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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年2月号

時代を読む88

障全協結成50年
―憲法・権利条約に基づく施策実現を求めて

障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会(障全協)は、1967年12月に障害児者の「生きる権利」「学ぶ権利」「働く権利」、そして「政治参加の権利」の4つの旗を掲げて結成し、昨年50年という大きな節目を迎えました。

障全協結成の背景には、戦後の障害別の組織結成と福祉法等の施策実現の運動があったことはいうまでもありません。しかし、内部障害者や精神障害者、難病患者など多くの障害者・患者が除外されるなど、障害者関係法の内容は不十分で貧しいものであり、何よりも権利規定が明記されないという根本的な問題が残されていました。また、1960年代の高度経済成長政策のもとで、公害・薬害・交通事故の多発などによって、新たな障害者がつくり出されるなど、障害者施策の上でも多くの矛盾が吹き出し、これまでにない障害者運動の展開が求められていました。

こうした中で、障害の違いを乗り越え、共同・連帯の力で運動し、また憲法に明記された諸権利を障害があることを理由に剥奪(はくだつ)されることを許さない運動をすすめることを目的に障全協は結成されました。もう一つの結成の背景には、『人間裁判』として憲法第25条・生存権と生活保護法の内容で争った行政訴訟「朝日訴訟」(1957年~1967年)と障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止規定の合憲性を争った「堀木訴訟」(1970年~1982年)がありました。障全協は、「朝日訴訟」の闘いを通して結成され、「堀木訴訟」の闘いを通して鍛えられたといえます。

この50年の運動は、「権利」にこだわりながら、劣悪な障害者施策の抜本改正を求め、障害児者・家族の生活を向上させる取り組みでした。2014年1月、日本政府は国連障害者権利条約の締約国に加わりました。障害児者の権利は「譲り渡せないもの」と訴え、その保障を求め続けてきた障全協にとっては、画期的なことであり、半世紀にわたる運動の正しさと新たな運動への確信を与えるものとなっています。

結成50年を機に、あらためて憲法と障害者権利条約に基づく施策実現を求める運動の重要性を確認しあっています。とりわけ、「社会保障の基本は自助・共助(社会保険)」とする社会保障改革は、憲法・条約に逆行するものであり、その見直しを求めなければなりません。また、「障害者は平和の中でこそ生きられる」ことを今ほど強く訴えていかなければならないと痛感しています。

これまでの運動を通して私たちは、障害当事者の参加と共同・連帯の運動こそが世論と政治を動かし、施策実現の可能性を大きく広げることを学んできました。憲法と障害者権利条約に基づく施策実現を目指し、障全協は多くの障害者・患者団体はもちろん、暮らしと平和を求める国民との共同・連帯の取り組みにも微力ながら役割を果たしていきたいと考えています。

(白沢仁(しらさわひとし) 障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会事務局長)