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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2015年12月号

列島縦断ネットワーキング【埼玉】

私たちの事を私たち抜きで決めないで!
~WA会(利用者部会)の活動を通じて育ちあう~

きょうされん埼玉支部 WA会

はじめに

きょうされん埼玉支部のWA会は、12年前にきょうされん活動にもっと当事者の声を届かせようと考え、仲間活動委員会、仲間部準備会を経て、4年前に利用者部会として発足しました。名称は「WA会」です。WA会の名前の由来は「若い」「平和の和」「つながる輪っかの輪」など、いろんな「わ」をイメージしてWA会という名前になりました。そんなWA会の活動をご紹介したいと思います。

WA会の主な活動内容

WA会の活動を進めていくために毎月2時間の定例会を開催し、情勢報告や、WA会主催で企画している催し物についての話し合いなどを行なっています。時にはそれぞれのメンバーが最近抱えている悩みなども話し合い、互いにアドバイスすることもあります。

WA会発足当初から「交流」「運動」「学習」の3つの視点を大切にしながら活動を行なってきています。

~交流を大切にして企画したアート仲間展~

埼玉県内の仲間同士がつながれるようにと、「アート仲間展」を開催しています。毎年春ごろに県内の仲間たちが作成した絵画や書道、写真などの作品を募集して開催しています。開催期間中には、仲間参加型ワークショップを企画し、他事業所の仲間と一緒に作品を制作したり、絵画の専門知識のある講師の先生をお呼びして、その指導のもと絵を描いてみたりと、「アート」を通して交流を図る場となっています。また一般の方にも作品展を公開し、お気に入りの作品に投票していただき、得票数の多い作品には表彰状を授与しています。

~私たちの事を私たち抜きで決めないで!!~

「運動」については毎年、県内の仲間たちにアンケートを実施し、日ごろ困っていることや行政に訴えたいことについてたくさんの意見を集め、それをもとに要望書を作成しています。完成した要望書は、きょうされん埼玉支部を通じて埼玉県に提出しています。県と直接交渉する日には、WA会メンバーが中心となりながら要望内容の説明を行い、当事者からの想いを代表して行政に届ける役割を担っています。

~運動の足腰は学習~

「学習」については、WA会メンバーたちは、きょうされん主催の利用者学習会や全国大会に参加し、日々の自分たちの生活のことや社会情勢について学習を重ねています。

また、県内の他の仲間たちも学習できる機会を作っていきたいということで、毎年冬に「WA会学習会」を開催しています。学習会当日は、午前中に講師の方をお呼びして、障害者福祉を取り巻く情勢の話や、日本と外国の福祉制度の違いなどの講演を行なっています。今年は戦後70年という節目の年でもあるため、「戦争と障害者」というテーマで講演を行なっていただく予定です。

午後からは「施設自慢」「情勢と法律」「はたらく」という3つの分科会に分かれて、参加した仲間たちがそれぞれ興味のある分科会を選択し、各分科会で施設の発表や意見交換を行なっています。その他にも、県内のそれぞれの地域で取り組んでいる仲間交流会の報告や、WA会メンバーが中心となっての歌の演奏なども行なっており、盛りだくさんの内容で「WA会学習会」を開催しています。

「交流」「運動」「学習」を毎年、みんなで企画して活動することにより、内容の濃いものとなってきました。仲間の秘めたパワーには驚くことばかりです。

WA会の目指すもの~部会員の思い~

仲間の「私たちの意見をもっと前面に」、「当事者である私たちはこんな希望があるんだ」という気持ちを初心として、きょうされん埼玉支部に利用者部会(WA会)ができました。きょうされん運動の理念である「交流・学習・運動」を基本として活動しています。

具体的には、県や市町村、さらに国に対する要望・請願活動を常に精力的に行なっています。

県内の仲間との交流を深めるため、学習会やアート作品展示会を定期的に企画し、仲間の表現活動も進めています。災害時はもとより、普段からも仲間たちがどこでどんな暮らしをしているかをお互いに知り合うことの大切さを改めて認識するため、ネットワーク作りは大切だと話し合っています。

(WA会会長 嶋修二)

WA会ができて丸4年、ちょうど2011.3.11東日本大震災のあの時、WA会はスタートしようとしていました。あれからWA会も5年目を迎え、「自分たちの想い、願い、希望を叶えてほしい」「あたりまえに幸せな生活を誰でも過ごせる権利があるんだ」ということを、支部の仲間とともに私たちも運動の中で国や県に伝えていく役割が大切なことと思っています。

それとともに、WA会がこれから目指す未来への願い・展望としては、今まできょうされん運動に携わってきた支部の役員さんや、全国の役員さん、仲間のみんなとともに、これからもラグビー精神でいうOne for All,All for One(一人はみんなのために、みんなは一人のために)の気持ちで一致団結して、学び合い、手を結び、励まし合って確かな宝物をつくっていくこと。変えられるものを変えていくために、これからも「創り」という視点を大切にすること、自分たちも含め、どんな人も幸せに感じて過ごせるためにWA会としても何ができるのかを考えて運動していくこと、一人ではできなくても、みんなとともに、前向きに歩むことで私たちにしかつかめない大切な何かを手に入れていく、そんな未来を目指したいです。

(WA会副会長 相田あづさ)

現状と課題

現在、WA会メンバーは、WA会の活動だけでなく、埼玉県を飛び出し全国で活躍し始めています。外に出ていくことでたくさんの人に出会い、その中から新しい知識や情報を得て帰ってきてくれています。全国規模の活動は、WA会メンバー全員が参加できるわけではないため、参加したメンバーは定例会で報告し、他のメンバーとも情報を共有できるようにしています。そうすることで、「WA会の代表」という自覚につながり、報告の内容もだんだんと詳しく分かりやすい内容となってきています。

WA会の活動が拡がりを見せている一方、県内の各事業所とWA会の連携が課題となっています。WA会は県内の仲間の代表の会のため、取り組みの成果をしっかり各事業所にも伝えていく役割も担っていると思っています。そこで毎月「WA会ニュース」を発行し、定例会の内容や、催し物のお知らせなどは発信していますが、それがどこまで各事業所の仲間一人ひとりに浸透しているか分からないところがあります。しかし、4年の歳月を経てWA会は部会長を中心とし、みんなで考えみんなで話し合い、みんなで発信する力をつけてきました。

年に一度の埼玉県への交渉の場でも、基本合意・骨格提言・障害者権利条約を踏まえながら、埼玉県内の事業所へのアンケートを基にして、実態を伝えています。

WA会のメンバーは一人ひとりの意見を大切にし、誰か一人がすごいことを言って引っ張ってきたわけではなく、全員の力を結集して頑張ってきた結果だと思います。集団の中で育ちあうことの大切さをWA会は教えてくれています。これからも、私たちの事を私たち抜きで決めないで、の精神で頑張っていきたいと思います。