「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年12月号
私のファッション哲学
車いすユーザーとなっても着飾る理由
牧原伸之
5年前、バイクでの交通事故により下肢機能障害となり車いすユーザーとなった。
ファッションには、受傷以前から興味があり、常に人に不快感を与えないような着こなしをすることを心掛けていた。決まったコーディネートをするわけではなく、会う人や行く場所によってさまざまなファッションを楽しんでいた。
そんな自分が車いすユーザーとなった時、以前よりも清潔な身なりを心掛けるようになった。なぜなら、車いすユーザーは地味で暗いというイメージを持たれてしまうことが多いと痛感したから。
生活スタイルが変わった今も、受傷前同様に好きな服を楽しんでいるが、いろいろな人から「車いすの人でもオシャレな格好するの?」と言われることが幾度となくあった。歩行できても足が車いすでも何も変わらないのに。
車いすユーザーとなってからの服に関する悩みといえば、白い服や丈の長いコート等が車輪に巻き込まれてしまい汚れることだ。そのため、着たくても着ることを躊躇(ちゅうちょ)してしまう。
なかでも一番悩むのが雨だ。当然車輪が雨で濡れるので、服も袖や裾等が濡れ、泥などで黒く汚れてしまう。車いす用のレインコート等もあるが、スタイルが崩れるので着る気にはならない。
歩行困難、立位保持が難しくなってからは、どのような服でも着られるというわけではなくなったが、好きなブランドの店へ行き、身体のことは気にせず自分がほしいと思う服を買う。その際、店員さんに自分の身体を用いて、このような身体だと何に困るのか、似たような身体の方が来店した時の参考になるようにアドバイスすることもある。パンツの丈や裾のこと、車輪を漕ぐ手の袖の長さのこと、上着などの丈の長さはどれくらいがいいか、履きづらい靴のことなどを話す。当事者だからこそ解(わか)ることがあるのだ。
伝えられることがあるから自分の好きなように楽しむためにも伝えていきたい。
ファッションが好き。その想いを満たすために、車いすユーザーとなった今も自分は着飾るのである。
(まきはらのぶゆき ハピネスチャイルド代表)