解説 障害者差別解消法 第8回-差別されたと思った時にどうしたらよいのか

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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年1月号

解説 障害者差別解消法 第8回

差別されたと思った時にどうしたらよいのか
―相談及び紛争の防止等のための体制整備について―

増田一世

これまでどんなことを差別というのか、合理的配慮が行われないことも含めて差別なのだということが解説されてきた。今回は、実際に差別を受けた時の相談体制について考えてみたい。

障害のある人への差別であるが、そのことを差別と気づかない、あるいは知らない故の差別も多い。そういう意味では、社会全体に障害のある人への差別とはどういうことなのか、合理的配慮とはどういうことなのか、理解が広がり深まっていくことが大切である。

障害のある人自身が、自分が受けた差別に対し、対応等を含めて改めてほしいと伝えることで差別的な対応が改善することもあるだろう。そうした対話の中で、障害についての理解が進んだり、そのことを契機に、地域社会でのよい関係が生まれていくこともあるだろう。しかし、実際には差別を受けたことを直接伝えることが難しいことが多い。だからこそ、相談の仕組みがつくられている。

障害者差別解消法第4章には「障害を理由とする差別を解消するための支援措置」が規定されている。規定されている内容を紹介しつつ、筆者が活動するさいたま市の状況などを踏まえ、どんな課題があるのか、考えてみたい。第4章は第14条から第20条まであるが、今回は第14条(相談及び紛争の防止等のための体制の整備)を中心に、第15条(啓発活動)も合わせて考えてみたい。

■相談窓口の設置状況

国や地方自治体は差別を受けた障害のある人の相談を受けて、障害を理由とした差別を解消していくための体制を整えるように規定されている。差別解消法の施行に向けて、国の各省庁や都道府県は障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定め、その中に相談体制の整備を盛り込み、手紙、電話、ファクス、メールなどで相談に応じることになった。厚生労働省のホームページを見ると、各機関の相談窓口の一覧と住所、電話、ファクス、メールが明記されている。

たとえば埼玉県では、県が埼玉県社会福祉協議会に委託し、障害者権利擁護センターを設置し、各市町村の相談先の一覧をホームページ等で紹介している。市町村の窓口の一覧では、さいたま市のように各区(10区)の障害者生活支援センターと各区の支援課障害福祉係が示されているところもあれば、各自治体の障害者福祉課等が相談窓口になっているところもある。

全国的にみると都道府県、政令指定都市は100%対応要領が策定されているが、東京都23区、中核都市、県庁所在地では81.5%、その他の市町村では40.9%、全体では44.9%(平成28年10月1日現在、内閣府HP)と半数に満たない策定率である。地方公共団体は対応要領の策定が努力義務であり、対応要領が策定されていない自治体の相談窓口はどのようになっているのだろうか。

また、各省庁が所管する事業所に対しては対応指針を示し、相談窓口を整備することが重要であるとし、相談時の配慮として対面のほか、電話、ファクス、メールなどの多様な手段を用意しておくことが望ましいとしている。

法に規定された相談窓口の設置であるが、実際には各自治体による対応の差もあり、また、各事業者になるとさらに対応の差が大きいと考えられる。

■障害のある人が相談できているか

実際に、障害のある人が差別を受けたと感じた時に相談できているかが大切である。さいたま市の場合をみてみよう。

さいたま市では障害者差別解消法に先立ち、平成23年に「さいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護に関する条例(ノーマライゼーション条例)」を制定した。条例に基づいて先に触れた各区支援課と障害者生活支援センターが相談窓口となっている。しかし、さいたま市の障害者差別についての相談件数は、平成23年5件、平成24年7件、平成25年4件、26年9件と報告されている(さいたま市の人口は約128万人)。ノーマライゼーション条例を策定する際に市民から集めた差別と思われる事例は521件であったにもかかわらず、条例制定後の相談件数は極めて少ないのである。

相談窓口の設置だけでは、差別を受けたと自ら申し出て、解決に向けて、必要な支援を受けることにはつながっていかない。差別されているのかどうか判断がつかない場合にも、気軽に、気兼ねなく相談できること、相談したことで問題が解消したり、関係性がよくなっていくことが肝要である。

■啓発活動との連動

障害者差別解消法が施行されたものの、市民にどの程度浸透しているのか、各省庁や各自治体の対応要領の中には、合理的配慮の事例などが必ず紹介されているが、各省庁や各自治体の職員がどれだけ理解しているのか、大きな課題であろう。市民全体の前に行政職員の理解の浸透が必要であろう。

障害者権利条約第8条「意識の向上」では、締約国の義務として、障害者に対する社会全体の意識の向上、あらゆる活動分野における障害者に関する定型化された観念、偏見及び有害な慣行と戦うことと明記されている。しかも即時に効果的に行うように記されている。国や自治体は、障害のある人の声が届きにくい相談窓口のあり方を改め、社会の啓発に本腰を入れて取り組むことが求められている。

障害のある人や家族は、差別されていても我慢したり、あきらめたりすることが多い現実がある。障害のある人や家族が、我慢やあきらめから脱却するためには、障害のある人が他の者との平等を実感できる社会こそが求められる。

(ますだかずよ やどかりの里常務理事)