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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年6月号

患者の立場から

新たに医療費助成対象にはなったが…私の不安

岡部夏実

私はigA腎症(慢性糸球体腎炎)という腎臓の病気がある。igA腎症という病気は、腎臓の糸球体にigAという物質が沈着し、血尿や蛋白尿が現れ、慢性的な炎症が起こる病気である。このigAという物質は本来、私たちを守ってくれる免疫物質であるが、扁桃炎などで本来とは異なるタイプがつくられ、これが糸球体に沈着してしまう。

2015年1月1日から、新たに医療費助成の対象になった疾患ではあるが、結論からいうと、私が医療費助成を継続的に受けるのはとても難しいようである。

2年前の春、たまたま行なった尿検査の値が著しく悪く、早急に専門医へ受診することを勧められた。その頃から今現在に至るまで、自覚症状はほとんどなく、日頃の生活に不自由を感じたこともほとんどないため、半信半疑ではあったが受診し、服薬による治療を開始した。

1年間服薬を続けたが、あまり効果がなかったため、昨年の春、腎生検を行い、igA腎症と診断された。事前に医師からこの病気であるという可能性について説明されたことはなく、診断されたときも「難病」とは伝えられなかった。そのため、病院から帰る電車の中で、医師から聞いた聞きなれない病名をインターネットで検索した際に、「難病」という言葉が目に飛び込んできたときはとても驚いた。

そこから約1年間、扁摘パルス療法というものを行なってきた。まず、igAをつくる両扁桃腺(へんとうせん)を摘出し、その後2か月に1度、5日間程度点滴をするために入院をする。入院と入院の間は服薬を続けた。3回目の入院の後、徐々に薬の量が減らされた。一時期は毎朝8粒の薬を飲んでいたが、今は1粒だけである。私が医療費助成を継続的に受けるのはとても難しいようである、と前述した理由はここにある。

igA腎症は、新たに医療費助成の対象にはなったが、その対象要件は、現在の私の状況では難しいのである。

【対象要件】 *(1)(2)の両方に当てはまらなければならない

(1) 対象となる指定難病に罹(り)患していると認められる方

(2) 次の1.又は2.のいずれかに該当する方

1. その病状の程度が、あらかじめ定められた重症度分類の程度にある方

2. 1.に該当せず、同一の月に受けた指定難病に係る医療費の総額が、33,330円を超えた月数が、申請を行った日の属する月以前の12月以内にすでに3月以上あった方

まず、(1)については要件を満たしている。問題は(2)についてである。

私は、igA腎症の中でも軽度に分類されている。主治医にも相談したが、軽度なので重症度分類からの申請は難しいのではないか、と言われてしまった。つまり、(2)の1.の要件は難しい。そのため、2.の要件が必要となる。今年1年間は、昨年行なった扁摘パルス療法が毎回設定されている金額を超え、3か月以上あったため、この要件は満たされると考えられる。しかし今後は、毎月の受診費用と薬代では設定されている金額には到達しないため、継続して医療費助成を受けるのは難しいのである。

毎月かかる医療費は、医療費助成要件の対象となる金額には届かないものの、毎月のことであるため、その負担は大きい。また、現在の症状は軽度であるが、自覚症状がほとんどない分、いつ進行するのか分からない。何か他の病気を併発するのではないかという怖さや不安もある。服薬していた薬の影響で風邪をひきやすくなっていたり、igA腎症自体の症状はあまり感じないが、その影響を感じることは多くなってきている。

最終的に人工透析になる可能性もあり、そのときのことを考えると、医療費助成対象になったことはとても喜ばしいことではある。しかし、医療費助成を必要としているにもかかわらず、継続的に対象要件に含まれることができないのは残念である。

私は、軽度のうちに病名が分かり治療を進めることができているが、病名が付けられるまで何年もかかることや、その症状の変化などによって、病名がいくつも挙げられるということも耳にしたことがある。

医療費助成の対象要件の(1)では「指定難病であること」と明記されているが、これでは同じ疾患の人でも、病名によって助成を受けられるときと受けられないときが生じてしまうのではないか、病名が決まるまで申請すらできないのではないかと感じる。

また、この指定難病に含まれていないが医療が必要であり、医療費が負担となっている方もたくさんいると感じる。病名という括(くく)りを取り払い、病気と日々闘う仲間が医療費助成を受けられるようになることを願う。

(おかべなつみ DPI日本会議事務局)