にいる駅員さんに見せています。
また「遅れ」「地震」「火事」「事故」「切符確認」など、緊急時にも使える単語を一つのカードにまとめたものもあります。
音声点字携帯情報端末「ブレイルセンス」の活用
私がもう一つ外出時に持ち歩いているものとして、ブレイルセンスという機械があります。これは、点字が使えるスマホ、あるいはパソコンと思っていただければ、大体どういうものなのかがイメージできると思います。
15センチ×30センチ程度の大きさのキーボードで、下部に点字が表示されています。ブレイルセンスは、メールやインターネット、テキストデータの読み書きなど、パソコンの基本的な機能に対応しています。ですから、この機械を使うことで、外出中も列車の時刻を調べたり、点字を知らない人とメールをしたりすることができます。
ほかに普通のパソコンとつなげられる点字ディスプレイなど、視覚障碍者や盲ろう者向けの点字に対応した機器が発売されており、最近は、さらに小型化されたものもあるようです。