音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年12月号

第4次基本計画 分野別の評価

司法手続等における配慮

辻川圭乃

権利条約13条は、本計画案の基本的考え方にあるように、障害のある人がその権利を円滑に行使できるよう、司法手続において必要な環境の整備や障害特性に応じた合理的配慮の提供を行うことを我が国に求めている。

司法手続は裁判所が関与する手続のことで、民事事件や家事事件、行政事件なども含むが、本計画案では刑事事件に関する手続ばかりなのがまず気になるところだ。

たとえば、視覚障害のある人に対して裁判所から貸金請求訴訟の訴状が送られてきたとする。家族が不在で封筒の内容がわからず放置していたところ、欠席判決となり、いきなり自宅が差押さえられたなんてことも起こり得る。また、離婚調停で、コミュニケ―ションに障害があり調停委員と意思疎通がうまくとれないために、希望を満足に言えずに不本意な結果を甘受せざるを得なくなるかもしれない。合理的配慮がなされないことで権利が守られないのは、刑事手続に限らないのである。

次に、意思疎通等を円滑に行えるようにすることのみが、司法手続の運用における適切な配慮ではない。なぜなら、権利条約13条がいう「手続上の配慮」は司法分野における合理的配慮が特化されたものである。司法手続において合理的配慮がなされないことは、実質的にみると一般に与えられている法的保護を障害のある人には与えないことを意味するので、人権の最後の砦である裁判所が関与する手続においては、特に合理的配慮がなされなければならない。その意味で、司法手続の運用においては、情報保障のみならず広く合理的配慮が提供される必要がある。

さらに、本計画案で、地域生活定着支援センター等による刑務所に入っている、いわゆる累犯障害者と呼ばれる人たちの円滑な社会復帰を促進するための支援(出口支援)のことは述べられているが、刑務所に入れるのではなく、地域において福祉や医療と連携して環境調整を行うことで、社会生活の中で更生を尽くすことができるようにする社会復帰支援(入口支援)に言及していないところが残念である。

なお、私は弁護士であるので、罪を犯した知的障害のある人たちの社会復帰支援のために連携することはやぶさかではないが、それはあくまで障害のある人の更生支援のためであって、再犯防止の観点からではない。再犯防止は、あくまで更生支援を尽くした結果として後からついてくるものであると考えている。

(つじかわたまの 弁護士)