列島縦断ネットワーキング【大阪】-第40回記念 日本障がい者体育・スポーツ研究発表会

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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年1月号

列島縦断ネットワーキング【大阪】

第40回記念 日本障がい者体育・スポーツ研究発表会
“過去から未来へつなぐ、多様性に対する障がい者スポーツの実践力向上”

野々村和子

1 はじめに

2016年11月19日(土)・20日(日)の両日、大阪市長居障がい者スポーツセンターで第40回記念 日本障がい者体育・スポーツ研究発表会(以下、研究会)が開催されました。障がい者スポーツに取り組む研究会として、日本で一番古い歴史があり、障がい者スポーツの指導現場において、指導力、実践力の向上をコンセプトとして積み重ねられた40年続く研究会です。

今回のテーマは、『過去から未来へつなぐ、多様性に対する障がい者スポーツの実践力向上』です。初代理事長、藤原進一郎氏の基調講演から始まり、歴代の理事長・理事のシンポジウム、一般発表、実践力向上を目的とした実践発表・ワークショップ、リオ2016パラリンピック競技大会日本選手団団長、大槻洋也氏の特別講演で、盛況に終了することができました。参加者は、東北地方から九州まで、障がいのある当事者、障がい者スポーツセンターの指導員、地域で活躍される指導員、福祉施設職員、大学・学校教員等、150人が集まりました。

2 研究発表会の内容

(1)基調講演

「本研究会の発足当時を振り返って」というテーマで初代理事長の藤原進一郎氏の講演でした。1977年、大阪市長居障がい者スポーツセンターとリハビリテーションセンターの体育・スポーツの関係者が浜松市に集まり、この研究会が立ち上げられました。当時の参加者を大別すると、障がい者のスポーツの生活化を目指す人たちと、リハビリテーションとしてのスポーツの活用を目指す人たちで、日々の業務で起こる身近な問題を話し合う勉強会でした。回を重ねるごとに、次第に幅広い人たちが参加し、演題発表も内容も障がい者スポーツを中心に広範囲となっていきましたが、指導現場での身近な問題を話し合う研究会も今後も続けたいという方向性が再確認されました。

(2)特別講演

リオ2016パラリンピック競技大会の報告として、日本選手団団長の大槻洋也氏の講演でした。日本選手団は、17競技、132人の代表選手が参加しました。

個人競技の成績は、ボッチャが初めての銀メダル、陸上競技と水泳は、複数のメダル獲得、前回一つしか取れなかった柔道、自転車、車いすテニス、知的水泳が複数のメダル獲得しました。団体競技では、ウィルチェアーラグビーが念願の銅メダル獲得。現地では、治安の不安があったものの、ブラジル国民の熱狂的な応援、歓迎が印象的でした。2020東京での日本人の歓迎、ハード面では日本は負けないが、ソフト面での充実は参考にしたいと思いました。

ロンドン大会以降、2013年に2020東京パラリンピック開催が決定し、2014年には厚生労働省から文部科学省へ移管され、2015年にはスポーツ庁が設置されました。どの団体も2020東京に向かって、選手発掘・強化の課題があり、スポーツ庁、JSC、JOC、JOC加盟団体、JPC加盟団体や大学などのスポーツ関係組織・機関との連携をさらに深め、2020東京パラリンピックの成功を目指したいと意気込みを示されました。

(3)シンポジウム

「過去から未来へつなぐ、多様性に対する障がい者スポーツの実践力向上」のテーマで歴代の理事長3人と現在の理事2人、計5人のシンポジストで、障がい者スポーツの歴史と発展を感じながらそれぞれのお話に盛り上がりました。

1977年研究会発足当初は、まだまだ発展途上であった障がい者スポーツの現場での実践指導や事例報告を発表し、日本の障がい者スポーツ振興を牽引してきた研究会です。2011年スポーツ基本法施行、2013年の2020東京オリンピック・パラリンピック招致決定、2014年厚生労働省から文部科学省へ移管、2015年スポーツ庁が設置され組織の一元化が図られました。障がい者スポーツをめぐる環境へ追い風が吹いている中、多様化する障がい者スポーツのあり方の方向性がそれぞれ示されました。

病院のリハビリテーションからパラリンピックアスリートまで、健康体力づくりから競技スポーツまで、すべての障がい児・者がスポーツを楽しむことの実現を目指して、社会環境づくりや全国に広がる障がい者114施設、各競技団体、日本の5つの学会など組織との連携、多様性に対する障がい者スポーツが今後も過去から未来に向かって発展していくことが、この研究会としての役割であるという熱い思いが研究会全体に伝えられました。

(4)一般発表

12演題の発表があり、内容については16のカテゴリー別の分類があります。今回は、アダプテッド・スポーツの科学が7題、発育発達が1題、体育方法が4題でした。「ジンバブエ陸上講習会報告」「国際車いすバスケットボールの分析」、国内のスポーツでは、ボッチャ・CPサッカー・ハンドサッカー・フットサル・卓球バレー・水泳でした。

重度障がい者を対象とした発表が6題あり、特に、2歳児の重度脳性マヒ児の水泳指導報告、先天性両上肢欠損児のスポーツ活動報告は、興味深く、質問が殺到し、現場での指導事例は誰もが聴きたい、指導力向上につながる興味深い内容でした。

視覚障害者同士の水泳時、同一レーンの接触事故を避けるための工夫については、障がい者スポーツセンターに勤務する指導員は、安全管理、事故を未然に防ぐという使命があり、日々業務の中で問題となっていることの解決に直結するものでした。

現場の指導方法の検証や共通課題の解決に寄与する報告は、白熱した意見が展開し、この研究会のコンセプトに沿った内容でした。また、マネジメント、選手発掘、活動を広げて行く内容もあり、2020東京を目指して、選手発掘、理解促進、普及活動など、各団体の努力、意気込みも伝わってきました。

(5)実践発表・ワークショップ

研究会の“原点回帰”として、実践に関する情報交流に力を入れようと、2014年の第38回研究発表会から「実践発表」の場を再び設けています。今回は、2題の実践発表・ワークショップ「脳血管障がい者の運動」と「知的障がい者のスポーツ」でした。脳血管障がいの発症後、マヒのある体に戸惑い、いかにしてスポーツを生活化していくか。ライフスタイルに取り入れることによって、健康づくり・身体機能・認知機能向上に結び付く効果について、その運動・スポーツプログラムを実際に参加者で体験し、指導現場で活用するためのグループディスカッションを行いました。ただ、受け身的に情報を収集するだけでなく各指導現場での活動方法や、安全・物の使い方・グループ運動での配慮をテーマに、3班に分かれて話し合い発表しました。各指導現場での情報収集、情報共有、問題解決となり、自分の指導フィールドですぐに使える貴重な内容でした。

知的障がい者のスポーツでは、個々の障がい状況、発達段階に応じたステップ、得意分野・不得意分野の理解などを踏まえたグループ運動の提示、ワークショップを行いました。実際の体験での運動は、ソフトジムを使用して、筋の緊張状態を確認したり、弛緩することによっての身体意識の向上、他者意識、時間空間の認識と身体意識の向上、を学びました。まず指導者が見本を示し、ソフトジムのウォーミングアッププログラムの展開のおもしろさを確認することができました。この内容は、特に研究会のコンセプトに基づくものであり、今後も現場の指導力向上を目指して、継続して積み重ねていく必要性の高いものです。

3 まとめ

毎年この研究会を持ち回りで開催し、定期発行物として研究紀要を発刊し、今回で40回記念となり、日本の障がい者スポーツの実践の貴重な資料となっています。2日間、障がい者スポーツ関係者が集い、2020東京へ向かう障がい者スポーツの未来の発展を、熱く語り合うことができました。今後も当初のコンセプトを大切にしながら継続していくことと、研究会が障がいのある人に健康と未来に応援できるような団体であることを願っています。次回は、2017年11月18日(土)・19日(日)、福岡市立障がい者スポーツセンターで開催予定です。皆様の参加をお待ちしております。

(ののむらかずこ 日本障がい者体育・スポーツ研究会事務局)