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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年8月号

支援を受ける立場から

「障害があっても地域で暮らす」ことと放課後等デイサービス

森佳代子

私には、高校1年生の息子がおります。知的障害を併せもつ自閉症で、今年の4月に特別支援学校の高等部に入学しました。現在、放課後等デイサービスは利用しておらず、放課後は自宅で過ごしたり、所属している障害児地域訓練会の活動に参加したり、私の用事のある時は、地域活動ホームの一時ケアを利用して過ごしています。

放課後等デイサービスに登録をしたこともありますが、息子はなじむことができなかったようです。私も見学をした時に、まだ幼かった息子が、体格の大きい小学校高学年や中学生の子どもたちと共に過ごすことは難しいだろうと、利用することを止めてしまいました。

わが家は、私が働いておらず、息子は1人っ子なので、利用しなくても生活ができるのだと思います。ただ、高等部に入学して3か月、通学にバスと電車を利用していますが、まだまだ自立通学はできず、特別支援学校の最寄りの駅まで付き添いをしています。毎日の登下校の付き添いを余儀なくされている親にとっては、送迎のある放課後等デイサービスは魅力的だと思います。

また、現在は、障害児を育てながら働いているお母さんはとても多く、シングルマザーのご家庭も多いようです。きょうだい児がいれば懇談会や習い事の付き添いもあるでしょう。きょうだいのためにも時間をとってあげたいと思うことは親として当然で、働くお母さんのためだけではなく、きょうだい児にとっても、放課後等デイサービスは必要な事業だと思います。また、子どもと少し離れてみることで、子どもとちゃんと向き合えるようになるかもしれない、親のレスパイトとしても必要な事業だと考えています。

それだけではなく、現在は学校という集団の場になじめない子どもも増えてきています。放課後等デイサービスが、発達障害と言われる子ども、不登校やひきこもりになってしまった子どもの学校以外の行き場としての役割を今後担ってくれるのではないか、と期待しています。

一方で、親の利用の方法に問題が出てきているとも感じています。複数の事業所に登録している人もいるという現実があるなかで、利用の支給上限が月23日になったことは、子どもの成長を考えれば当然のことだと思います。私たちの子どもは、ゆっくりと愛着が育つと言われています。私も、息子の気持ちに寄り添える、理解できるようになったと感じたのは、息子が小学4年生くらいになってからです。母親として自信を持つことができたのは、失敗しながらも、共に過ごす時間があったからですし、愛着を築く時期を逃さなくて良かったと思っています。

今後、もしかしたら、利用の仕方によっては家で過ごせない子どもが出てきてしまうのではないか、子どもと過ごすことができない母親が出てきてしまうのではないか、子どもが不安定になった時に、一緒に立ち向かえない家族になってしまうことはないのか、子どものことが見えなくなってしまうことはないのか、と心配しています。家で過ごす時間が少なく、子どもが家にいなければ、ご近所など、地域の方に子どもの存在を知ってもらう機会も減ってしまうだろうと危惧しています。

私の所属している横浜障害児を守る連絡協議会(通称、連絡協)の目標は、「障害があっても地域で暮らす」ことにあります。放課後、自宅でゆっくり自分の時間を過ごす機会が少ない子どもが、将来、地域の中で暮らしていけるだろうか。子ども本人の成長のために、そして親としての成長のために、利用方法を考えていく必要があります。子どもの目線に立った、子ども自身と家族の生活をコーディネートしてくださる方が必要になってきていると思っています。

今、放課後等デイサービスの事業所が急速に増加しています。数が増えることは悪いことではありませんが、事業所の質や職員の方の障害理解・子どもへの支援内容はどうなっているのでしょうか。横浜版のガイドラインも作成されました。ガイドラインの内容は、本当にすばらしいものです。真に、子どもたちが社会性を身につけるための、子ども本人の生活を整えるための事業になるために、ガイドラインを遵守してほしいと願っております。そして、事業所の質を確保し、預かりではなく、子どもの成長のための事業になってほしいと思っています。

また、放課後等デイサービスを地域の方に知ってもらい、理解してもらうためにも、モニター制度や第三者評価の仕組みを作っていただきたいと思います。外部に開かれたものとなるように、連絡協としても行政に要望していく必要性を感じています。

今や、障害児を育てる多くの家族にとって、放課後等デイサービスはなくてはならないものになっています。だからこそ、親の会である連絡協として、放課後等デイサービスを利用している子どもたちが、これからどのような大人に成長するのか、どのような生活を送るようになるのかを見届けていきたいと思います。

(もりかよこ 横浜障害児を守る連絡協議会会長)