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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年6月号

列島縦断ネットワーキング【愛知】

新たな出会い 新たな恋が生まれる!
AJU恋愛プロジェクト「ばりあふりー合コン~みんなで恋活~」の取り組み

石田長武・小野澤美希・上山健司

AJU恋愛プロジェクト「ばりあふりー合コン~みんなで恋活~」は、(社福)AJU自立の家の職員研修から生まれた企画で、職員研修の課題として、グループワークでプロジェクトを立案し、内部でのプレゼンを経て選ばれたプロジェクトの一つとして実施したものです。

入所施設や親元などからの障害のある人たちの自立生活が叫ばれてから長い年月が経ち、その間に障害当事者たちの努力により障害福祉制度も整備され、今では地域で当たり前に自立生活を送る障害のある人たちが全国に数多くいる時代となりました。

しかし、果たして自立をした障害のある人たちは、障害のない人たちと同じ生き方ができているのか、自分が歩みたい人生を選んで歩めているのか、という思いがあるのも事実です。自立は単に手段であり、目的はその人なりの幸せを掴(つか)むことのはずです。

過去に法人の職員研修の企画で、障害のある仲間へ「夢」についてアンケートを行なったことがありました。すると「結婚したい」という夢が一番多かったこと、そして「結婚したいが、出会いの場が少ない」といった仲間たちの声も踏まえて、自立後の一つの人生のかたちである「結婚」へつながる恋愛をテーマにしたプロジェクトの立案に至りました。

プロジェクトの内容は、全国のCILの仲間を集めた大合コン大会。障害がある、なしは関係なく楽しく参加してもらい、素敵なパートナーを見つけてもらうこと。ただし、パートナーを見つけることも大事ですが、「恋愛」というみんなが盛り上がるキーワードを通じて、障害のある人により元気になってもらうことも重要な目的としました。

全国130か所のCILに男女25人ずつの参加募集の案内を出して参加を呼びかけ、当初は女性の参加者が少なくて心配しましたが、最終的には関東や関西、沖縄などから、男女合わせて40人の人たちに参加していただくことができました。また、地元のメディアにも取り上げていただき開催しました。

合コンでは、テレビ番組の“ねるとん”のようなイメージで、男女が楽しめるようなバーベキューやゲームなどを企画し、愛知県の小牧ワイナリーにて2日間にわたって開催しました。

開催に向けた準備段階では、まず、参加者の自己紹介の方法について考えました。一人ひとりが順番に行うことも考えましたが、さまざまな障害のある方々の参加が見込まれていたため、どのような形式で行うのが良いのか、大変悩みました。そこで、テレビ番組でもお馴染(なじ)みの「回転ずし方式」を採用することにしました。横一列で等間隔に並んでいる女性のところへ男性が順番に回り、男女それぞれに各2分間ずつ、1組4分間で自己紹介を行うものです。短い時間ですが、この方法であれば、お互いに相手の顔を見て話すことができ、その後のフリータイムで、話したい相手を見つけるのに参考になるのではないかとの考えによるものでした。

イベント初日は、お天気にも恵まれた小牧ワイナリーの自然の中、ボランティアの方々にもお手伝いをしていただきながら、べーベキューが行われました。各テーブルでは、焼き肉や焼きそばなどをおいしく食べながら楽しく交流を図りました。また、ビンゴゲームでは、男女混合のチーム制で行いました。ここでは一番初めにビンゴした方が、一番の目玉賞品のディズニーペアチケットを当ててしまうという驚きの展開がありました。しかし、チーム制にしたことで、それぞれに交流が生まれ、大変な盛り上がりを見せたのでとても良かったと思います。

最終日には、フリータイムや告白タイムが行われました。フリータイムでは、お互いに気になる方を誘って話ができるよう、会場内にツーショットスペースを設けました。男性陣が積極的にアタックをしている姿は、とても勇敢に感じられました。

告白タイムは、本イベント最大の盛り上がりを見せ、女性からの逆告白という展開もあり、計8組のカップルが誕生するという大変喜ばしい結果となりました。

以下、イベント終了後に参加者から寄せられた感想を紹介します。

◎Aさん(29歳) 男性:茨城県

イベントに申し込んだ経緯は、最初にチラシを目にした時は興味を引きませんでした。周りの人たちから、「Aさんなら、きっと良い人が見つかりますよ」と何度か言われるうちにどんどん興味が湧き出てきました。でも、呼吸器も着けていて話ベタなので、自分に何ができるかという不安でいっぱいでした。しかし、このまま殻に閉じこもっていたら人生を損してしまう気持ちが芽生えてきて、自分にも絶対にできるという思いが強くなり、参加に至りました。友人から、容姿なんか関係ないから、頑張って話す姿勢さえ見せればきっと相手も見てくれるよ、という言葉にも後押しされました。

イベント本番は、今世紀最大になるほどの頑張りを見せて、無事にカップル成立となりました。恥ずかしさを捨て、自分のことを積極的にアピールすることができたからだと思います。イベント後は、自分から積極的に人とコミュニケーションを取れるようになった気がします。これは自分にとって劇的な変化になりました。それと、カップルが成立した相手とは、毎日のようにラインで情報交換していますよ。もっともっと相手のことを知り、親密な仲を築いていきたいと思います。

生まれてから今までも幸せですが、この合コンイベントでさらに自分に幸せが訪れました。重度の障害をもっている人は、恋愛などはあきらめがちですが、そんなことはありません。頑張り次第で実現できるので、今後もこのようなイベントを続けてくださいね。このイベントを開催していただきましてAJUの皆様、本当にありがとうございました。(全文)

◎Bさん(27歳) 女性:岐阜県

なかなか車椅子で参加できる街コンや合コンが少なく、車椅子でも行きやすいイベントを探していたときに紹介してもらい、参加しました。当日は知らない人ばかりなので緊張しましたが、多くの方とお話できて、「相手にどんなことを質問しようか」「どうやって自分のことを話そうか」と考えることができました。

今回参加して、コミュニケーションが少し苦手だけどもっと多くの方と出会いたいと思ったので、これからもいろいろと参加していきたいと思いました。(全文)

◎Cさん(33歳) 女生:愛知県

参加する前は、病院のリハビリの先生にも、病院でもそういうのがあったらいいのにねとか言われました!あと、やっぱり日にちが近づくにつれて緊張してきました。~中略~結構フリータイムが長くて、これはこれでいいんだけど、障害者の人は恋愛経験ゼロの人が多くて消極的なんですよ(+_+)↓でも、こういう企画、本当にいいと思います!(^_^)v ぜひまたやってください(^o^)/ 参加しまーす!って年齢的にもう無理かも…。(一部抜粋)

この他にも「心がドキドキした!!」「とても楽しかった!!」「今回は残念な結果に終わったけど、また参加したいです!!」「ぜひまた開いてください!!」などの感想もいただきました。

今回の企画を開催するにあたっては、私共、主催者側としても「恋愛」をテーマにした企画は初めての試みであり、どのような展開になるのかは未知でした。しかし、今回の企画を通じて確信できたことは、新たな出会い、特に「恋愛」というものは、人々の心をドキドキとさせ、意欲的で活動的にさせるエネルギーの一つであるということです。このことは障害の有無に全く関係がないということです。今後も、一人でも多くの障害のある仲間に心ときめくような楽しい出会いの場を提供していければと思っています。

(いしだおさむ・おのざわみき・かみやまけんじ、AJU恋愛プロジェクト実行委員会)