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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年6月号

17の目標のうち障害関連のターゲット

ゴール8:ディーセント・ワークと経済成長

松井亮輔

ゴール8では、「包括的かつ持続可能な経済成長、及びすべての人びとの完全かつ生産的な雇用とディーセント・ワークを推進する」こと、そのターゲット8・5として「2030年までに若者や障害者を含む、すべての男性及び女性の、完全かつ生産的な雇用及びディーセント・ワーク、ならびに同一労働同一賃金を達成する」ことが、掲げられている。そして、このターゲットの達成状況をモニターするため、次の2つの指標が示されている。

8・5・1「職業、年齢グループ及び障害者ごとの男女雇用者の平均時給」

8・5・2「性、年齢グループ及び障害者ごとの失業率」

このゴールでは、雇用とディーセント・ワークは、経済成長とリンクされているが、近年日本においては、経済成長率はきわめて低く、経済成長に伴う雇用の量・質の改善はあまり期待できない。その一方で、少子高齢化により労働人口が減少し、労働力不足が顕在化しているにもかかわらず、いまや民間企業で働く労働者に占める非正規雇用者の割合が4割以上になるなどで、ワーキングプアの問題が深刻化している。ましてや、障害者の場合、その状況は一層深刻といえる。

ゴール8やそのターゲット8・5に掲げられているディーセント・ワークとは、人としての尊厳にふさわしい仕事、つまり、働きがいがあり「労働者とその家族が人たるに値する生活を営める収入を伴う仕事」(社会権規約第7条)を意味する、とされる1)。また、この言葉を1999年に最初に提唱した、国際労働機関(ILO)事務局長は、「労働における基本的原則及び権利の尊重」などを強調している2)

その意味では、現在指標として示されている、平均時給や失業率だけではきわめて不十分である。障害者をはじめ、働くすべての人が、「人としての尊厳にふさわしい仕事」をすることができているかどうか、を検証するための指標づくりが求められる。それは、SDGsの他のほとんどのゴールにも共通するものだけに、これまで指標づくりに関わってきた国連等関係者による最優先での取り組みを期待したい。

(まついりょうすけ 法政大学名誉教授)


【注釈】

1)国連経済社会理事会総括所見18、2006年
Economic and Social Council, General Comments 18, E/C.12.GC/18,para 7

2)第87回ILO総会事務局長報告:ディーセント・ワーク(1999年6月)
http://www.ilo.org/public/english/10ilc/ilc87/reports.htm