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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

差別の解消、権利擁護の推進及び虐待の防止

國府朋江

障害者差別解消法が施行されてから1年半余りが経過した。障害者に対する差別の意味合いや合理的配慮の提供が世間に浸透している実感はあるだろうか。

今年8月に内閣府が実施した世論調査において、障害者差別解消法を知っていると答えた人は21.9%(法律の内容も含めて知っているという人は5.1%)にとどまった1)

第4次障害者基本計画は、障害者差別解消法に基づき、差別解消に向けて、事業者が適切に対応できるよう必要な対応を行うこと、バリアフリー化施策やアクセシビリティ向上のための施策及び職員に対する研修等の施策も着実に進めるとしている。これらの施策を行うこと自体はもちろん評価に値する。しかし、社会に根付いた障害者に対する差別意識や無理解は根強い。

昨年(平成28年)に発生した相模原障害者施設殺傷事件は、障害者はいなくなればいい、という思想のもとに行われた。この事件の被害者は、まさに障害ゆえに被害者となった。

10年前の平成19年に発生した安永健太さん死亡事件では、警察官らは健太さんがコミュニケーションに困難を抱えた市民であるということに容易に気付くことができたにもかかわらず、気付かなかった。健太さんは、知的障害・自閉症の障害特性ゆえの行動から精神錯乱者と間違われ、取り押さえられて死亡しており、障害ゆえに被害者となったといえる。

安永健太さん死亡事件の控訴審(平成27年)において、健太さんを取り押さえた警察官は、「警察官になってから、知的障害者に関する教養プログラムを受けたことはない」「職務上知的障害者と応対したことはない」「職務外でも知的障害者と応対したことはない」と、障害者に対する理解を欠く驚くべき証言をしていた。社会には、何らかの障害のある市民が多く存在している。国民のおよそ6.7%が何らかの障害を有しているというデータも存在する2)

障害のある市民がかなりの数存在し、社会的障壁ゆえに社会参加が妨げられ、差別を受けているという現状を打開するためには、財政的な支出を伴った施策(たとえば合理的配慮の助成制度など)など、もっと踏み込んだ施策が必要なのではないだろうか。

(こくふともえ 弁護士)


【参考文献】

1)内閣府平成29年度「障害者に関する世論調査」

2)平成29年度障害者白書参考資料「障害者の状況」