音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

2012年10月1日

NEWS RELEASE

きょうされん(旧称:共同作業所全国連絡会)は、障害のある人も、障害のない人も誰もが生きやすい社会をめざして、ソーシャルアクションを展開しています。

日本の障害の重い人の現実

 障害のある子どもを親が手にかける、一家そろって心中を図る。21世紀となって10年経った今でもこうした悲惨な報道は後を絶ちません。その背景を一言で言えばこうなります。「障害のある人の極めて貧しい収入、家族に依存した介護による毎日は、ギリギリの生活になっている」。言いかえれば、親など家族が居なくなってしまえば、途端に生活を維持できなくなる「生活保護予備軍」「社会的入院・入所予備軍」ということです。それが私たちの国の障害の重い人のおかれている現実です。
 私たちきょうされんが他の障害者団体と協力して、福祉的就労の利用者(以下、障害のある人)の地域生活の実態を調査した結果の概要をここに報告します。

<2人に1人は相対的貧困以下、99%は年収200万円以下>
<生活保護の受給率は、障害のない人の6倍以上>
<6割弱が「親との同居」>
<低収入ほど社会と遠ざかる>
<結婚している人は4%台>

<2人に1人は相対的貧困以下、99%は年収200万円以下>

 年収100万円以下の障害のある人たちは56.1%、112万円の「貧困線」を下回る相対的貧困とよばれる状態に、2人に1人がおかれています。
 また、年収200万円以下のいわゆるワーキングプアの状態にある人は、国の調査で22.9%を占めるとされていますが、障害のある人の98.9%、100人のなかで99人がこの状態におかれています。

<生活保護の受給率は、障害のない人の6倍以上>

 1996年以来増え続ける生活保護受給者。保護を受けている人の割合は、1.52%となっています(2010年時点)。一方で、障害のある人が生活保護を受けている割合は9.95%。実に6倍以上です。

【事例】神奈川県で単身生活を送るAさん。精神障害。企業で就労していましたが、人間関係や仕事の進め方等で悩み退社、現在通所型の就労訓練施設に通っています。親との関係が悪く、同居や援助は望んでいません(兄弟にも障害有)。収入は月約10万円の年金のみ、年収にすると約120万程度。現在働いていた時の貯金を切り崩して生活していますが、この状態が続けば生活ができなくなり、生活保護にならざるを得ません。

<6割弱が「親との同居」>

 10代から40代前半までの約6割の障害のある人が親との同居の生活を送り、40代後半から50代前半までの割合は4割に減るものの、「親との同居」の割合はもっとも高くなりました。つまり、障害のある人は生まれてから50歳を迎えるまで、「親と同居」している人が半数を占めるのです。その背景には、本人の低収入があり、親と同居せざるを得ない状況がうかがえます。
 これは、障害のない人が20代前半から30代前半に一人暮らしが増え、その後結婚等により家族同居の割合が上昇するのと、大きく異なる生き方になっています。

【事例】茨城県に住む40代のBさん、白杖を使うほどではない軽度の視覚障害があります。一般就労を本人は望んでいますが、年齢的なこともあり、現状では難しい状況です。軽い障害のため、障害年金は受け取っていません。年収は25万円程度。70代の母親と二人暮らしですが、母なき後の不安は常につきまとっています。

<低収入ほど社会と遠ざかる>

 障害のある人の暮らしぶりは収入によって大きく変わっていきます。収入と「休日の主なすごし方」、収入と「休日だれとすごしているか」の関係からは、収入の増加に伴い「趣味」、「友達とすごす」が増えていました。収入が増えるにしたがって、家族に支えてもらい、家族のみと家にいるだけの生活から、自らの選択による生活、他の人々とも交わりながらの生活へと広がりがみられます。逆に収入が低いほど、親と過ごす時間が増えて、交友関係が狭まっていきます。

<結婚している人は4%台>

 「配偶者との同居」という問いで、結婚している人の割合をたずねたところ、4.3%となりました。とりわけ、知的障害のある人が結婚している割合はわずか1.4%でした。2010年の国勢調査を参考にすると、生涯未婚率は男性で20.14%、女性10.61%となっており、障害のある人の未婚の割合は男性で96.00%、女性では95.37%と、それぞれ4倍以上、9倍以上の差があります。

以上のような実態を改善・改革していくための4つのポイントを私たちは提言します。

  1. 家族依存の温床となっている扶養義務制度の改正(民法改正)
  2. 障害のない人と同等の暮らしを営める所得保障制度の確立(障害基礎年金制度の拡充を中心に)
  3. 地域での自立した生活を支えるための基盤整備(人的・物的な条件整備)
  4. 障害のある人にもディーセントワークを(労働と福祉の一体的な展開を具体化する社会支援雇用制度の創設)

障害のある人の地域生活実態調査の結果(最終報告)

 2006年に国連が採択した障害者権利条約には、障害のある人に対して「特別の権利を」とか、「新たな権利を」などの表現は一切ない。一貫してくり返されるのが「他の者との平等を基礎に」であり(34カ所)、障害のない市民との平等性や公平性を求めているのである。
 しかし、わが国の現実は甘くはない。障害のない市民との格差は枚挙に暇がないが、それを象徴する問題の一つに所得水準の低さと家族へ依存することでしか地域生活が成り立ちにくいという現実がある。
 これらの現実は、市民との格差という点で看過できないだけではなく、「施設から地域へ」、「病院から地域へ」を阻んでいる要因にもなっている。地域移行の必要性をどんなに力説したところで、家計の最低基盤の確立や家族依存を脱却しない限り、空疎なスローガンに終わってしまうのではなかろうか。また、表向きは地域での暮らしが成り立っているようにみえている者であっても、その内実がいかにギリギリの状態に置かれているか、地域移行とは逆の「施設入所・入院予備軍」がいかに多いか、この点をしかと認識すべきである。
 ただし、所得水準や家族依存の実態は明確ではない。この点で国による調査は極めて不十分と言わざるを得ない。折しも、障害関連政策の集中的な改革期間と重なっているこの段階で、これらのデータの不備は、致命的な欠陥であり残念の極みである。本調査は、それに代わるものではないが、しかし関係団体の協力の下で1万人余の実態を回収できたことは、実態を知る上で有効な手掛かりとなろう。
 第一次報告では所得状況にウエイトを置き発表したが、最終報告は過去に実施した「家族の介護実態」など家族依存・家族負担の調査結果とも相関させながら、所得と合わせて暮らしの状況を分析した。障害のない人との平等という観点からすると、どれほど隔たりのある生活実態におかれているかを浮き彫りにしたい。

1.調査概要

(1)目的

 本調査は、障害のある人の所得状況と生活状況を把握し、それを障害のない市民と比較し、格差の実態を明らかにすることを目的に実施した。とくに、今国会で審議されている障害者自立支援法に代わる新法の論議をはじめ、近々に改正が図られる障害基礎年金を含む国民年金法のあり方など障害関連政策の検討をすすめるうえで、改革すべき障害施策の問題点を浮き彫りにすることを主眼とした。

(2)調査対象・方法

 きょうされん加盟の通所施設・入所施設・事業所を中心に、2011年11月から12月末日までにFAXまたは郵送によって、記入者本人より直接回収した。また、日本障害者協議会に加盟する事業所団体にも調査を依頼して、2012年2月3日までにFAXまたは郵送によって記入者本人より直接回収した(註1)。

註1 全国社会就労センター協議会、日本盲人社会福祉施設協議会、ゼンコロ、全国精神障害者地域生活支援協議会の4団体

(3)回答数

 回答のあった障害のある人は10,012人で、就労継続支援A型やB型事業、就労移行支援事業、生活介護事業、地域活動支援センター、旧法授産・更生施設などの障害福祉サービスを利用している人たちであった。
 なお、我が国の障害福祉サービスの利用者は64万人(註2)とされており、本調査はその2%弱が回答したことになる。

註2 出典:厚生労働省統計情報「障害福祉サービス等の利用状況について」2011年11月分から

表1 記入者の内訳(複数回答あり、有効回答数9,756) (以降、小数点第2位を四捨五入)

本人 きょうだい 職員 配偶者 その他
3,570人
36.6%
3,673人
37.6%
204人
2.1%
2,325人
23.8%
63人
0.6%
23人
0.2%

2.回答のあった障害のある人の概況

 性別では、男性が6,128人(61.8%)、女性が3,786人(38.2%)であった(表2)。
 主な障害種別は、重複を含めて知的障害が6,878人(69.5%)、次いで身体障害が3,287人(33.2%)、精神障害が1,852人(18.7%)、発達障害が483人(4.9%)、その他が58人(0.6%)であった(表3)。重複障害のある人は2,412人(24.4%)であった(表4)。
 年齢階層では、35歳から39歳がもっとも多く1,375人(14.1%)で、次いで30歳から34歳が1,159人(11.9%)であった(表5)。平均年齢は40.4歳、最高齢は93歳であった。
 障害者手帳の取得者は9,376人で有効回答数の98.5%を占めた(表6)。その内訳は、複数取得を含めて知的障害のある人の療育手帳が6,405人(68.3%)、次いで身体障害者手帳が3,115人(33.2%)、精神保健福祉手帳が1,293人(13.8%)であった(表7)。

表2 性別の回答数(有効回答数9,914)

男性 女性
6,128人
61.8%
3,786人
38.2%

表3 主な障害(複数回答あり、有効回答数9,901)

身体障害 知的障害 精神障害 発達障害 その他
3,287人
33.2%
6,878人
69.5%
1,852人
18.7%
483人
4.9%
58人
0.6%

表4 重複障害の人の割合(有効回答数9,901、主な障害に複数回答している人を重複とした)

単独 重複
7,489人
75.6%
2,412人
24.4%

表5 年齢階層(有効回答数9,721、単位:歳)

18~19 ~24 ~29 ~34 ~39 ~44 ~49 ~54 ~59 ~64 65~
307人
3.2%
1,217人
12.5%
1,100人
11.3%
1,159人
11.9%
1,375人
14.1%
1,145人
11.8%
836人
8.6%
678人
7.0%
660人
6.8%
641人
6.6%
603人
6.2%

表6 障害者手帳の有無(有効回答数9,518)

9,376人
98.5%
142人
1.5%

表7 障害者手帳の種別(複数回答あり、有効回答数9,376、「障害者手帳」ありの回答者)

身体障害者手帳 療育手帳 精神保健福祉手帳
3,115人
33.2%
6,405人
68.3%
1,293人
13.8%

表8 重度障害の人の割合(有効回答数9,376、「障害者手帳」ありの回答者)

重度 その他
4,382人
46.7%
4,994人
53.3%

※身体障害者手帳1・2級、療育手帳A・1・2級、精神保健手帳1級を重度とした。

3.障害のある人の主な収入状況

 障害年金の受給者は7,504人(86.7%)で、そのうち、障害基礎年金が6,343人(84.5%)で、障害厚生年金が393人(5.2%)であった(表9,表10)。また、生活保護費の受給者は923人(10.0%)に上り、有効回答数の約1割を占めた(表11)。
 障害基礎・厚生年金、生活保護費、障害手当、給料、工賃など全て含む本人の月額収入では、4万2千円以上8万3千円未満が3,742人(41.1%)と最も多く、次いで8万3千円以上10万5千円未満2,595人(28.5%)、10万5千円以上12万5千円未満698人(7.7%)、1円以上1万円未満644人(7.1%)、12万5千円以上16万7千円未満607人(6.7%)、1万円以上2万円未満374人(4.1%)、2万円以上4万2千円未満270人(3.0%)、0円82人(0.9%)という結果であった(表12)。
 月額収入4万2千円以上10万5千円未満が、69.6%と全体の約7割を占めていた。

表9 障害年金受給者数(有効回答数8,660)

受給している 受給していない
7,504人
86.7%
1,156人
13.3%

表10 障害年金の種別(複数回答あり、有効回答数7,504、「障害年金受給者」の回答者)

基礎年金 厚生年金 未記入
6,343人
84.5%
393人
5.2%
768人
10.2%

表11 生活保護費受給者数(有効回答数9,271)

受給している 受給していない
923人
10.0%
8,348人
90.0%

表12 月額収入の分布(有効回答数9,111)

0円 1円~ 1万円~ 2万円~ 4.2万円~ 8.3万円~ 10.5万円~ 12.5万円~ 16.7万円~
82人
0.9%
644人
7.1%
374人
4.1%
270人
3.0%
3,742人
41.1%
2,595人
28.5%
698人
7.7%
607人
6.7%
99人
1.1%

4.障害のある人の主な暮らしの状況

 本調査の対象が、障害者福祉施設等の事業所を利用している障害のある人だったことから、日中の主な活動の場の圧倒的多くは、福祉施設の8,934人(94.5%)だった。それに対して、在宅者は354人(3.7%)で、一般就労者は282人(3.0%)と、わずかであった。その他41人(0.4%)には、入院などのケースが含まれている(表13)。
 平日に「誰とで暮らしているか」では、親と同居が5,637人(56.7%)と過半数を占めた。次いで、きょうだいが1,814人(18.3%)、グループホーム・ケアホームが1,496人(15.1%)、入所施設が1,325人(13.3%)となっていた。一人暮らしをしている人は762人(7.7%)と、一割に満たなかった(表14)。
 休日「どこで過ごしているか」では、家やグループホーム、ケアホームで過ごすと回答した人が5,943人(66.5%)と、有効回答の3分の2を占めていた(表15)。それに対して、「趣味や興味のあること」で外出等をしている人は3,233人(36.2%)だった。休日に「誰と過ごしているか」でも、やはり親と過ごす人が6,076人(62.2%)でもっとも多く、次いで、きょうだいの1,878人(19.2%)だったが、入所施設の1,377人(14.1%)は、友だちの1,212人(12.4%)とグループホーム・ケアホームの1,176人(12.0%)を若干上回っていた(表16)。
 困ったときに相談できる相手では、親の6,344人(65.4%)と、福祉施設職員6,379人(65.7%)がもっとも多かった。なかには、相談できる相手がいない、と回答した人も456人(4.7%)にのぼった (表17)。
 最終学歴では、特別支援学校高等部が4,817人(50.0%)で過半数を占めていた。次いで、普通学校の中学校1,526人(15.8%)、高等学校の1,436人(14.9%)となっていた(表18)。障害のない人と比べると、後期高等教育を受ける機会がきわめて少ないということが明確になった(表19)。

表13 日中の主な過ごしかた(複数回答あり、有効回答数9,458)

一般就労 福祉施設 在宅 その他
282
3.0%
8,934
94.5%
354
3.7%
41
0.4%

表14 誰と暮らしているか(複数回答あり、有効回答数9,934)

一人 配偶者 子ども きょうだい 祖父母 友だち GHCH 入所 親戚 その他
762
7.7%
427
4.3%
215
2.2%
5,637
56.7%
1,814
18.3%
466
4.7%
27
0.3%
1,496
15.1%
1,325
13.3%
38
0.4%
32
0.3%

表15 休日の主な過ごし方(複数回答あり、有効回答数8,935)

趣味・興味 家・GH その他
3,233
36.2%
5,943
66.5%
76
0.9%

表16 休日を誰と過ごしているか(複数回答あり、有効回答数9,768)

配偶者 子ども きょうだい 祖父母 友だち GHCH 入所 1人 ヘルパー その他
458
4.7%
243
2.5%
6,076
62.2%
1,878
19.2%
460
4.7%
1,212
12.4%
1,176
12.0%
1,377
14.1%
448
4.6%
259
2.7%
246
2.5%

表17 困った時の相談相手(複数回答あり、有効回答数9,706)

家族 親戚 友だち 福祉職員 行政職員 近所 医療関係者 いない その他
6,344
65.4%
60
0.6%
1,337
13.8%
6,379
65.7%
490
5.0%
156
1.6%
92
0.9%
456
4.7%
190
2.0%

表18 学歴(有効回答数9,634)

免除 特支中学 中学 特支高校 高校 専門 高専・短期 大学・大学院 小学校 その他
81
0.8%
491
5.1%
1,526
15.8%
4,817
50.0%
1,436
14.9%
409
4.2%
215
2.2%
398
4.1%
80
0.8%
181
1.9%

表19 15歳以上の一般の人との比較

  本調査 2010年国勢調査
免除 81人(0.8%) 0人
小学校・中学校 2097人(21.7%) 1709.9万人(18.8%)
高校・専門・旧中学校 6662人(69.2%) 4260.9万人(46.8%)
短大・高専 215人(2.2%) 1333.8万人(14.7%)
大学・大学院 398人(4.1%) 1798.9万人(19.8%)
その他 181人(1.9%)  
不詳   1113.2万人
合計 9634人  

(出典 総務省 2010年国勢調査)

5.集計から見えてきたこと-障害のある人の収入状況を中心に

(1)障害のある人の56.1%が、相対的貧困の生活に

 月額収入から年収を積算した結果、表20にあるように、相対的貧困とされる112万円の「貧困線」を下回る障害のある人たちが56.1%にも及んでいた。
 この「貧困線」は、厚労省の国民生活基礎調査で公表されているもので、まず前年の世帯収入のうち直接税・社会保険料を除く可処分所得を世帯人員の平方根で割り、国民一人当たりの収入を算出している。2010年の同調査結果では、この可処分所得を積算・比較した結果、その実質中央値は年収224万円と算定され、その2分の1の年収112万円が、いわゆる「貧困線」となる。この「貧困線」より下回っていた国民が16%とされていることと比べると、本調査で分かった56.1%はきわめて高い数値である。

 また、国税庁の2010年民間給与実態統計調査の結果と比較した(図1)。同調査は就労所得の調査であり、調査結果によると、いわゆるワーキングプアといわれる年収200万円以下が、22.9%を占めていた。ワーキングプアとは、フルタイムで働いても、生活維持が困難もしくは生活保護の水準にも満たない収入しか得られない就労者のことであり、すなわち「働く貧者」のことである。
 本調査で明らかにされた98.9%の障害のある人たちは、このワーキングプアと同水準の収入状態に置かれていることになる。
 このように、いずれの国民生活の収入水準の客観的な指標と比べても、障害のある人たちの収入状況はきわめて低い。そのことが本調査で初めて立証されたといえる。

表20 障害のある人の収入状況と民間給与統計調査、国民生活基礎調査との比較

  本調査 民間給与実態統計調査 2010年 国民生活基礎調査結果
2,000万円超 0人 18.0万人(0.4%) ※可処分所得とは、直接税・社会保険料を除く収入である(資産を除く)。
※実質値とは、その年の等価可処分所得を昭和60年(1985年)を基準とした消費者物価指数で調整したもの
2,000万円以下 0人 27.6万人(0.6%)
1,500万円以下 0人 129.4万人(2.8%)
1,000万円以下 0人 74万人(1.6%)
900万円以下 0人 116.1万人(2.6%)
800万円以下 0人 179.3万人(3.9%)
700万円以下 0人 259.4万人(5.7%)
600万円以下 0人 427.5万人(9.4%)
500万円以下 1人(0.01%) 652.3万人(14.3%)
400万円以下 8人(0.08%) 822.6万人(18.1%)
300万円以下 90人(0.98%) 800.4万人(17.6%)  
200万円以下 607人(6.66%) 684.1万人(15.0%) 実質中央値 224万円
150万円以下 698人(7.66%) ※貧困線は実質中央値の1/2の水準である112万円となる。
125万円以下 2,595人(28.48%)
100万円以下 5,112人(56.11%) 361.1万人(7.9%) 貧困線 112万円
合計 9,111人 4551.8万人  

(出典 国税庁 2010年民間給与実態統計調査、厚生労働省 2010年国民生活基礎調査の概況)

図1 障害のない人とある人の収入の比較(単位:%)

*図1は、表20を棒グラフにしたもの。きょうされんサイトの「障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)」 のp.9を参照のこと。

(2)障害のある人の生活保護の受給率は、障害のない人の6倍以上

 本調査のうち、生活保護を受給している人は923人であり、有効回答者9,271人中9.95%だった。一方、生活保護を受けている人の割合は、被保護実人員195万2063人を総人口で割った、1.52%である(2010年時点)。障害のない人と比べて、障害のある人は6倍以上も受給率が高い結果となった。

表21 障害のある人とない人の生活保護受給者数と割合

  生活保護受給者数 母数 割合
障害のない人 195万2063人 * 1億2805万人 ** 1.52%
障害のある人 923人 9271人 9.95%

* 生活保護受給者:厚生労働省社会・援護局「被保護者全国一斉調査結果報告書(基礎調査)」

(3)障害のある人の一割弱は、障害年金も生活保護も受給なし

 本調査で約9割の人が受給している障害年金は、所得保障の主要な柱であるが、障害年金も生活保護も受給していない人が、20歳以上の1割に迫る635人(8.2%)という結果が明らかになった(表22)。
 厚生労働省による調査によると、いわゆる福祉的就労の場(就労継続B型,授産施設など)における平均工賃は、平成22年度は13,079円である。障害年金や生活保護を受給せずに働いて得た収入だけでは自立した生活、親からの独立した暮らしを営むことは、きわめて困難である。

表22 20歳以上の障害年金ならびに生活保護受給の状況

(有効回答数7,723、障害年金・生活保護受給の有無の回答者数)

  生活保護受給 生活保護なし
障害年金受給 486人(6.3%) 6,395人(82.8%)
障害年金なし 207人(2.7%) 635人(8.2%)

(4)50代前半まで「親依存の生活」

 本調査では、障害のない人ときわめて異なる、障害のある人のライフステージが浮き彫りになった。
 まず、障害のない人のライフステージの推移をみてみる。図4、5のグラフは国勢調査の統計推移であるが、10代は親との同居生活を送り、20代前半から30代前半に就職などを契機に、一人暮らしなどが増えるとともに、家族との同居の割合が下がる。30代からは結婚等によって家族を構成し、家族同居の割合が上昇し、40代以降も同水準を推移する。これが、障害のない人のライフステージである。
 それに対して障害のある人は、まったく異なるライフステージを辿っている。本調査の「誰と暮らしているか」を年齢別にみてみると、10代から40代前半までの約6割の人が「親との同居」の生活を送り、40代後半から50代前半までは4割に減るが、それでも「親との同居」の割合はもっとも高かった。つまり障害のある人は、生まれてから50歳を迎えるまで、「親と同居」している人が半数を占めていたといえる(表23)。
 また50代後半になると、親の年齢も高齢となるためか、一人暮らしやGH・CH、入所施設などの割合の方が高くなり、65歳以上になると51.6%と約半数の障害のある人が入所施設での生活となっていた。
 さらに収入別にみてみると、年収100万以下と125万以下は、約6割が「親との同居」を占めており、「一人暮らし」は200万以下になって、ようやく2割を超えていた(表24)。
 このように障害のある人は、障害のない人と比べて、まったく異なるライフステージを余儀なくされ、とくに、50代前半まで「親依存の生活」を強いられ、その背景にはきわめて低水準な収入があるといえる。

表23 障害のある人の年齢と同居者の状況

  一人 きょうだい GHCH 入所 合計
10~19歳 0(0.0%) 266(61.0%) 138(31.7%) 16(3.7%) 16(3.7%) 436
20~24歳 6(0.4%) 1,057(63.8%) 468(28.2%) 81(4.9%) 46(2.8%) 1,658
25~29歳 16(1.2%) 880(65.1%) 286(21.2%) 107(7.9%) 63(4.7%) 1,352
30~34歳 41(3.1%) 852(63.4%) 222(16.5%) 169(12.6%) 60(4.5%) 1,344
35~39歳 82(5.4%) 923(61.2%) 192(12.7%) 209(13.9%) 102(6.8%) 1,508
40~44歳 78(6.4%) 697(56.9%) 150(12.3%) 186(15.2%) 113(9.2%) 1,224
45~49歳 72(8.4%) 384(44.8%) 85(9.9%) 174(20.3%) 143(16.7%) 858
50~54歳 96(14.6%) 205(31.3%) 75(11.4%) 138(21.0%) 142(21.6%) 656
55~59歳 129(21.0%) 110(17.9%) 70(11.4%) 133(21.7%) 171(27.9%) 613
60~64歳 128(21.9%) 72(12.3%) 48(8.2%) 148(25.3%) 188(32.2%) 584
65歳~ 87(17.1%) 31(6.1%) 29(5.7%) 100(19.6%) 263(51.6%) 510
未記入 27(9.3%) 160(55.0%) 51(17.5%) 35(12.0%) 18(6.2%) 291
合計 762(7.7%) 5,637(56.7%) 1,814(18.3%) 1,496(15.1%) 1,325(13.3%)  

図2 障害のある人の年齢と同居者の状況

*図2は、表23を折れ線グラフにしたもの。きょうされんサイトの「障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)」 のp.11を参照のこと。

表24 障害のある人の年収と同居者の状況

  一人 きょうだい GHCH 入所 合計
100万円以下 249(5.1%) 3,196(65.4%) 101(2.1%) 610(12.5%) 7,291(13.3%) 4,885
125万円以下 153(6.1%) 1,453(58.3%) 54(2.2%) 478(19.2%) 355(14.2%) 2,493
200万円以下 261(22.3%) 496(42.4%) 23(2.0%) 262(22.4%) 129(11.0%) 1,171
400万円以下 18(26.9%) 26(38.8%) 4(6.0%) 12(17.9%) 7(10.4%) 67
未記入 80(9.9%) 466(57.5%) 27(3.3%) 133(16.4%) 105(12.9%) 811

図3 障害のある人の収入と同居者の状況

*図3は、表24を棒グラフにしたもの。きょうされんサイトの「障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)」 のp.11を参照のこと。

図4 障害のある人と障害のない人との比較(同居の割合) 出典:2010年国勢調査

*図4は、障害のある人とない人の、世代ごとの親との同居の割合を比較した折れ線グラフ。きょうされんサイトの「障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)」 のp.11を参照のこと。

図5 障害のある人と障害のない人との比較(一人暮らしの割合) 出典:2010年国勢調査

*図5は、障害のある人とない人の、世代ごとの1人暮らし割合を比較した折れ線グラフ。きょうされんサイトの「障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)」 のp.12を参照のこと。

(5)社会とのつながりが希薄な生活

 本調査からみる障害のある人の休日のすごし方には、一定の傾向が見られた。
 まず休日を親とすごすという人が全体の62.2%と最も高い割合となっていた。次いで、きょうだいが19.2%、入所施設の14.1%となっており、友人、知人は12.4%だった(表16)。
 親、きょうだい、祖父母、一人を合わせると90.7%となり、障害のある人の大半は、親などの身内か一人で休日をすごしているという実態が浮き彫りになった。また、親とともに暮らしている人が5,637人に対し、休日を親とすごすと答えた人が6,076人と上回っていた。これは、親との同居者以外でも休日は親とともにすごしている人が多いという傾向である。
 次に休日のすごし方を収入状況別の分布で見てみる(図6)。その結果、収入が低い人ほど家庭やGHですごす割合が高く、収入が高くなるにつれて趣味や興味のある活動等が多くなるという傾向が見られた。
 また、休日をともにすごす人の割合を収入状況別で見てみると、収入の増加に伴い、親とすごす人の割合が減少し、友達とすごす人の割合が増えているのかがわかる(図7)。

 また、「配偶者との同居」という形で、現時点でどれだけの人が結婚しているかについて、調べたところわずか427人、4.3%という結果となった(表14)。
 国勢調査によれば、生涯未婚率は男性で20.14%、女性10.61%となっている。これは、50歳時点で結婚したことがない人の割合であり、単純な比較はできない。しかし、現時点で結婚していないと思われる障害のある人の割合は男性で96.0%、女性では95.37%となった(図8)。この背景には、社会全体における差別や偏見もさることながら、低い収入や介護など親などの家族に頼らざる得ない生活があると思われる。
※生涯未婚率は、2010年国勢調査より。

図6 年収別の休日のすごし方の割合

*図6は、年収別の休日のすごし方の割合の棒グラフと表。表は以下に表示した。棒グラフと合わせた図は、きょうされんサイトの「障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)」 のp.12を参照のこと。

  100万円以下 125万円以下 200万円以下 400万円以下
その他 0.7 0.9 0.9 2.3
家・GH 65.3 66 61.3 54.4
趣味・興味 34 33.1 37.8 44.3

図7 年収別の休日をともにすごす人の割合

*図7は、年収別の休日をともにすごす人の割合の折れ線グラフと表を。表は以下に表示した。折れ線グラフと合わせた図は、きょうされんサイトの「障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)」 のp.12を参照のこと。

  100万円 125万円 200万円 400万円
47.6 46.3 33.9 26.8
友達 8 7.3 14.4 16.7

図8 未婚の人の割合

国勢調査の生涯未婚率と本調査での未婚率を比較した棒グラフ。国勢調査の生涯未婚率は男性で20.14%、女性10.61%、本調査での未婚率は男性で96.0%、女性では95.37%である。棒グラフは、きょうされんサイトの「障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)」 のp.13を参照のこと。

6.まとめ-改革すべき制度

 本調査の目的は、障害のある人の所得ならびに生活状況を明らかにし、権利条約で謳われている「他の者との平等」の観点から、障害のない市民との格差を検証することにある。従って、ここでは、他の社会調査との比較などから本調査結果をもとに、政策課題および改革すべき制度を明らかにする。

(1)きわめて貧困な所得状況-障害基礎年金制度の問題点

 まず本調査では、障害のある人の所得がきわめて低水準な実態にあることが浮き彫りになった。障害のある人の半数以上が年収125万円以下の貧困状態にあり、9割が年収200万円以下のワーキングプアの状態にあった。現在の障害基礎年金制度では、1級で年額約98万円、2級では約78万円となっており、仮に1級年金の人が障害者手当等を得られて年間130万円程度にようやく届くか否かの収入である。福祉施設における労働では、そこで支払われる賃金(工賃)が全国平均で月額13,000円程度という水準であり、併せても年額150万円に満たない(註3)。一般就労をしている人を含め9割はワーキングプアの状態にあることからも、障害のある人が著しく低い所得状況の中で、我慢を強いられている事実は明白である。
 また調査の中では、障害のある人の暮らしぶりが収入の変化によって大きく変わってゆく実態をみてとることができた。収入と「休日の主なすごし方」、収入と「休日だれとすごしているか」の関係からは、収入の増加に伴い「趣味」、「友達とすごす」が増え、家族とすごす割合が減少していく結果が見られた。
 つまり、収入が増えるにしたがって、家族に支えてもらい、家族のみと家にいるだけの生活から、自らの選択による生活、他の人々とも交わりながらの生活のひろがりの獲得に移り変わっているのである。

註3 月額平均工賃:厚生労働省2010年度工賃(賃金)実態調査

(2)「親に依存」しなければ成り立たない生活実態-扶養義務制度の問題点と低い所得水準が背景に

 次に明らかになった点は、「親に依存」しなければ成り立たない生活実態である。
 2010年12月にきょうされんが行った『家族の介護状況と負担についての緊急調査』では、在宅で暮らす障害のある人の約9割が両親による介護で支えられている実態が明らかになった(図9)。同調査では、介護者の64%を占めている母親のうち60歳以上が49%を占めていたことからも、母親が高齢になっても、障害のある本人の介護負担を課せられていることが判明した(図10)。また、この極度の「親に依存した生活」の要因は、民法の扶養義務制度によって課せられた制約と、社会資源の不足なども大きく関わっていることを浮き彫りにした。

図9 介護者の階層(人)

介護者の階層の人数を表した円グラフ。母:2,649人、父:1,047人、兄弟:184人、配偶者:145人、祖父母:50人、子ども:23人、親戚:22人、その他:3人である。円グラフは、きょうされんサイトの「障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)」 のp.14を参照のこと。

図10 介護者の年齢階層(人)

介護者の年齢階層の人数を表した棒グラフ。60歳代:1,367人、50歳代:1,359人、70歳代:643人、40歳代:464人、80歳以上:151人、40歳未満:85人である。棒グラフは、きょうされんサイトの「障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)」 のp.14を参照のこと。

 本調査では「親との同居」の割合がきわめて高く、しかも50代前半まで「親との同居」が長期に及ぶことが明らかになった。この結果は、前回調査で明らかにした、障害のある人の暮らしが「親への依存」によって支えられている実態を改めて裏付けるものとなった。しかも、極度の「親への依存」の要因には、障害のある人のきわめて低い所得水準が背景にある。

(3)障害のない人と平等な人生を保障するために

 以上みてきたように本調査では、障害のある人の半数は貧困状態に、9割がワーキングプアを下回る所得水準にあり、そのために経済的負担と暮らしの支えを「家族に依存」せざるを得ない生活実態が明らかになった。一人暮らしはわずか7.7%であり、障害のある人にとっては「儚い夢の生活」となっている。また、「親がいるうちは、親が支える」が当たり前とされ、それは、障害のある本人が50歳になり、親が80歳代になるまで強いられている実態が浮き彫りになった。まさに障害のある人の生活は、「親への依存」と「本人の我慢」により成り立っているといわざるを得ない。
 現在、政府がすすめている障害者制度改革は、この「親への依存」と「本人の我慢」を解決するために、その原因の本質にメスをいれなければ意味をなさない。なぜならば、障害者制度改革は、「他のものとの平等」や「どこに住み、誰とどのように暮らすのかを選ぶ権利」を国際水準として謳った権利条約の批准のための国内法制度の整備をめざしているからである。
 今回の調査で浮き彫りにされた「親への依存」と「本人の我慢」を根本的に解決するためには、いかなる法制度の改革が求められるのか。ここでは関連する法制度の改革ポイントのみを列挙する。
 第1 家族依存の温床となっている扶養義務制度の改正
 第2 障害のない人と同等の暮らしを営める所得保障制度の確立(障害基礎年金制度の拡充を中心に)
 第3 地域での自立した生活を支えるための基盤整備(人的・物的な条件整備)
 第4 障害のある人にもディーセントワークを(労働と福祉の一体的な展開を具体化する社会支援雇用制度の創設)

 以上の4つは、権利条約を実質的に批准するうえで欠かすことのできない国内法制度の課題として列挙したが、当面、政府に求められることは、障害者自立支援法違憲訴訟団と国が交わした「基本合意」の遵守と、制度改革推進会議・総合福祉部会の「骨格提言」を先送りにした「障害者総合支援法」附則第3条の検討課題への早期着手は言うまでもない。


きょうされんより許可をいただき、きょうされんウェブサイトの調査活動に掲載されているPDFをHTML化して掲載しています。

きょうされん
http://www.kyosaren.com/

きょうされん-調査活動
http://www.kyosaren.com/investigationInfo/

障害のある人の地域生活実態調査最終報告(PDF版)
http://www.kyosaren.com/investigationInfo/chiikiseikatujittai_saisyu20121001.pdf