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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年10月号

障害当事者からの意見

コミュニケーションは自分のやり方で!

尾上裕亮

私は口で話すことができないため、「オペレートナビ」というソフトウエアを使いパソコンで会話する。自身の経験や、言語障害の仲間と出会ってわかったことを踏まえて、当事者が望む支援を3つの観点から述べる。

ゆっくり聴いてもらうこと

身体障害の人のなかには、口で明瞭には話すことができないが、ゆっくり聴いてもらえれば会話ができる人がいる。市役所や銀行、病院等の窓口で担当者がイライラしている場合、マヒが強く出てわかりにくい言葉になってしまうことがある。担当者の聴く姿勢が変われば、言語障害が改善する場合が多い。すべての人に大らかな態度で接しなさいと要求するのは難しいかもしれないが、そう心掛けてもらうことは重要である。特に公的機関やサービス業の従業員には、合理的配慮の一つとして実施してもらいたい。

会話介助

言語障害が重度で口で全く話すことができず、会話機器が使えない(使いたくない)人には介助者に手伝ってもらいながら、文字盤や口文字を用いて会話をする必要がある。課題は、文字盤等のメッセージを読み取れる介助者の養成だが、知り合いは会話方法を介助者に習得させるのに1年かかるという。重度の言語障害と身体障害を併せもつ人には、身体介助と別にコミュニケーションの人的支援が必要である。

会話機器

これは現在、最も注目を浴びている。しかし操作は基本的に、機器に自分を合わせることが必要だ。機器を自分仕様にする機能(カスタマイズ)もあるが、不十分だ。私は会話機器を使って20年になるが、日々変化するマヒによって操作のしやすさが変わってくる。モノのために身体を合わさなければならないのは、おかしな話だと考える。

解決策の一つは、利用者と開発者、支援者(器械好きな人も含む)が日頃から交流し、共同で開発・改良できる場を創(つく)ることである。開発・改良に利用者、支援者が常に加わると、スピードが進み、利用者の要望に近いものが生まれやすい。多くの人と共同でプログラムを発展させることを「オープンソース」とも言う。にわかプログラマーの私としては、会話機器のオープンソース化は挑戦したいテーマである。

前述の3支援は、優劣をつけてはならず固定的に考えてはならない。会話機器をもっている人が、ときには自分の口で話すことが重要な意味を持つこともあり、その逆もあり得る。多様なコミュニケーションが認められている状態が重要である。

(おのえゆうすけ 障害連)