音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

  

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年6月号

患者・家族の立場から

新たな医療費助成制度について
1型糖尿病患者家族として思うこと

丸尾佐織

このたびの制度改正に伴い、小児慢性特定疾病は従来の514疾病から704疾病に対象が拡大されました。私たち1型糖尿病患者としましても、制度改正の趣旨には一定の理解をしています。しかし、私たち家族にとっては、制度改正は負担を増大させるだけのものでした。結果、現在の負担額が2倍にまで跳ね上がってしまいました。

1型糖尿病は、現在の医療では完治することができず、一生インスリンを打ち続けなければならない病気です。それにもかかわらず、国における難病指定はおろか、内部障害としても認められず、小児慢性特定医療者受給制度(以下「小慢制度」という)で受給できる助成は18歳あるいは20歳になると打ち切られ、何の助成も受けられないまま健常者と同じ3割負担の高額な医療費を支払わなければなりません。

1型糖尿病患者にとって、幼少期や青年期の血糖コントロールの良し悪しが、その後の合併症である網膜症や腎症等の病気の発症時期を左右する重大な要素の一つですが、血糖値を比較的安定した状態で維持するには、インスリンポンプの使用が望ましいのです。しかし、インスリンポンプは注射に比べて医療負担額は月額2万円以上高く、とても高額になります。そのために、負担を考えてインスリンポンプを泣く泣く諦(あきら)めざるを得ない方も少なくありません。せめてこの小慢制度を利用できる間だけでも、今以上の経済的負担を課さないでほしいと思うのです。

この制度は、患者に公平で安定的な制度をということで実施されていますが、本当にそうなのでしょうか。私たち1型糖尿病患者やその家族にとっては、制度改正のたびに負担が増えているのが現状で、このたびの制度改正は、生活にさらに重く圧(の)し掛かっています。

私は、医療が進んでも経済力がなければ十分な医療は受けられないような社会になってはいけないと思うのです。1型糖尿病患者にとってインスリンとは、命を繋(つな)ぐ、なくてはならないものです。インスリンがなければ72時間で患者の命が絶えてしまいます。この重さをぜひ分かってほしいのです。せめて、生命に直結するインスリンだけでも患者の負担から外していただけたらと思います。

私は、病気を抱え生きている患者がよりよい人生を歩み、安心して医療を受けられる社会こそが私たちの望む社会であると考えます。誰でも等しく十分な医療が受けられる制度改正であってほしいと切に願ってやみません。

(まるおさおり 近畿つぼみの会会員)