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用語の解説

生活技能訓練

 生活技能訓練はsocial skills trainingの訳語で、SSTや、社会生活技能訓練、社会的スキル訓練、社会技術訓練とも呼ばれている。

 精神障害者のリハビリテーションを推進するためには、生活障害(能力障害)に含まれるような、家族や友人、職場などでの対人関係や、自立した生活を妨げる様々な要因を解明し、それらを克服・改善していくことが必要となる。

 生活技能訓練は、①ストレス―脆弱性―対処技能モデルに立ち、患者の生活を環境との好ましい平衡状態に導くことを目的とし、②受信技能、処理技能、送信技能を区別して、行動療法と社会的学習理論に基づき、患者の認知・学習障害に対応した訓練を実施して患者の生活技能と対処能力を高めること、③訓練は通常集団で実施されるが、その実施にあたっては、受容的で肯定的な集団の雰囲気を維持し、患者の関心から出発して自発性を引き出しながら、ロールリハーサルやモデリングを活用して社会的行動の学習を促進すること、④実生活への般化(generalization)を重視し、宿題を設定して、その実行を促すことが特徴である。

 わが国においても1988年のLibermanの来日以降急速に普及しつつあるが、今後の発展の上で下記の3点が重要と思われる。第一に、この技法は薬物療法、個人・集団精神療法、家族療法等と組み合わせて実施することが容易であり、多様な対象に実施され社会復帰の推進に役立てられることが期待されること。第二に、服薬自己管理、基本的会話、症状自己管理などのモジュール(課題領域別治療パッケージ)の普及を進めること。第三に、各種疾患や障害についての最新の知見を取り入れつつ多様な施設で効果的に実施できる技法としてさらに発展させることである。

(安西信雄/都立松沢病院)

レスパイトサービス

 レスパイトサービスとは、障害児(者)をもつ親・家族を、一時的に一定の期間、障害児(者)の介護から解放することによって、日頃の心身の疲労を回復し、ほっと一息つけるようにする援助である。

 障害児(者)のショートステイは、親・家族の緊急事態に対応することも必要であるが、「親・家族の介護からの開放と心身のリフレッシュ」という、積極的な面に注目してほしい。

 住宅地にあるセカンドハウス的な住居に、障害児(者)が短期間滞在し、専門の職員が介護する形が普通であるが、障害児の放課後の世話(学童保育)、援護職員が家庭へ訪問する形式(ベビーシッター)、夏休みなどの余暇活動と組み合わせた宿泊も考えられよう。

 国や地方自治体の「緊急一時入所(保護)事業」は、緊急事態を抱えた親・家族は助かるが、障害児(者)本人に対して、遠くの大施設での不慣れな集団生活を強いることになる。重度、重複障害をもった人達には心身の負担は想像以上に大きく、親も利用をためらう。

 住み慣れた普通の住環境(セカンドハウス)で、顔なじみの援助職員と普段の生活ができ、日中は自分の学校、通所施設、作業所に通えれば、障害児(者)本人も快適で、親・家族も納得がいき、心身ともにリフレッシュできる。

 レスパイトサービスは、手近にあって、電話一本で予約でき、しかも手頃な費用で(原則として援護職員の人件費は公の負担)利用できることが望ましい。

(廣瀬貴一/光の園)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1992年10月(第73号)48頁