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ニュージーランドのメンタルヘルスサービス計画 ニーズ対応方法について

8.包括的かつ連続的なサービスの提供

8.1 サービスへの適切でタイムリーな道筋

すべての場所で、すべての人々に対して、すべてのサービスを提供することは可能ではないし、理に適ってもいない。しかしながら、すべての人々が自身のニーズを満たすサービスにアクセスし、各サービス提供者がその責務を自覚することは重要なことである。サービス仕様では以下のことを極めて明確にする必要がある。

  • 人々がサービスへアクセスする方法
  • そのニーズを満たすようサービスをデザインする際の対象となる人口。その人数、その人々が住む場所、その人々にどういったニーズがあるか
  • 対象となる人口の内で優先すべき人々
  • 必要な対応時間(例:紹介または初期接触から第一次アセスメントまでの時間)
  • サービス開始・終了の基準。地域専門家サービスなどへ紹介する際の基準、
  • 退院計画の必要条件
  • 他のサービスや機関との連携、および両者が円滑に機能するようにするメカニズムとプロセス
  • 地域の担当機関など他のサービスとの相談や連絡にアクセスしたり、それらを行えるようにする手配

保険金局はサービス間の連携を監視し、以下のことが確実になるようにする必要がある。

  • その連携が明確で効果的であること
  • 個人それぞれに適したサービスへの道筋が存在すること
  • すべてのサービスがサービスのユーザーリストを受け入れ、維持すること
  • 必要に応じ、すべてのサービスが適切に他のサービスへの紹介を行い、他のサービスから適切な援助を求めること

8.2 地方でのサービスの提供

ニュージーランドの人口統計状況では、主要都市から遠く離れた人口の少ない農村地域が多々あり、このことがメンタルヘルスサービスを提供するうえで大きな課題となっている。サービスをデザインする際、農村地域にマオリの人々の割合が高いという事実を含め、農村地域の特別な要求事項を認識しなければならない。

包括的なメンタルヘルスサービスを行うために必要となる専門サービスすべてを提供することは大きな課題である。つまり、農村でのサービスだけでこれを行うことは不可能であることが多い。地域単位でそのような専門サービスを提供するよう手配しなければならない。こういったことはすでに一部の地域で実施されつつあるが、紹介を通じて、また、地方の提供者と地域の専門家サービスセンターとの間の協議や連絡を通じてすべての人が専門家によるサービスに確実にアクセスできるよう、さらに進展させる必要がある。職業的孤立という問題の一部を克服する手段として、専門家からオンラインアドバイスを受けられるようにするだけでなく、スタッフ研修や同業者同士の連絡に利用できるよう、テレビ会議などの新しい技術を考慮するべきである。

仕事仲間からのサポートがないということのほか、24時間体制でサービスを提供する必要性を考慮する場合、主要都市以外で労働力を採用し、その雇用を維持することがもうひとつの課題となっており、職業的孤立が困難な労働条件を生み出している。すなわち、スタッフ確保には特別な配慮をしなければならないということである。人口40~5万人の地域では、精神科医2人を配置する必要があると考えられ、人口ベースでみると、この状況はそれより人口の多い地域に比べれば恵まれているように思われるが、その必要性がある。

給与、会議休暇、仕事仲間との接触の方法において特別なインセンティブが必要になると思われる。職業訓練計画には農村における研修経験を含めなければならない。包括的な支援による農村地域への臨床医学専攻の学生(実習生を含む)の配置は後に遠隔地域でこういった人々を採用するうえで役立つと思われる。

8.3 地方の人々へのサービスプランニング

地方で提供するサービスについては、地方の人々のニーズおよび最大限の費用対効果でそのニーズが満たされる方法に十分配慮して決定するべきである。そのためには以下のことが必要である。

  • 現在サービスを受けていない人を含む地方人口の種々のサブグループでの重篤な精神疾患罹患者の数の推定
  • このような地方人口の種々のサブグループで精神疾患に罹患した個人のニーズの範囲の把握
  • さまざまなサービスやサービス構造がいかに回復に寄与するかの把握
  • サービスコストの把握

メンタルヘルスサービスを包括的なものにするためには、人口の主なサブグループ(子どもと青少年、成人、高齢者、マオリの人々、太平洋地域の人々)それぞれのニーズがサービスのあらゆる面において、調整したかたちで満たされるべきである。サービスを評価するにあたっては、個々の特有のニーズを満たし、回復を支援するために利用可能な完全に連続したサービスを個人が受けられるようにするべきである。

こういった連続性はメンタルヘルスサービスの枠を越えて広がると思われる。これを実現するために、保険金局とメンタルヘルスサービス提供者はメンタルヘルスの主導機関として、機関の枠を越えて協働しなければならない。メンタルヘルスサービスのプランニングを実施する際は、住居・雇用・教育・余暇活動など他のどのようなサービスが地方で利用可能であるか、または他の部門や地方自治体が提供できるかを考慮する必要がある。

メンタルヘルスサービスの個々の部分が上手く機能するかどうかは、あらゆるサービス構成要素が十分なだけ存在するかどうかにかかっている。たとえば、コミュニティの支援収容施設が不十分であったり、そのような収容施設が適切に使用されていなかったりすると、適切な場合に発揮する救急入院患者サービスの能力に影響が及ぶと思われる。

提供されるサービスには地方のニーズや人口統計を反映させるべきである。いずれかの特定の地域で提供されるサービスのレベルと種類双方について、臨床安全性、ベストプラクティス、スタッフや物理的資源の最適活用に必要な最小区域人口を考慮しなければならない。当然、異なる文化グループに対し別々のサービスを提供するのは、人口基盤が十分な場合のみ可能である。同様に、あまり見られないか、またはたいへん複雑な疾病に対する専門的サービスはすべての場所で可能なわけではない。

しかしながら、あらゆる地域やコミュニティに居住する人々が、より専門的なサービスが必要な場合に応じて、地方のコミュニティから主要センターへ、そして地域センターへと、紹介を通じて多様なサービスにアクセスできるようにすべきである。また、コミュニティサービスを、介護手配についての十分な協議、連絡、統合を通じて、地域センターや主要センターからの助言や支援とともに提供すべきである。

地方での必要なサービスの提供レベルを判定するにあたって、ニュージーランドのリソース・ガイドラインの数値と地方での実際の人口を比較すると、地方の人口用のガイドラインでインプットされた数値が示される。地方への資源配分を決定する際には、地方特有のニーズ・特性およびサービスコストについての付加的情報を織り込まなければならない。

実現可能なサービス構成要素を支援するのに地方の人口が少なすぎる場合、複数の地域に対応する比較的大きなセンターでそういったサービスが利用できるようにすべきである。