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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2016年8月号

工夫いろいろエンジョイライフ

実用編●コミュニケーションの方法に一工夫、他●

提案者:酒井ひとみ イラスト:はんだみちこ

酒井ひとみ(さかいひとみ)さん

日本ALS協会の理事をしている酒井ひとみです。現在36歳で、夫と娘、息子の4人で、在宅で暮らしています。ALSの発症は2007年。胃瘻(いろう)と人工呼吸器をつけて、ヘルパーさんや家族(同居でない母にも)に支えられて生活しています。私は外出の多い毎日を送っていて、昨年はついに1週間毎日外出するスケジュールもありました。ALSで気管切開、全身動かない私が、どんなふうに外出をエンジョイしているのか、ご紹介します。


コミュニケーションの方法に一工夫

外出中、主に私が使っているのは「口文字」という方法です。たとえば「おはよう」と言いたい時は、まず「お」の口を作ります。それを見た介助者は「お?」と聞きます。合っている時は瞬(まばた)きをします。そして、介助者がおの段を横に「お、こ、そ、と、の…」と読み上げるので、「お」のところで瞬きをします。次の「は」はあの段なので、私は「あ」の口をして、介助者は「あ、か、さ、た、な、は…」と言い、「は」で瞬きをする。次の文字の「よ」はおの段。こんな感じで文章を作っていきます。

この時に、1文字ずつメモを取るのがお互いうまくやるためのコツかも。文字を忘れちゃうので。それから、「ん」の時は「ん」の口の形。小さい「や」や濁音の時は瞬きを2回しています。難しそうと思われがちですが、慣れです。この方法は道具がいらないので、いつでもどんなときでも、介助者と会話ができます!


ライブでのコミュニケーションに一工夫

昔からライブが大好きな私。今は韓国の歌手グループの大ファンです。ALSだからといってあきらめられません。道具のいらない口文字を使えば、ライブ会場だってコミュニケーションはOK!と思いきや…。

気管切開をしてから初めて行ったライブ会場で気づきました。ライブに限らず、ちょっとおしゃれなお店もそうですが、周りの音が大きいので、私の口文字を読み取ってもらおうとしても、介助者の声が…聞こえなーい!

( ̄ヘ ̄)oh!no!!

気づいたときは、ヘルパーさんと思わず、笑っちゃいました。でも、笑いごとじゃあすまないのだ!ということで、トイレで作戦会議!そこで、メモ帳にあいうえお表を書いてもらい、口文字と同じように、まず母音を1文字ずつ指で指してもらい、瞬き。そこからまた、横に1文字ずつ指してもらって、瞬きをして、というのを続けて言葉を作り、問題解決!

さらに、ライブ会場は暗いので、表を照らすための小さいライトを持って行きます。でも何より、介助者が私のことを常にチェックできる所にいて、時々顔を見てもらうことが大切です。


外出時の吸引に一工夫

24時間呼吸器を使っている私。外出中だろうと、電車の中だろうと、必要なときにはいつでもどこでも、喀痰吸引ができることが必要になってきます。

外出中、私は車いすに乗りっぱなしです。荷物はキャリーケースやバッグに入れて運ぶのが基本ですが、吸引のたびに、いちいち全部の道具を出し入れするのは大変!家と同じように、一式道具をどこかに置いて、落ち着いて吸引できるようにしたいなぁ…と思い、車いすの背に吸引道具の定位置を作りました。車いすの背中にかごを固定して棚を作り、その中に吸引に必要な消毒液やアルコール綿、吸引用カテーテルを入れている瓶などを収納しています。

車いすの後ろは、リクライニングを倒していると、特にデッドスペースになるので、有効活用できます!余計な幅をとることもないので、エレベーターの中やバスの乗車口など、狭い場所も問題ありません。