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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年9月号

列島縦断ネットワーキング【佐賀】

難病サポーターズクラブJAPANの活動

下田寛

発足の経緯

2011年から、佐賀県が県民協働事業の一環として行なっている「プロボノ(ラテン語で公共善のためにという意味)」という事業があります。これは社会人が自分の持っている専門知識や技能を生かして、社会貢献に参加するボランティア活動であり、2012年にNPO法人佐賀県難病支援ネットワーク(以下、ネットワークと記載)がこの活動の支援を受けることから始まりました。

2012年初夏、プロボノワーカーとして登録していた私を含む5人が、プロボノ事務局の采配でネットワークに派遣され、「難病患者の就労支援に役立つ資料を作成してほしい」と依頼を受けたことがきっかけです。

当時、全く「難病」とは無縁に生活をしていた私たち5人は、まず、そもそも「難病とは何か?」という基礎的なところから知ることが必要でした。そのため当事者、当事者のご家族、医師、法律家、ハローワーク職員、行政、事業所、企業など、幅広く専門の方々からのヒアリングを行い、特に、ネットワークの就労に関する相談件数の増加なども含め、難病のある方々を取り巻く環境、地域や社会での認知不足や、就労に関するニーズが非常に高いことを次第に知るようになりました。

ヒアリングが進み、資料作成が終盤に差し掛かった2012年冬、メンバーでの議論の中で、「資料作成だけで、そもそも就労支援に繋(つな)がるのか?」「継続的に地域や社会に対して声を上げ続けることが必要ではないのか?」という話になり、ネットワークの三原睦子理事長とも相談の上、「難病サポーターズクラブ準備委員会」を立ち上げ、2013年6月にシンボルのバッチを作成し、「難病サポーターズクラブJAPAN」の発足に至りました。

当会発足の理念として『みんなが幸せになってこそ、自分も幸せになれる。そんなふうに誰もが思うことが出来たら、どんなに素晴らしい世の中になることでしょう。我々は、難病の普及啓発に努め、難病のある方々が、円滑な日常生活が送れるよう支援していくための「難病サポーターズクラブJAPAN」を結成致します。』と謳(うた)い、活動内容に、「普及啓発」「就労支援」「ネットワークの構築」の3本柱を掲げています。

具体的活動

具体的な活動として、佐賀県が行なっている「佐賀県難病患者就労支援事業所」制度との連携も含めてメンバーの募集を行い、現在64の企業団体の登録や、232人の個人会員の登録をいただいています。主に登録していただいた方々を中心にご案内をさせていただきながら、3か月に一度のワールドカフェの開催や、年に一度の就労シンポジウムを開催しながら活動を展開しています。

ワールドカフェは、毎回、20人~30人のご参加をいただいています。過去には「必要な配慮って何?」「あなたの困った!を聞かせてください」などのテーマで議論し、意見を集約して活動に役立てています。また、2014年の就労シンポジウムでは「業績UPにも繋がる企業のバリアフリー化」と題し、NPO法人FDA理事の成澤俊輔氏を講師にお招きし、佐賀県知事や佐賀県議会の難病対策推進議員連盟の皆さんを含め、200人満席のご来場をいただきました。

また、どうしても佐賀県内の佐賀市内での活動が主となるため、佐賀市以外の難病のある方々の参加が難しい現状があります。将来的には、佐賀県内の保健福祉事務所5か所圏内で私たちの理念に共鳴していただける会の発足を目指し、誰もが足を運んで意見交換ができる「集いの場」を提供できる環境を構築したいと考えています。

そして、うれしいことに、私たちの活動をきっかけに、お隣の福岡県では「難病NET.RDing福岡」、佐賀県鳥栖市では、難病の会「広げよう なん友の輪~♪」が立ち上がり、有志の方々が積極的な活動を展開しています。このような活動がさらに広がっていくことで、ネットワークが行なっている相談業務の補助的な役割を担い、なかなか声を挙げることが難しい当事者の方々が、自分の住んでいる身近な地域で生活しやすい環境づくりに向けて、共に活動できるよう取り組んでいきたいと考えています。

活動の課題

プロボノワーカーから3年、当会が発足して2年が経過しました。課題も多くあり、悩みながら活動しています。まずは、会費の問題です。当初は会費制で運営しようと考えていましたが、実際、継続的に会費をいただくための活動に時間が割けず、本年度よりイベント参加に応じて実費負担とすることに変更しました。

これにより、イベント告知についての課題が連動して出てきています。これまで郵送等の事務作業については、ネットワークの皆さんにお願いしていた経緯がありましたが、本年度より切り分けて、私たちのできる範囲での連絡体制の構築を行なっているところです。

お陰(かげ)さまで、私たちの主な情報発信源である、インターネットやFacebook上に「難病サポーターズクラブ」のページを立ち上げ『1000「いいね!」』を達成し、全国各地からのご意見やメッセージなどの意見交換もさせていただいています。しかし、インターネットを活用していない方々も多くいらっしゃいますので、その郵送費の捻出と事務作業をどう行うかは大きな課題です。

次に、活動のフィードバックの問題です。ご参加いただく方々からは、運営や相談事など、さまざまなご意見をいただきます。しかし、支えているメンバーは民間のボランティア素人集団であることから、多種多様な相談事への対応には限界があります。一度原点に立ち返り、目的・目標を絞った形でのイベント開催を行わないと、運営側のメンタルの持続が難しいという課題があります。また、発足当時の5人のメンバーも日頃は別の仕事を持って働いていることから、継続的な活動は難しく、新規に加入していただいた難病当事者の方々や、ネットワークの方々をはじめとする専門家と協議しながら活動しています。

さらには関係機関との連携です。会を継続するにつれて、さまざまな課題解決に向けて具体的に活動すべき案件が増えてきました。個別の相談については、ネットワークの専門家に繋いでいますが、それ以外の関係機関との連携や、今後のイベント開催に向けて、縦割り行政を如何(いか)に打破するかが、大きな壁として立ちはだかっています。

今後は、「できることからコツコツと」「細く長く」活動していくというスタンスで、難病のある当事者以外の方々が、多く運営に携わっているという強みを生かし、佐賀県内各地での展開を目指したいと考えています。そして、自分の住んでいる身近な地域で活動しながら、難病のある方々の就労と生活しやすい環境づくりに向けて継続して活動して参ります。

(しもだひろし 難病サポーターズクラブJAPAN代表)