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愛知県心身障害者コロニー

発達障害研究所年報 No.4

第25号

9.社会福祉学部

研究の概況

渡辺勧持

 この30年間の知的障害者へのサービスの変化には目覚ましいものがある。
 ケネディ大統領の時代に設置された精神遅滞大統領委員会が、一昨年出版した「インクルージョンヘの旅路」(アメリカの現状報告書)では、これらを収容施設の時代、施設から地域へ出ていく時代、地域の中で暮らしている時代と3つの時代に分けている。収容時代の保護/医療モデルでは、人々が施設から地域へ移行する時期にその人々の行動や発達の促進を重視し、それが重度の障害から軽度の障害までのいろいろなサービスを用意するモデルヘと変わり、さらに多くの人々が地域で生活するようになるにつれて障害の程度に関わらず一人一人の援助、支援を用意するモデルヘと変わりつつある。サービスの企画をする人についても、医師を中心とした初期の時代から、専門家のチームヘ、さらに本人自身を含めた人々による計画へと変わりつつある。カナダのある州の親の会でも、同じように倉庫の時代(1960年まで)、温室の時代(1960年から1980年まで)、オープンハウスの時代(1980年から2000年)と分けている。これらの変化は、先進国での共通の傾向といえよう。
 日本は、1960年代から入所施設を始めたという後進性のためにノーマリゼーションが遅れていると言うことがある。しかしながら、同じように戦後入所施設を設立したノルウェイでは、日本の人口比で考えるとおよそ16万人いた入所者の施設が今年すべて廃止される。知的障害者への入所施設がつい30年前にできたのだから、という理由だけでは地域生活の展開が遅い理由にならなくなる。ノルウェイの急激な変化は多くの議論を引き起こしたが、1970年以降の施設入所者対職員の比率が3倍と高くなっている事実などをみると、収容施設が廃止されるにはそれなりの努力がこの30年にあったと思われる。
 昨年の12月、ウプサラ大学教授などスウェーデン人4名と愛知県精神薄弱者愛護協会療育研究委員など10名が定光寺のセンターに集い、一日語り合う機会をもった。愛知県で先進的に行われている試みが紹介され、「スウェーデンでは社会施策が進んでいるが、日本では直接援助する人の障害者への対応がすばらしい」というコメントがなされた。日本では、その人々が本領を発揮できる制度や施策が遅れている。地域でのサービスの充実に向けて、社会福祉学部では、直接援助している人々とともに現実の状況やこれからあるべき姿を考え、具体的な施策、制度へとつなげる研究を行うことが要請される。
 「地域でともに暮らせる」方向へと大きく変わろうとする現在の転換期にあって、多くの研究課題や新しい方法論が必要とされている。社会福祉学部では次のような研究を行っている。1.知的障害をもつ本人の活動。知的障害を持つ人々自身が自分たちの生活を決めていこうとする本人の活動は世界的に展開しつつある。フィンランドの国際知的障害研究会議でも英、米、カナダの本人が分科会を持ち研究のあり方について発表をした。「愛知・仲間の会」の活動もその一つであり、本人自身が日本で初めて厚生省班研究の研究協力者となるなど新しい研究のあり方を示している。2.地域生活援助をするときに特別な配慮を必要とする人々への支援。「地域でともに暮らす」方向がでたものの、障害が重度・重複の人々は、家庭で生活するときにも家族援助が十分でなく、昼間通う場所もないという状況がある。この人々や問題行動を持つ人々、高齢の人々が地域で生活できる条件や制度を明らかにする研究である。サービス資源がないため親や関係者と施設を作り上げながら研究を進める方法もみられる。3.グループホームの研究。愛知県精神薄弱者愛護協会療育研究委員会、グループホームの世話人 を中心とした調査委員に社会福祉学部の全員が参加し、愛知県のグループホームの調査が行われ、「じゆうがあるで、なかまがおるで、わたしの家だよ」という報告集(168ページ)にまとめられた。地域で安心して暮らせるために、グループホームで暮らしている本人、その保護者、援助にあたる世話人、グループホームのバックアップ施設、そして愛知県下の全施設(児童通園を除く)へのアンケート調査である。この新しい重層的なグループホーム調査によって、多くのことが明らかにされた、調査活動中に設立された愛知県グループホーム世話人連絡会とともに今後もよりよいグループホームでの暮らしを検討したい。4.欧米、発展途上国との比較研究。スウェーデンおよび発展途上国の障害者福祉のシステムについての研究は、それぞれ異なる文化からいろいろの示唆を得ている。スウェーデンの最近の福祉を紹介した「街で暮らす」のビデオ制作にも参加し成果を広く公表した。
 人事面での移動はなかったが、昨年移動あるいは退職した助手2名がのポストが空席のまま配置されない、という事態が生じた。今後はこのようなことが起こり得ないよう関係者に強く望みたい。国際協力事業団の研修員としてはタイ、チェンマイの児童発達センターよりアニヨー氏が3日滞在した。これらの研究を進めるのに、援助をしてくれた文部省科学研究(国際学術研究)、厚生省心身障害研究に感謝したい。

知的障害者のセルフ・ヘルプ・グループ活動

三田優子、渡辺勧持、高橋知江1、島田博祐、杉山克己2

 95年9月に発足した愛知県ではじめて県レベルの本人の会「愛知・仲間の会」は、会員約50名で月1度の例会活動を行なっている。参加者の住まいは、自宅(結婚を含む)・通勤寮・グループホーム・社員寮とさまざまで障害の程度も、ほとんどコミュニケーションが困難な状態でありながら仲間に誘われて参加し、黙ったままの人や、一般企業に就職しながらも休日ひとりで過ごすばかりだった人などバラエティーに富んでいる。年齢も10代から50代と幅広く、「障害をもつ仲間なら誰でも参加できる」という本人の会ならではと言える。
 このような活動を通し、大学生ボランティアを中心とした支援者のあり方が重要であることが痛感させられているが、それは全日本手をつなぐ育成会が開催している「本人活動支援セミナー」でも論議されている。従来の障害をもつ当事者が表面に出ることが少なく、職員、家族等に代弁され、「本人主体」がほとんど貫かれていなかったことに対する反省として受けとめられている。「個別支援」を知的障害者の地域福祉に根ざすためにも、さらに本人が発言の機会を得て主体者としての経験をもつことが期待されている。しかしそれは、むしろ本人の周囲にいる人たちが本人との関係を見直し、押しつけたり、支配しようとはせず、「本人のため」と称して職員側の論理を貫こうとしない、など知的障害者への視点を改める点が多いことが、本人活動に関する印刷物や海外の文献等からも強調されている。本人活動の広がりは、新たな障害者観への挑戦とも言え、そのリーダーたちが厚生省心身障害研究班の研究協力者となったり、日本精神薄弱者愛護協会の地域福祉委員会専門委員として公的な調査研究に携わるようになった動きを見ても、大きなうねりとなりつつあることがわかる。

 1県中央児童相談所 2同朋大学

重度障害者の通所施設の制度化に関する研究(2)

大島正彦、渡辺勧持

 1995年12月に示された障害者プランはこの間、様々な検討がされてきたが問題点も指摘されている。その一つが重度障害者、およびその家族のサービスに関する不十分さであり、中でも、重度障害者が通える通所施設の整備は先ず第一に整備されなければならない基本的な施策として上げられている。この通所施設について、その場しのぎ的に整備されてきた施設体系全体の批判とともに、制度として確立することを基本とした具体的な提言が関係諸団体によってされてきたが、障害者プランの中では相変わらず従来通りの施策の積み重ねに止まっている。
 愛知県で草の根的な民間活動団体などが加わった「重度障害者の地域生活を支えるネットワーク-愛知」を作り、この通所施設のあり方を中心課題とした重度障害者の必要とする地域サービスの具体的な制度(施設基準、職員配置、運営主体…)の検討を進めてきた。この作業を通して、
①必要な施策の実現のために、単にアイデアを提供するだけではなく、どのような主体形成が必要とされているかを明らかにすることが求められていること
②重度重複の障害を持った人の要求を制度として確立するためには、障害の克服の課題を障害者の義務としてではなく、権利として捉えることが特に必要であること等がわかった。なお、現時点では重度重複障害者が通える通所施設の制度化の見通しは示されていない。

レスパイト・サービスに関する研究(4)-コンビニの会の実践を通して

大島正彦

 障害者が家族と共に生活をする場合に必要となる介護、あるいは介助の一時代替サービスは地域福祉サービスの中でも重要なサービスとして緊急一時保護、短期入所、ショートステイ、レスパイト等様々な名称で提供されてきた。しかし、このサービスは一つの制度として収歛する方向を見せていない。昨年はこのサービスについて、名古屋市内でコンビニハウスという事業体を作り、50人の会員を対象としてウィークデイのナイトケアと休日のデイケア、送迎等のサービスを始めたこと、そしてそこで、実際の介助代替のニーズを明らかにし、制度化の方向を検討をする、というところまで報告した。
 本年はそのコンビニの会の1年間の実践を経て明らかになったことを報告する。

①国が行っている「短期入所」と比べて数倍から10倍近い金額の負担があっても利用しやすい制度の方を望む利用者が多数いる。このことは障害者の家族介護の代替に対するニーズの深刻さを示している。

②サービスのニーズが当初予想したとおり、緊急時の対応から親子分離、自立訓練、あるいは余暇利用、生活体験の拡大、あるいは送迎、家庭派遣(障害者と留守番をしたり入浴介助をする)などへと広がる傾向を見せている。

③この間制度化について名古屋市とも相談してきたが、介護一時代替機能を持ったサービスは同時に他の機能を持っており、またサービスの形態も多様で、制度化に際してはつぎはぎ的対応では解決が難しい問題を持っている。

問題行動を持つ知的障害者の地域生活援助と入所施設援助

渡辺勧持、島崎春樹1、吉田とき江1

 問題行動の治療方法は、その時代、その人々に用意されるの生活環境に対応して変化する。施錠された部屋で集団処遇が行われ、本人の意思とかけ離れた対応をせざるを得ない入所施設の環境では、これまでその環境の範囲で対応できる治療方法が開発されてきた。
 この研究のテーマは、もしも従来の入所施設と違って、職員比率が多く、個室を持ち、集団処遇の必要がなく、親との関係も持続し、地域で暮らす強い理念に支えられて運営されるならば問題行動は変わるのか、あるいは問題行動に対応する治療的な対応は変わるのか、ということである。
 研究は3年間の継続研究であり、今年度は対象施設の選定、研究方法、簡単な研究者による観察を行った。対象とする入所施設は、入所施設からグループホームヘに移行する具体的な計画をもち、施設では「普通の生活」に近づける環境設定を常に配慮している。定員30名、全員個室、父親、母親との密接な連携が継続し、職員のスーパービジョンが行われ、夜間の援助者比率(職員、親、ボランティア)が入所サービス30人に対し9~10人である。入所施設は通所施設ももち(通所者20名)合計50名の障害内訳は重度31名、自閉症25名、身体障害者手帳保持者12名である。
 平成7年9月以後、一年半の間に多くの人々の問題行動が改善されており、それらの改善状況と環境条件の関係の分析を今後行う予定である。

 本研究の一部は、平成8年度厚生省心身障害研究の援助を受けた。
 1べにしだの家

知的障害者における高齢化に伴う心身面、生活面の問題に関する研究

島田博祐、渡辺勧持

 医学・福祉面の進歩に伴い高齢の知的障害者は増加しており、更生施設生活者の30%、授産施設と在宅生活者のそれぞれ20%強は初老期(退行期)の始まりである40歳以上で占められ、その数は全国で約8万人と推定される(精神薄弱問題白書,1993)。愛知県内のグループホーム調査でも40歳以降の入居者が4割近くを占めることがわかった。知的障害者の場合、より早期に老化現象が現れるとの報告も多く、高齢化に伴う心身、生活適応面の問題に対し早急な対応が迫られており、平成6年度厚生行政科学研究事業「地域生活援助実態調査」においてもその緊急性が指摘されている。国際レベルでも1995年に米国のThe MR/DD Aging Special Interest Groupのメンバーを中心に、研究グループが全25カ国132名により組織され、研究活動・情報交換が始まっている。
 地域で暮らす知的障害者において加齢に伴う問題が深刻化すれば、親の高齢化や世話人の負担増の為に支援が困難になることが予想される。グループホームでは通常、昼間は世話人がいないので保護就労・一般就労に関わらず働いていることが入居の基本条件となっており、それが適わぬ場合、地域生活の継続は必然的に難しくなるからである。
 我が国における高齢知的障害者に関する従来の調査は身体・生理面の老化を研究課題にしたものが中心で、生活の質、適応面に関するものは少なく、対象も入所施設利用者を扱ったものが大半で、グループホームや在宅で地域生活を送っている知的障害者を対象にしたものは未だ少ない現状にある。従って本年度、愛知県内のグループホーム入居者を対象に「高齢化に伴う入居者自身の心理面・生活面の問題」、「公共機関等によるフォーマルな或いは家族、友人、ボランティアらによるインフォーマルなサポート形態」に関する調査を行い、施設における調査(コロニー内での調査を予定)との比較も併せまとめていく予定である。

生活の場としての入所施設のあり方と治療、教育

大島正彦、高橋彰彦1

 ある種の疾病では、一時的に、あるいは部分的に生活を中断して治療に専念しなければならないことがある。また、別の疾病では、安定した生活環境、地域環境にこそその治癒力がある場合がある。その場合は、そこが生活の場として機能し続けていることが前提であって、決して治療のために生活の場があるのではない。
 この疾病治療と生活との関係を障害の治療、教育と生活という関係に置き換えてみると、知的な部分に障害を持つ人の施設問題には二つの問題がある。一つは、障害者の生活を保障するという機能を施設が十分持てなかったということ、これは、障害者の人権保障が確立していなかったということに他ならなく、またもう一つは、そのために施設の機能に生活と障害の治療、教育という二つの機能を同時に持たせ、さらにいえばその中で生活の援助と治療、教育を混同させ、ときに障害の治療、教育を優先させてきたということである。
 以上の検討を経て、知的な部分に障害を持つ人の治療、教育の課題を解決するためにもまず、彼らの生活の場が確立されていなければならない、という立場から3年間の研究計画を立てた。

(1)精神薄弱者援護施設(入所)の制度的問題点を、身体障害者、老人、病院、学校、刑務所等他の類似施設との比較をしながら検討する。

(2)農山村部における建設計画中の施設(精神薄弱者更生施設、身体障害者療護施設)を事例として、生活施設建設のための必要な条件を明らかにする。生活施設建設の主体として、①障害者、家族、②施設運営者(運営主体、職員)、③地域(住民、地方自治体)の3つを想定し、面接調査を行う。

(3)知的な部分に障害を持つ人の生活確立の課題と治療、訓練の課題との関連を検討する。

 本研究の一部は、平成8年度厚生省心身障害研究の助成を受けた。
 1文京女子短期大学

春日井市における知的障害者の地域生活調査

渡辺勧持、加藤貫一1、小原伸二2、坂東泰秀3、加藤政彦4、竹島久蔵4、野田 聡4、長江幹男4、久保田貞子4、吉田美幸4、神戸康秀5、加藤鉱明5、伊藤敦史5

 知的障害者のサービスは、これまで入所、通所施設は国の措置費によって社会福祉法人を中心に行われ、市町村の地方自治体は手帳交付や年金など事務取扱が主体であった。このような状況は、障害者プラン、市町村障害者計画にみられるように、「地域でともに生活する」理念に向けて、市町村で住民全員を視野に入れたサービスへと展開する方向へと変わりつつある。
 その流れの中で、春日井市では、地域福祉計画を策定した。その際、春日井市の今後の知的障害者のサービスを考える資料として本調査が行われた。
 調査は、市内の社会人554名を対象とし、調査項目は、昼間の通い先(在宅、通所、就労)での状況と問題、友人等の社会関係、休日の過ごし方、将来の住まい、福祉サービスの利用と熟知度、短期介護、必要とする援助内容などである。回答者(317名)のうち、86名(27%)が昼間の仕事、活動などの通い先を持たない。これまでその人々は家事手伝い等などと考えられていたが、本調査では、そのうちの9割をこえる人が、通う場所を持ちたい希望者であることがわかった。また、これまで行政の縦割りのために春日井市では把握していない企業就労者についても給与の据え置き、社会保険、有給休暇の問題等がみられた。高齢化については、40歳以上が17%で介護については項目回答者31人のうち、11人が兄弟が介護している。介護者の高齢化が問題になってくると思われる。

 1若草学園、2養和荘、3春日井市、4春日井市事業団、5春日井市社会福祉協議会

グループホーム調査(その1)入居者・保護者への調査

三田優子、渡辺勧持、大島正彦、山田 優1

 本調査研究は愛知県精神薄弱者愛護協会療育研究委員会との共同研究として95年から2年間かけて行なわれたものである。県内39ヶ所(95年末現在)のグループホームの「入居者」「世話人」「保護者」「バックアップ施設」および県内「全施設」の5つからなる。ここでは「入居者」「保護者」について報告する。
 入居者160人に質問票を用いた調査を実施し、82%の131人から回答を得た。県内全グループホーム入居者本人を対象にした調査はこれまでになく、質問票の作成にあたってはわかりやすい表現、ひらがなを多くするなど工夫をしたものの今後このような本人を対象とした調査研究方法の開発が求められている。しかし、本人が「グループホームで暮らしてよかったこと」として「自由」「仲間」「静か」「自信」「生活環境」のキーワードで自由に記述したり、「知らないところで決まりを決められた」「(ご飯の)おかわりが自由にできない」「悩み事を打ち明ける人がいない」などの生活の実態が明らかになったことは今後のグループホーム、あるいは地域生活支援を考える貴重な資料となった。
 一方、保護者71人からの回答によると、グループホームに入居したことで「楽しく生活している」「出来ることが増えた」「ホームの雰囲気がよい」などの利点をあげて「引き続き入居させてあげたい」と95%の保護者が考えているものの、将来については、「高齢になったとき」「働けなくなったとき」「親なきあと」を身近に捉え、このままグループホームでの生活でゆけるかどうか、不安・疑問を感じていることも明らかになった。すでにこれらの不安は遠い先の話しでなくなっているグループホームも存在していることから、保護者が安心して期待できるグループホームのあり方を早急に検討し整備する必要がまとめられた。

 1知多地域障害者生活支援センター所長

グループホーム調査(その2) 世話人・バックアップ施設への調査

島田博祐、渡辺勧持、大島正彦、石元憲明1、秋田伸子2、平野昌子3、高橋知江4

 地域福祉促進の為の重要な施策であるグループホーム(以下GH)制度は平成元年に制定され、それに伴いホーム数も増加しているが、一方で「居住者の重度化・高齢化に伴う世話人の負担増」、「世話人の身分保障と待遇改善」等の問題も現れ始めている。確固たる地域支援システムがない現在、個々のホームの運営を担う世話人とそれをサポートするバックアップ施設(以下BU施設)の役割は益々重要と思われる。こうした状況から、我々は愛知県内のGH39カ所のBU施設と世話人を対象に郵送による質問紙調査を行い、31カ所のBU施設と34カ所のGH世話人から回答を得た。主な結果の要旨は以下の通りである。
 (1)BU施設の内訳は通所施設が最も多く(42%)、重度障害者の割合が高いこと(28%)と併せ、他地域に比して愛知県の特徴である。(2)利用制度は国制度が51%、地方自治体制度が49%(うち名古屋市39%、県10%)であり、入所施設全てが国制度、通所施設が主に地方自治体制度を利用している。(3)BUの内容は、「世話人の休日保障」、「入居者の職場援助」、「通院援助」、「事務援助」、「ぶらり訪問」、「入居者への専門的援助」「入居者の休日保障」等であり、約6割の施設が「人員不足で必要に応えきれていない」と回答している。
(4)世話人の平均年齢は44歳と若く、男性が比較的多いことと併せ、愛知県の特徴である。(5)世話人の仕事内容は、「毎日の記録」、「個人の記録」、「金銭管理」、「役所提出資料の整理」等であり、入居者との関係を重視しながら様々な工夫を行っている。(6)今後の課題として「改築・改造費への公的補助」、「家賃補助」、「世話人の複数体制の確立」、「世話人の身分保障と待遇改善」、「生活訓練・緊急一時、レスパイト制度の確立」、「援助・支援センターの設置」、「地域・関係機関とのネットワーク作り」等が示唆された。

 1ゆたか通勤寮 2わらびホーム 3シャローム 4愛知県中央児童相談所

スウェーデンにおける地域生活援助の現状(3)

三田優子、渡辺勧持、広瀬貴一1、Hans-Ake Ost2、Kent Ericsson3

 社会福祉学部のこれまでの調査研究で明らかになったスウェーデンにおける知的障害者入所施設の全廃止と地域を生活の場とした生活援助のシステム化に関して本年度も研究を継続し、1996年6~7月には現地調査も実施した。また、同時に精神障害者の福祉の現状についても調査を行なった。
 本年度の現地(ストックホルム、スカラボルイ)調査で、障害者本人、地域生活援助者(専門家も含む)、家族へのインタビューおよびウプサラ大学研究者との共同研究作業において、以下の3点を考察した。1)スウェーデンでの改革はヨーロッパに大きな影響を及ぼし、ノルウエーなど法改正をみる国が出てきたこと、2)スウェーデンでは精神障害者の福祉にも大きな変化が見られ、地域生活支援を整備することにより、精神病院の縮小を行ない、薬物・アルコール依存を除いて入院形態はほぼなくなる、という見通しになっている、3)市町村レベルに障害者福祉サービスの計画・実行権限が移管されたことで地域にきめの細かいサービスを作り、ニーズ把握を継続しながら早い対応で障害者政策が立案されることに知的障害者本人および家族から高い評価を得ていた、である。
 また、スウェーデンでもグループホーム入居者をはじめとした入所施設から出た人たちの高齢化が大きな課題となりつつあるが、高齢者住宅への移動はおこなわず、現在の住居を入居者のニーズに合わせて改築・整備して、老人ケアの経験のある援助スタッフを増員する、などの対応をとることで、あくまで知的障害者本人の意志(移動したくない)を最優先し、安心した老後の生活を築けるよう配慮するものであった。

 1光の園、2Social Worker County Skaraborg、3Uppsala Univ.

発展途上国における障害者のCBRに関する研究

渡辺勧持、大島正彦、三田優子、島田博祐、杉山克己1、Vanrunee Komkris2

 本年は、3年目にあたりこれまでのCBR研究と日本の地域生活援助の動向との関連を中心に研究を行った。
 CBRは、それまでの欧米式の知的障害者への援助が経済的に高価で、一部の人のみに貢献し、技法が発展途上国に適切でないなど批判から展開した。
 しかしながら、現在のCBR援助の方法にも問題がある。第一に、欧米の個人主義と発展途上国の集団主義との文化の違いのため、専門家による外国からの援助がそれまでの地域の隣人による援助を発展させることにつながらない、例えば家庭を訪問するシステムは地域社会との連携をおろそかにすることもみられる。第二に、ほとんどのCBRが現実には成人を対象とし教育と就労が大きな問題となっているにもかかわらず、CBRのR(リハビリテーション)が医療技術的なレベルでとどまっている。その意味では一部で言われているようにCBRよりもCBS(Community-Based Support)という表現の方が適切であろう。
 日本との関係では、知的障害者の入所サービスへが主として1960年代に行われており、欧米が1960年代から進めた大規模施設否定による地域生活に向けての流れと異なる状況にある。フィンランドで行われた国際発達障害研究会議ではこの日本のありかたが、同じく戦後施設を設立したノルウェイとも違う方向にあることがわかった。昨年発表したスリランカなどでのアジアの動きが日本と近く、今後歴史的な視野に加えて、文化人類学的な面からの検討が必要である。本研究の一部は、平成8年度文部省国際学術研究の援助を受けた。

 1同朋大学 2Foundation for the Mentally Retarded in Thailand

研究業績

著書

三田優子:グループホーム, p.140-141, 第七部 生活支援,発達障害白書-1997年版-,日本精神薄弱者福祉連盟編,日本文化科学社,1996.11.

渡辺勧持:コロニー.日本精神薄弱者愛護協会編「障害福祉の基礎用語 -知的障害を中心に-」.日本精神薄弱者愛護協会、p.57, 1996.5.

Watanabe, K., Takahashi, T., Oshima, M.: The development of group homes for persons with intellectual disabilities in Japan - the relation to residential institutions. The Ceylon Association for the Mental Retarded.(eds.)"An Asian Perspective towards the 21st Century" Proceedings of the 12th Asian Conference on Mental Reatrdation, Asian Federation for the Mentally Retarded,pp.31-36,1996.

Shimada, H., Kogo, R1. (1National Institute of Vocational Rehabilitation) : The development of a program of job interview skill as a social skill for persons with intellectual disabilities. The Ceylon Association for the Mental Retarded.(eds.) "An Asian Perspective towards the 21st Century" Proceedings of the 12th Asian Conference of Mental Retardation, pp. 91-100, 1996.

原著

島田博祐,橋本 優1,本田壮一21埼玉県大宮小児保健センター,2障害者職業総合センター):知的障害者における職業知識、職業興味及び自己評価の関係に関する予備的研究.障害者職業総合センター研究紀要 5 :31-39.1996.

調査報告書

渡辺勧持,大島正彦,三田優子,島田博祐,高橋知江1:知的障害者のグループホーム -通所施設のバックアップ体制の中で見られる現状と課題- 平成七年度厚生省心身障害研究報告書「心身障害児(者)の地域福祉に関する総合的研究」,133-146, 1996(1愛知県中央児童相談所)

渡辺勧持、加藤貫一1,小原伸二2,坂東泰秀3,加藤政彦4,竹島久蔵4,野田 聡4,長江幹男4,久保田貞子4,吉田美幸4,神戸康秀5,加藤鉱明5,伊藤敦史5
 (1若草学園,2養和荘,3春日井市,4春日井市事業団,5春日井市社会福祉協議会)知的障害がある社会人の方への地域生活調査.地域障害者福祉に関する調査委員会.1-30,1996

高橋彰彦1,小澤 温2,渡辺勧持,大島正彦,島田博祐,時松 昭3,林 雅次4,(1社会福祉法人・嬉泉,2大阪市立大,3時松小児科,4東海大):通所施設における障害児・者の問題行動と家族援助.厚生省心身障害研究,障害児を中心とした治療教育法の開発に関する研究.平成7年度研究報告書,173-226,1997.3.

その他の印刷物

三田優子:ホームAYAMEでのケアとサポート.12-13, REVIEW No.15,全国精神障害者家族会連合会,1996.8.

三田優子:グループホーム利用者の声.43-45, REVIEW No.15,全国精神障害者家族会連合会,1996.8.

大島正彦:知的障害者のグループ・ホーム.レビュー,全国精神障害者家族会連合会,No.15:36-39, 1996.8.

Watanabe,K.,Oshima,M.,Takahashi,T.:The development of residential services for people with intellectual disability in Japan.The British Journal of Developmental Disabilities.Vol.XLⅡ, Supplement,July 30,1996.

Shimada,H.:The Akasu incident and labor conditions of the disabled in Japan. Tokyo Kaleido Scoop, Shima Media Network Inc.1997.2.

渡辺勧持:地域で分かり合うには.発達の遅れと教育.日本文化科学社,No.476,pp21,1997.3

学会発表

渡辺勧持,大島正彦,高橋知江:重度の知的障害を持つ人々のグループホーム生活 -アンケート調査からの個人を対象とした分析-.第10回日本地域福祉学会(神戸)1996.6.9

島田博祐,大島正彦,渡辺勧持:タイにおけるCommunity Based Rehabilitationに関する調査-チェンマイ県における実践活動を中心に-.日本地域福祉学会(神戸)1996.6.9

Wananabe,K., Oshima,M.,Takahashi,T.:The development of residential services for people with intellectual disability in Japan. 10th World congress of the international association for the scientific study of intellectual disabilities,(Finland),1996.7.10.

三田優子,島田博祐,渡辺勧持:知的障害者のセルフ・ヘルプ・グループヘの支援-愛知・仲間の会の活動から-.第31回日本発達障害学会(仙台)1996.7.28

島田博祐,大島正彦,渡辺勧持,小澤 温1,高橋彰彦2,林 雅次3,時松 昭41大阪市立大,2日本社会事業大,3東海大,4時松小児科):通所施設に通う青年障害者の問題行動に対する保護者と職員の認識の相違に関する研究.日本発達障害学会(仙台)1996.7.28.

大島正彦:重度障害者のショートステイサービス.第31回日本発達障害学会(仙台)1996.7.28.

小澤 温1,高橋彰彦2,島田博祐,大島正彦,渡辺勧持,林 雅次3,時松 昭41大阪市立大,2日本社会事業大,3東海大,4時松小児科):通所(通園)施設に通う障害児の問題行動と保護者と職員の認識の相違に関する研究.日本発達障害学会(仙台)1996.7.28.

渡辺勧持,大島正彦:知的障害を持つ人々のグループホーム生活 -通所施設がバックアップをしているホーム入居者の分析-,第31回日本発達障害学会(宮城)1996.7.29(研究大会発表論文集、P67-68)

渡辺勧持:治療教育方法におけるジェントル・ティーチングの位置づけ.自主シンポジウム、日本特殊教育学会(東京)1996.9.16(特殊教育学研究,第34巻、第5号、P191)

小澤 温1,高橋彰彦2,島田博祐,大島正彦,渡辺勧持(1大阪市立大,2社会福祉法人・嬉泉):通所施設に通う障害児・者の問題行動と家族支援に関する研究.日本社会福祉学会(名古屋)1996.10.13.

丸山由香1,三田優子,山崎喜比古11東京大学):精神障害者への地域サービス提供サイドのあり方-当事者へのin-deapthインタビュー調査から-,第39回日本病院・地域精神医学会総会(大阪)1996.10.19.

渡辺勧持:知的障害者の住まいにおけるインテグレーション -グループホームの展開と統合教育の展開との比較の試み-.特別なニーズ教育とインテグレーション学会(SNE学会)(小金井)1996.11.17(第2回研究大会発表要旨集録110-111p)

Yuko Mita, Masahiro Negoro1, Kengo Kitaoka2, Yuko Kida1(1Respite Ctr.Saiwai, 2Respite Ctr. Regart): Respite Services in Japan, Sixth National Conference on Respite and Family Support (San Antonio, USA)1996.12.17.

講演など

三田優子:スウェーデンの知的障害者福祉.すずかけ作業所後援会総会(小牧)1996.4.14.

大島正彦:レスパイトサービスとは.コンビニの会介助者研修会(名古屋)1996.5.7.

渡辺勧持:これからの施設福祉・地域福祉のありかた.名古屋市新任職員研修(名古屋)1996.6.12.

三田優子:地域生活を支えるための援助の実際.第22回全国通勤寮研究会議(札幌)1996.6.20.

渡辺勧持:施設福祉と地域福祉.福祉人材フォローアップ講習会(名古屋)96.6.29.

渡辺勧持:障害者福祉のいま、ここから.愛知県コロニー・半田市公開セミナー司会(半田)1996.7.20.

三田優子:知的障害者の住まい.名古屋さふらん共に生きる会夏期学習会(名古屋)1996.8.8.

三田優子:スウェーデンの福祉.コミュニティ講座(徳島)1996.8.28.

渡辺勧持:障害を持つ人々への地域生活援助.児童相談所等職員現任研修(名古屋)1996.8.30.

渡辺勧持:障害児の遊びと文化.児童文化セミナー(師勝町)1996.9.24.

三田優子:ビデオフォーラムコーディネーター.日本精神薄弱者愛護協会第1回全国グループホーム等世話人研修会(豊橋)1996.9.1.

大島正彦:障害者の医療と地域福祉.老人保健施設「桜パレス」職員研修(山形)1996.9.2.

三田優子:知的障害者本人分科会助言者.全日本手をつなぐ育成会東海・北陸ブロック研修会(名古屋)1996.9.29.

渡辺勧持:第6回「地域生活の推進と生活寮等グループホーム」セミナーシンポジウム.(北九州)1996.10.13.

三田優子:本人の思いはどこにあるか.名古屋手をつなぐ育成会平成8年度会員研修会(名古屋)1996.10.29.

渡辺勧持:施設入所担当者の役割 -施設、地域、家庭の連携を保つために-.地域リハビリテーション協議会・身体障害者更正援護関係職員研修会(名古屋)1996.10.31.

渡辺勧持:いい生活、いい人生をどのように考えるか.児童福祉施設直接処遇職員中級研修(岡崎)1996.11.7.

大島正彦:在宅支援制度を考える.全国重症心身障害児(者)を守る会第8回東海北陸ブロック会議公法人施設分科会(名古屋)1996.11.10.

三田優子:知的障害者のグループホーム.第1回宮崎県グループホーム等世話人研修会(宮崎)1996.11.27.

三田優子:生活支援の現状.宮崎県社会福祉事業団向陽の里研修会(宮崎)1996.11.28.

渡辺勧持:これからの地域福祉.名古屋市、名養連、愛知愛護職員研修(野間)1996.12.4.

渡辺勧持:これからの障害者福祉.春日台授産所保護者会講演会(春日井)1997.1.19.

大島正彦:障害者プラント重度障害者福祉.岐阜市親の会(岐阜)1997.1.23.

大島正彦:重度障害者の介護問題.バリアフリー研究会(名古屋)1997.1.26.

渡辺勧持、大島正彦、三田優子、島田博祐:ゆたか福祉会総括研究集会(助言者)(名古屋)1997.2.1.

三田優子:各地の地域生活サービスの現状.岡崎市社会福祉事業団研究会(岡崎)1997.2.9.

大島正彦:女性の自立に向けて(3)-自立へのエンパワーメント-.名古屋市女性会館講座(名古屋)1997.2.13.

三田優子:ビデオフォーラム.瀬戸市アニモ福祉会研修会(瀬戸)1997.2.18.

渡辺勧持:障害者の地域生活援助.日本地域福祉学会東海ブロック(春日井)1997.2.22.

三田優子:本人活動スタートの支援.全日本手をつなぐ育成会第2回本人活動支援者セミナー(東京)1997.3.8.

渡辺勧持:いま、施設に期待されていること-入所児(者)の処遇向上を目指して-.愛知県精神薄弱者愛護協会児童部会(名古屋)1997.3.10.

渡辺勧持:愛知県グループホーム調査の概要.第9回愛知県精神薄弱者愛護協会実践事例研究会(名古屋)1997.3.17.

三田優子:本人分科会コーディネーター.第9回愛知県精神薄弱者愛護協会実践事例研究会(名古屋)1997.3.17.

三田優子:グループホームとデイアクティビティー.横浜市グループホーム連絡会・横浜市作業所職員研修会(横浜)1997.3.18.

大島正彦:重度障害者福祉の動向と今後.ぶなの家職員研修(名古屋)1997.3.28.

学術集会主催

渡辺勧持:スウェーデンと日本の知的障害者の地域生活援助討論会(瀬戸)1996.12.6

地域活動

三田優子、渡辺勧持、高橋知江、島田博祐:愛知県知的障害者当事者の会「仲間の会」活動(名古屋)1996.4.~1997.3.

大島正彦:社会福祉法人設立と施設作りをすすめる会(春日井)1996.4.~1997.3.(月数回)

大島正彦:心身障害者の療育作業施設を作る会「ぶなの森」(名古屋)1996.4.~1997.3.(月2回)

大島正彦:重度障害者通所施設「友の家」(名古屋)1996.4.~1997.3.(月1回)

大島正彦:重度障害者地域生活支援を考え、実践する会「コンビニの会」(名古屋)1996.4.~1997.3.(月数回)

大島正彦:重度障害者の地域生活を考えるネットワーク-愛知(愛知)1996.4.~1997.3.(月2回)

大島正彦:バリアーフリー研究会(名古屋)1996.4.~1997.3.(月1回)

渡辺勧持:春日井市地域福祉策定委員会(春日井)1996.4.~1997.3.(月数回)

渡辺勧持:春日井市教育委員会修学指導委員会(春日井)1996.4.~1997.3.(年数回)

海外活動

三田優子:知的障害者の地域生活援助の調査研究(スウェーデン)1996.6.26.~7.10.

渡辺勧持:第10回国際知的障害研究協会会議で発表、調査実施(フィンランド)1996.7.7.~1995.7.16.

島田博祐:第10回国際知的障害研究協会会議に参加、及びヘルシンキ市近郊の福祉施設調査実施(フィンランド)1996.7.8.~1996.7.13.

大島正彦:第10回国際知的障害研究協会会議に参加、フィンランドの知的障害者福祉視察(フィンランド)1996.7.7.~1996.7.17.

島田博祐:ストックホルム市及びスカラボルイ県における地域福祉に関する調査(スウェーデン)1996.7.14.~1996.7.21.

三田優子:第6回全米レスパイト・家族支援学会で発表およびテキサス州知的障害者福祉の現状調査(アメリカ)1996.12.11.~12.22.

教育活動

三田優子:社会福祉学(愛知県立春日井看護専門学校)1996.4.1.~1997.3.31.

島田博祐:社会福祉学(愛知県立春日井看護専門学校)1996.4.1.~1997.3.31.

大島正彦:基礎保健学(山形大学)1996.4.1.~1997.3.31.

渡辺勧持:精神遅滞児の指導法(信州大学教育学部)1996.5.1.~1997.3.31.

渡辺勧持:コミュニティ・ケア(日本精神薄弱者愛護協会通信教育スクーリング)1996.8.21.

B プロジェクト研究

PⅠ-A 遺伝子解析を中心とした遺伝子治療のための基礎研究

武藤宣博、山田裕一(遺伝学部)、正木茂夫(生化学部)、佐藤 浩(滋賀医大)、Roy A.Quinlan(Univ. Dundee)

 遺伝子治療のための基礎研究として、遺伝子のクローニング、遺伝病における原因遺伝子の変異点の解析、遺伝子の発現調節機構の解明、遺伝病の発症機構に関する研究を行ってきた。
 遺伝子のクローニングについては、従来はSchizosaccharomyces pombeを用いて発現クローニングを行うために、S.pombeで発現させることのできる市販のcDNA libraryを用いていた。しかし、組織によっては適当なcDNA libraryが得られなかった。本年度は肝臓のcDNA libraryを自作することから始めたが、発現ベクターに良いものがなかったため、S.pombeのカタラーゼ遺伝子のプロモーターを利用した発現ベクターを作ることを試みた。できた発現ベクターを用いていくつかのヒト遺伝子のcDNAを分裂酵母内で発現させることに成功した。
 遺伝病における原因遺伝子の変異点の解析としては、Lesch-Nyhan症候群におけるHPRT遺伝子変異の解析を行った。イントロンに2塩基置換を有するスプライシング異常例で、それぞれの塩基置換を組み込んだほ乳類発現ベクターを利用し、Lesch-Nyhan症候群の原因遺伝子変異(27+1G→T)を同定した。さらにLesch-Nyhan症候群3家系の遺伝子診断を行い、これまでに報告のないdenoveのミスセンス変異(L65P)とエクソン6の4bp(TTTG)重複挿入例(435insTTTG)、そして欧米ですでに3例の報告があり、HPRT遺伝子変異の第2のホットスポットとも考えられるミスセンス変異(G70E)を同定した。
 遺伝子の発現調節機構の研究としては、厳密に水晶体に局在することがmRNA分析の結果から示されているマウスのフィレンシン遺伝子を取り上げ、組織特異的な発現機構の解明をめざした研究を行った。フィレンシン遺伝子の発現を抑制するプロモータの単離を試みた。マウスフィレンシン遺伝子の第1イントロンの部分配列をプローブにして、マウスゲノムDNAライブラリーをスクリーニングし、フィレンシン遺伝子の5’側非翻訳部分約12kbを含むクローンを単離した。この配列に含まれるプロモーター領域を絞り込むために、まず4.5kbの塩基配列を決定し、次にまだ明らかになっていないフィレンシンmRNAの転写開始点をS1マッピング法とプライマー伸長法によって決定した。この4.5kbの配列をルシフェラーゼをレポータにしたベクターに組み込んでレンズ細胞と非レンズ細胞に導入し、どの配列部分が遺伝子の発現に不可欠であるかを検索した。フィレンシンの遺伝子プロモーターはフィレンシンの水晶体特異的発現から、たとえば術後白内障のような水晶体疾病の遺伝子を用いた治療法や予防法の素材として用いられることも考えられる。
 遺伝子の発現調節と遺伝病の発症機構の関連に関する研究として、ビリルビンUDP-グルクロン酸転移酵素遺伝子(UGT1-1)の発現とGilbert症候群との関連についての研究を行った。UGT1-1の転写調節領域の-1023から-2の領域をルシフェラーゼ遺伝子の上流に挿入し、ヒト肝癌細胞(HepG2)に導入するトランスフェクションアッセイで解析した。Gilbert症候群の原因はTATA boxに2塩基挿入の変異が存在し、転写が正常の30%に低下するためであるとの説があるが、患者の転写調節領域を用いて追試を行ったところ、この挿入変異による転写活性の低下は認められなかった。また、転写調節領域の欠失変異を用いたトランスフェクションアッセイから、-113から-69の領域が転写に必須であることがわかった。ここにはHNF-1 siteとE-boxのコンセンサス配列が存在した。

PⅡ-A RNAウイルスによる神経病原性の分子メカニズム

滝澤剛則、大橋佳代子(生化学部)、中島捷久(名古屋市大)、中西義信(金沢大)、藤井雅寛(東京医歯大)

[目的・方法]RNAウイルスには、インフルエンザや麻疹など脳炎を引き起こす病原性ウイルスが存在する。本研究では、RNAウイルスの病原性発現機構を明らかにする目的で、主にインフルエンザウイルスを用いて、培養細胞への直接的細胞障害過程の側面を分子生物、細胞生物学的方法により解析した。[結果]今年度は下記の3点について解析した。1)ウイルス感染細胞でのシステインプロテアーゼ活性化。プログラム死の最終過程で、システインプロテアーゼ(Caspase)が活性化されることがわかってきた。ウイルスによる細胞障害過程にもCaspaseの活性化が起こるかどうか検討したところ、Caspaseの中でもCPP32の活性化が起きることがわかった。また、Caspaseを阻害する牛痘ウイルス蛋白crmAを導入した細胞は、ウイルスによる細胞障害に抵抗性を示したが、同時にウイルスの複製も抑制した。2)二本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)と転写因子NF-IL6の役割。昨年度の解析から、インフルエンザウイルスによるFas遺伝子活性化に、PKRとNF-IL6の関与が考えられた。NF-IL6活性化はリン酸化によることから、PKRがNF-IL6をリン酸化する可能性が考えられた。事実、粗精製PKRはNF-IL6のDNA結 合能を増加させ、逆にホスファターゼはDNA結合能を消失させた。また、NF-IL6の高分子バンドがリン酸化型であることが判ったが、それとウイルス感染との関連は明らかにならなかった。次に、Fas遺伝子の5’上流域を欠失してプロモーター活性を測定すると、転写開始点下流に存在するNF-IL6が転写活性に重要であることがわかったが、必須かどうか疑問が残った。3)HTLV-1のtaxによるPKR活性の抑制。他のRNAウイルスでのPKRの役割を検討する目的で、HTLV-1のtaxとの関連を検討した。tax発現細胞はFasによる細胞死に抵抗性を示すことから、その細胞のPKRを解析したところ、量、活性ともに減少していた。PKRの安定性とmRNA量は変わらなかったので、PKR減少は翻訳段階で起きていることが考えられた。[考察]1)ウイルスの細胞障害過程にも、他の原因によるアポトーシスと同様に、Caspaseが関与していることが明らかになった。このことは、治療、弱毒化にも意義があると考えられる。crmAはかなり広くプロテアーゼを阻害する可能性があり、現時点でcrmAがどの段階でウイルス複製を抑制しているかは不明である。今後さらに解析する必要がある。2)PKRはNF-IL6を活性化するが、直接的リ ン酸化の証明には至らなかった。ウイルス感染により新たにリン酸化されるNF-IL6の割合が少ないために、解析が困難なのかもしれない。今後さらに解析を進めていく。3)tax発現によりPKRの発現量、活性がともに減少することが明らかになったが、PKR減少がFasアポトーシス抵抗性の原因なのか結果なのかは、今後さらに解析する必要がある(この実験は、プロジェクト申請後に新たに追加したものである)。

PⅡ-B 培養大脳皮質ニューロン間の電気的カップリングの機能解析

中西圭子(生理学部)、久木田文夫、山岸俊一(生理研)、藤田佳織、加藤泰治(名古屋市大)

 ニューロン間の同期した頻回放電(以下、burst)および膜電位変動は、幼若期の生きた哺乳動物の海馬やそのスライス標本などでも報告されており、発達期ニューロンの特徴のひとつとして、将来細分化された神経連絡を構築していくために、重要な役割を果たしていることが推測されている。また、このニューロン間の同期したburstは、脳波などとも関連している可能性もあり、その機序および脳波との関連を明らかにしていくことは、神経発生後期すなわちヒトにおいては周生期前後におこる脳神経発達障害を研究していく上で有用であると考えられる。我々は、ラット大脳皮質ニューロンの培養系において観察されるニューロン間のburstを電気生理学的に解析し、ニューロンのネットワークモデルとして確立し、発達障害の機序を検索していくことを目的として研究を進めている。
 ラット大脳皮質ニューロンを長期培養すると、細胞内カルシウムイオン濃度が周期的に同期して変動することが報告されており、これは機能的シナプスによるものと考えられている。この系において、パッチクランプ法を用いることにより、任意の2つのニューロンの膜電位活動を同時記録した。細胞内カルシウムイオン濃度の周期的変動と同様の周期で、これらのニューロンの膜電位も同期してburstしていること、またこのburstには細胞外カルシウムイオンを必要とすることがわかった。このことは、培養しているほとんどのニューロンが何らかの連絡をもって生育していることを示している。
 この同期したburstがおこる機序として、1)ギャップ結合による細胞間連絡、2)化学シナプスによる増幅、3)その他の液性因子によるもの、などが考えられ、これらについて検討した。
 まず、1)については、ニューロンの細胞内に、ギャップ結合を通過しうる低分子量色素(Lucifer Yellow)を注入したところ、他の細胞への色素移行はみられなかった。また、一方のニューロンヘの通電刺激により他方のニューロンでの電位変化も観察されなかったことから、ニューロン間のギャップ結合連絡によりburstがおこっている可能性は否定的である。しかし今後、より小さい色素分子であるNeurobiotinについても細胞内注入を行い、検討する予定である。さらに、ニューロン間連絡のみでなく、ニューロン・アストロサイト間およびアストロサイト間のギャップ結合の関与についても調べていく予定である。
 また、2)については、一方のニューロンを通電刺激し発火させ、他方のニューロンの興奮性後シナプス電位(EPSP)の有無を確認したところ、一部のニューロン間でシナプス連絡が認められ、機能している化学シナプスが存在することが確認できた。さらに、これらのニューロン間のシナプス連絡における遅れ(synaptic delay)とburst起始部の遅れとの解析から、このburstが多シナプス性の要因でおこっていることが示唆された。
 今後、これらについてはさらに詳細に検討していく予定である。また、この培養系におけるニューロン間の同期したburstが、スライス標本などでみられるburstと共通の性質をもつかどうかなどについても種々の薬剤などを用いて検討し、このburstの機序を明らかにするとともに、培養系におけるネットワークモデルを確立していく予定である。

PⅡ-C 神経回路形成過程におけるCollapsinの分子機能解析

谷口雅彦、成瀬一郎(形態学部)、八木 健(生理研・高次神経)

 複雑な脳神経系において機能的な神経回路を形成するためには、神経軸索の正確な標的への投射が必須である。この正確な軸索投射においては、神経軸索先端の成長円錐(growth cone)が重要な役割をしており、成長円錐の伸長方向を制御する分子機能の存在が想定されている。ニワトリDRGにおける成長円錐伸展抑制分子としてcollapsin-1(以前は、collapsinと言われていた)が同定された。その後、collapsin-1と相同性のある遺伝子が様々な種や種内でクローニングされ、これらはCollapsin/Semaphorinファミリーと呼ばれている。これらのファミリーはsemaphorin domainと呼ばれている約500アミノ酸のファミリー間で相同性が高い領域を持っているのが特徴である。現在までにcollapsin-1は神経培養系の実験により、成長円錐の抑制性ガイド因子(repulsive guidance cue)であることが示唆されている。しかし、生体内でcollapsin-1がどの神経回路形成過程に関わり、その神経回路がどの様な脳機能に関連しているのかについてはわかっていない。そこで我々は、collapsin-1欠損マウスを作製することにより、生体内でのcollapsin-1の神経回路形成過程での役割を明らかにし、その神経回路形成異常の脳機能への役割についての検討を試みた。
 collapsin-1欠損マウスは遺伝的背景がICRとC57BL/6である2種類を得た。ICR系の欠損マウスについては、多くは生後すぐに死亡した。このマウスの死亡原因について検討したところ心内膜床欠損症が認められた。一方、C57BL/6系のcollapsin-1欠損マウスは大部分が成長し、心臓の異常は認められなかった。このように、遺伝的背景により、生存率と心臓の異常に差が認められた。しかし、大人のICR系欠損マウスでも心内膜床欠損症は認められるので、心内膜床欠損症は死亡原因の一つかも知れないが、それだけが原因ではないと考えられる。ICRとC57BL/6系のcollapsin-1欠損マウスとも生き残る欠損マウスは交配可能であり、また、体が野生型と比べて小さい(離乳時で、体重が約半分)。次に、collapsin-1の代わりにlacZを発現するマウスを使用して、発現を調べた。その結果は、報告のあったin situ hybridizationの結果とほぼ同じであったが、中枢神経系(脳と脊髄)において、collapsin-1の発現がほとんどないという異なる結果を得た。さらに、collapsin-1は軸索のガイド因子と考えられているので、collapsin-1欠損マウス胚を抗ニューロフィラメント抗体で染色してみた。その結果、collapsin-1欠損マウス胚では、脳神経において、三叉・顔面・舌咽・迷走・副神経の走行に異常が認められたが、動眼神経では認められなかった。このことより、collapsin-1は選択的抑制性のガイド分子であることが分かった。また、軟骨に神経が向かわない現象が知られているが、collapsin-1は軟骨に発現しており、発現しているところを軸索が避けるので、collapsin-1はその現象の一つの候補分子である。

PⅢ-A 関節可動障害のバイオメカニクスと立位・歩行異常

三田勝己、赤滝久美、渡壁 誠、伊藤晋彦(治療学部)、鈴木伸治(伊豆医療福祉センター)

 障害者が健康で自立した日常生活を営み、一般社会への速やかな参加を果たすうえで、立位、歩行能力の獲得は極めて重要である。立位や歩行を阻害する因子は3つある:①関節の拘縮や筋の短縮によって生ずる関節可動障害、②筋力の低下、③感覚・運動を含めた神経系の機能異常である。本研究では、特に関節可動障害の評価や機序を生体力学(Biomechanics)的手法によって検討するとともに、立位や歩行に及ぼす影響を明らかにし、障害者の生活の質(QOL)の向上に資することを目的とした。
 【関節可動域の評価】 本課題では、股、膝関節の可動域と二関節筋(大腿直筋、ハムストリングス)の筋長の相互関係を二次元的に表記する幾何学モデルを提案した(図参照)。このモデルは6種類の肢位における股関節と膝関節角度を直交座標面にプロットし、これらを結んだ六角形を手がかりにする。この六角形は股・膝関節の可動域の相互関係を表す。痙直型脳性麻痺児を対象に、上記6種類の肢位の股・膝関節角を写真分析し、幾何学モデルを手がかりに関節可動障害と筋短縮の病態について検討を加えた。その結果、脳性麻痺児の関節可動域制限は二関節筋と股関節周囲単関節筋の短縮を主体とする病態であることが明らかとなった。一方、膝関節周囲単関節筋の筋長は比較的良好に保たれていた。単関節筋と二関節筋はともに痙性をともなっており、伸張を受けなければ短縮するという点で本質的な違いはないと推察した。
 【立位異常】 関節可動障害のある脳性麻痺児が斜面上に起立した際のアライメントを写真分析し、関節可動障害が立位姿勢に及ぼす影響を検討した。その結果、足関節に可動障害をもたない脳性麻痺児は正常児と同様に足関節の角度変化によって立位を保つことが示された。一方、足関節の背屈制限のある脳性麻痺児が前方傾斜斜面上で起立すると、下腿が後傾する結果、姿勢を安定させるために膝・股関節を屈曲させて体幹を前方へ傾斜させた。これはいわゆるクラウチングポスチャーと呼ばれる姿勢であり、体幹移動による姿勢調節は慣性モーメントが大きいために応答が悪く、立位保持が不安定になる要因と考えられた。
 【歩行異常】 脳性麻痺児の歩行時の酸素摂取量、頭部鉛直方向の加速度、歩幅、歩調を測定し、関節可動障害が歩行に及ぼす影響を実験的に調べた。また、リズム発生神経回路網と筋骨格リンクモデルを用いて関節可動障害による歩行異常のシミュレーションを行なった。実験的分析によれば、関節可動障害のある脳性麻痺児の歩行は酸素摂取量、鉛直加速度ともに健常児より大きく、それは関節拘縮によって過大な身体動揺が生じ、エネルギー消費量の増大を引き起こしたものと考えられた。モデルによるシミュレーションでも同様な特徴が確認され、筋骨格系をより複雑にモデル化すれば歩行異常を精密に記述できることが示唆された。

非線形幾何学モデルの図

PⅢ-B 知的障害児者の「自己決定(=本人の選択)」の援助技術の開発

望月 昭、小野 宏、渡部匡隆、野崎和子(能力開発学部)、田中 列(春日台授産所)、山田岩男(名古屋市滝川小)、大石幸二(筑波大学)

 昨年度に引き続き、障害を持つ個人自らが新たな環境選択肢の内容を決定する「自己決定」の実現に必要な具体的援助の方法を実証的に検討した。特に自己決定という概念を、学校教育や福祉現場さらには日常の地域社会の中に保障・定着させるために必要な設定(“装置”)とはどのようなものかについて検討した。
 この2年間の研究と協議の中で浮かんだキーワードは“Exchanger marker”という概念である。Exchangerとは、障害を持つ個人が、環境設定の選択に対して周囲の人間に対して選択と拒否権を用いることで他者と対等にnegotiationできる立場性を示すものである。Exchager markerとは、そのような立場を本人にも周囲の人間に対しても行動的な意味で機能的にcontrolする“装置”である。自己決定というものを選択と否定を伴う他者との社会行動であるとすれば、Exchanger-markerとは、自己決定的な行動特性を形成する文脈刺激ととらえることができる。望月らは、Parsons & Reid型の選択決定場面において、一般社会において最も典型的なExchanger-markerである金銭によって有価な選択肢を選択(購買)するという、文字通り対象者をExchanger(あるいは本来的な意味でconsumer)とみなす設定条件を導入した。その結果、金銭は、昨年報告した「否定選択肢つきメニュー」と機能的に類似の自己決定的行動を引き起こす文脈刺激となることが確認された。大石は「本人が選択できる条件」と「他者から指定を受ける」という2つの条件設定を用意し、各条件を示す物理的刺激(Exchanger marker)のもとで、知的障害を持つ児童に、「選択機会自体の選択」という文脈的な弁別行動の成立の可能性、さらに選択機会と非選択機会が後続の行動にどう影響を及ぼすかについて質的・量的のふたつの測度で検討した。渡部らによって企画された授産所における「集会」とは、そのもとでは対象者本人が自らの環境設定について自由に要求できる場面設定(Exchanger marker)である。2年間の経験によって、多くの施設利用者が職場環境の設定についてさらに生産的な要求を示し続けることが確認された。そしてそれによって、本人達の自発的な作業関与度や全体の売り上げ額も変化することが定量的に示された。
 自己決定の援助とは、特定の選択肢を選ぶよう“指導”することではない。また本人に選ばせるまでもなく(わかりきった)重要な案件(「雪の日の外出にTシャツにするかジャンパーにするか」、「施設に住むか地域に住むか」「賃金を増やして欲しいか」)を、改めて本人の口から言わせて社会的効果を狙うといった冗長な作業だけで終わってもならない。「人は生まれながら自由であり平等である」ことは万人の知るところであるが、その理念そのものが個別の個人の現実的な権利を自動的に拡大はしない。障害を持つ個人に対して、自己決定的な対人関係を先送りすることなく“今”実現するためには、具体的で定量可能な“交換(exchange)”が成立している時のみに権利が発生しているとする“ボトム・アップ”な発想を行う必要があろう。Exchanger markerはその絶対量としての「権利」を広く社会の目にさらしてその評価を求める装置なのである。

C 病理解剖

佐賀信介、長浜眞人

1)病理検査
 平成8年1月から平成8年12月までに中央病院各科およびこばと学園から依頼された計205症例の病理検査標本について病理組織診断を行った。また、27症例については凍結切片標本を作製して迅速診断を行った。標本の作製は中央病院検査室の森が中心になって行い、佐賀、長浜が鏡検診断にあたった。難解な症例については名古屋大学医学部、九州大学医学部、愛知医科大学などの病理医と症例検討を重ね、診断精度の向上に心掛けた。

2)病理解剖
 平成8年1月から平成9年2月までに計3症例についての剖検が行なわれた。長浜が執刀し、中央病院検査室の技師が交代で剖検介助を務めた。剖検室の清掃・整理、スライドを含む剖検標本の保管・整理は河村が行った。剖検診断用の光顕標本の作製は河村が中枢神経系を、中央病院検査室の森が一般諸臓器を担当した。今年度は死亡数自体の減少もあり、たまたま部検数が極端に少なかったが、剖検することでしか得られない情報はまだまだ多く、剖検は臨床医が個々の症例から学ぶことのできる最大の機会であることに変わりはない。病気の原因を個々の症例から直接、遺伝子レベルで解明できるようになった今日こそ、病理解剖の重要性を認識する必要がある。

剖検
番号
年齢
性別
臨床診断(出所) 病理学的診断 剖検者
589 11日
先天性サイトメガロウイルス
感染症(新生児内科)
先天性サイトメガロウイルス感染症
(側脳室壁の石灰沈着・炎症性肉芽層、
側脳室の拡大、肺胞上皮に核内封入体)
1.菌血症(脳・両肺・肝・両腎・副腎・心臓・
甲状腺・脾臓・小腸・脳下垂体に細菌塊・
肉芽組織形成)
2.肝細胞障害 
3.全身性黄疸
4.肺鬱血
5.右心室拡張・動脈管開存 
6.胸腹水
長浜
590 11才
肝内胆管低形成症
(小児外科)
肝内胆管低形成症+肝線維症(肝臓1430g)
1.全身性黄疸 
2.肝門空腸吻合術後の状態
3.右側脳室内の新鮮出血
4.慢性腎不全+高度な胆汁性腎症
5.馬蹄腎(204.5g) 
6.急性壊死性膵炎(88.5g)
7.脾摘術後の状態 
8.右心室の拡張
9.左心室の軽度肥大
10.左胸水
11.腹水
長浜
591 1日
超低出生体重児
(新生児内科)
新鮮脳内出血(両側の大脳基底核上部に
新鮮出血・海綿状変性・高度のリンパ球浸潤)・
脳室内出血(側脳室への穿破・出血、側脳室・
第三脳室・第四脳室の拡大)・右小脳半球表面の
血腫形成(小脳実質圧迫のみで出血なし)
1.新生児(在胎26週)
2.未熟児(体重;853.3g)
3.頭蓋内のみの検索
長浜

Ⅲ 共同研究科

伊藤宗之

 共同研究科は企画担当(2名)、図書担当(2名)、共同実験担当(11名)から成り立っている。今年度の共同実験担当の内訳は実験用動物担当(5名)、ラジオアイソトープ担当(2名)、電子顕微鏡担当(1名)、生化学系共同機器担当(1名)、剖検担当(1名)、科長直属(1名)であった。今年度当初、芸術文化センター図書館に移った吉田 茂にかわって青葉寿美子が同館より着任し、北島哲子が形態学部に移り、岩本郁子が科長直属として採用された。
 企画担当の長瀬二郎と伊藤文子は研究所の事務全般を処理している。庶務関係では、所長用務の事務補助、各種報告・所内周知、各種委員会に関する事務局事務、所員の福利・厚生に関すること、出勤簿整理、郵便物の集配がある。経理関係では、役務費・賃金・報償費に係る予算執行伺、出張旅費の請求・支給に関すること。予算の執行状況の把握、各学部毎の備品台帳作成と備品管理がある。用度関係では、物品購入伺・物品出納通知の整理、運用部用度担当との折衝がある。施設関係では設備施設の営繕修理に関する仲立ちもする。共済関係では共済組合・互助会・生協の事務、ならびに生協物資購入の取りまとめ、配布も担当している。研究所固有の事務処理と呼んでいるものに、海外出張、文部省研究費、研究補助金の事務処理、組み替えDNA実験、RI実験に係わる省庁との連絡、共同セミナー・所内セミナー、委員会議事記録、来客の接待がある。具体的には4月の総長巡回、11月の行政監査に対する準備、3月の名古屋市白鳥に於ける研究所公開シンポジウム'97の会場事務などがあった。研究所唯一のファクシミリ送受信機の着信の度毎に各学部にその旨を内線電話で連絡している。各学部、少 なくとも各階に設置される日が待ち遠しい。なお長瀬は今年も運用部での課長会議の委員およびコロニー祭委員の任にあった。図書担当の青葉寿美子と武藤祐子の活動は、図書委員会報告の項に述べられている。それ以外の主たる業務に、雑誌・図書の購入に関する予算案の作成、購入伝票から、受け入れ、記入までの一連の事務、図書および製本雑誌の登録カード作成がある。極めて限られたスペースのなかで分類、整理は厳しい。特に書庫は飽和状態にあり、蔵書の維持・管理には年々ますます苦慮している。オンライン文献検索の操作、コロニー外の図書館への文献複写依頼の処理、コピー機の管理、各学部別のコピー使用集計なども業務の内である。年間1000冊以上に及ぶ雑誌製本は年数回にわけて行なっている。青葉はコロニー祭委員を務め、東海地区医学図書館協会にも幹事として参加した。
 年度末の発表では長瀬二郎が次長として明知寮へ、川本隆之が遺伝学部へ移ることが決まった。共同実験担当11名の具体的な活動については各種委員会の章に詳述されているので本頂では省略する。

Ⅳ 委員会活動

A 特別委員会

予算委員会

委員長:浅野富子

委員  :山田裕一、松田素子、仙波りつ子、戸塚 武、長浜真人(8月まで成瀬一郎)、青木 久、綿巻 徹(10月まで幸 順子)、大島正彦、長瀬二郎

 今年度から、前期配分が全体の45%と少なくなった。需用費では、その内の40%が前払いを原則とする図書の洋書購入分に当てられるため、研究費として使える割合が非常に少なく、8月には発注停止を余儀なくされた。旅費についても、秋に開催されていた学会が年々早く開かれる傾向にあり、9月にはやはり執行できなくなるという事態になった。この点を配慮した前期配分を希望する。
 本研究所の備品整備の立ち遅れはここ数年深刻になってきているが、われわれの期待に反して、今年度の備品整備費はさらに削減され、遂に500万円を切ってしまった。そこで、委員会では苦肉の策として、来年度と再来年度については部門に配分される人当研究費を寄せ集めて高額機器購入に当てることを決定した。これからの2年間の研究活動に大きな影響を与えることは必至で、早期の備品整備費増額を切望する。

人事委員会

委員長:伊藤宗之

委員  :孫田信一、鈴木信太郎(7月まで竹内郁夫)、大平敦彦、加藤兼房、佐賀信介、三田勝巳、綿巻 徹、渡辺勧持

 討議した案件は6件、委員会開催は7回であった。

将来計画委員会

委員長:大平敦彦

委員  :武藤宣博、鈴木信太郎(7月まで青木英子)、加藤兼房、橘 敏明、佐賀信介(7月まで成瀬一郎)、西村辨作、望月 昭、大島正彦、伊藤宗之

 研究所の増築計画が示され、現研究所建物の西側に、地下1階地上5階、約2,600m3が増築される予定となった。これにより、全面改築を前提として平成7年に立案した研究所将来構想の、手直しが必要となったが、本年度は、とりあえず、増築部利用計画案を策定し、10月定例運営会議に資料として提出した。
 研究所将来構想の実現と、研究の一層の効率化を図るためには、老朽化した機器の更新と、最新鋭機器の導入が適切に行われる必要がある。本年度は、備品整備費により蛍光顕微鏡他1点を購入し、研究の効率化に役立っている。しかし、実験機器のハイテク化に伴い、価格も高額となり、現在の備品整備費では、適切な機器の更新と新規導入が不可能な状態である。本委員会では、研究所で導入すべき高額研究機器の調査を行い、一覧表にまとめた。そのうち、緊急性の高い機器については、予算委員会と協力し、購入のための具体案を作製した。

共同研究委員会

委員長:佐野 護

委員  :武藤宣博、滝沢剛則、竹内郁夫、時田義人、橘 敏明、西村辨作、望月 昭、三田優子

 研究所内外の研究交流を活性化するため、例年どおりの活動を進めた。研究所セミナーとして、所内27名の研究発表会を、平成8年5月より、平成9年1月にかけて、8回にわけて行った。8年度は、新規採用された若手研究員が多く、これらの方にまず優先的にお願いした。共同セミナーについては、各部門より推薦された12名の内外の研究者を招きセミナーを行った。旅費、報償費に制限があるが、所外との学術交流は、大変重要で、拡充が望まれる。本年度も、名古屋国際会議場で、発達障害研究所シンポジウム'97が開催され、多くの出席者を集め成功裏に終わったが、当委員会は、会場準備、当日の会場運営を担当した。所外からの共同研究者、研修者に関する窓口業務も当委員会の審査を経て、例年どおり進められた。各事業の詳細は、「研究交流」の項を参照されたい。

記録広報委員会

委員長:渡部眞三

委員  :山田裕一、浅野富子、慶野宏臣、木村礼子、塚原玲子、北島哲子、渡部匡隆、三田優子

 本年度の活動は、年報24号の編集・発行、業績集の作成と、発達障害研究所公開シンポジウム'97の広報であった。年報24号の編集は昨年度の編集方針に準じて行ったが、発行は諸般の事情で例年より遅れた。公開シンポジウム'97に関してはパンフレット、ポスター、講演要旨集を作成し印刷した。パンフレットは最終的に2千部印刷し、広く配布して広報に努めた。

B 各種委員会

図書委員会

委員長:長浜眞人

委員  :鬼頭浩史、青木英子、時田義人、上田 浩、橘 敏明、渡壁 誠、野崎和子、島田博祐 青葉寿美子 武藤裕子(オブザーバー)

 需要費予算の削減と書籍単価の上昇のため、購入雑誌の選定見直しを全面的に行い、やむなく購入継続雑誌の一部を削減した。又、書庫が満配のため、収納スペースを確保すべく、利用されなくなった二次資料を整理した。

安全委員会

委員長:米澤 敏

委員  :浅野富子、武藤宣博、慶野宏臣、浦本 勲、大島章子、続木雅子

 本委員会は運用部施設係の協力のもと、各実験室等から出される有害廃液中の有害物質の検査とその処理にあたっている。また、毒物・向精神薬の管理および危険物倉庫の管理運営(管理者:浅野)を行なっている。この数年、有害物質の一般廃液中への混入について繰り返し注意を喚起してきたが、今年度はそうした混入もなく、安価に廃液処理を完了できた。ひき続き、各実験室・実験者への注意徹底をはかりたい。

生化系共同機器委員会

委員長:加藤兼房

委員  :山田裕一、米澤 敏、時田義人、渡辺貴美、佐藤 衛、岡本慶子

 本年度は、超遠心機の使用頻度が増加した。HPLC、凍結乾燥機などもよく使われた。備品整備費の激減により、新しい機器の購入はもとより、従来の機器の更新もますます困難になってきた。研究所の将来が不安である。

RI委員会

委員長:大平敦彦

委員  :武藤宣博、米澤 敏、滝沢剛則、渡辺貴美、谷口雅彦、川端優男

 放射性同位元素(RI)は厳格な規制のもとに、生命科学の研究分野で広範に使用されている。本委員会は、RI施設および施設内の様々な機器の管理運営を行ってきた。また、RIを安全に取り扱うための教育講習会も企画しているが、本年度は、名古屋市立大学・中央放射線部の伴野辰雄助教授に講演していただいた。

X線委員会

委員長:孫田信一

委員  :伊藤宗之、川端優男

 X線照射装置およびX線撮影装置(ソフテックス)は今年度も順調に作動し、各実験に使用された。

組織培養委員会

委員長:滝澤剛則

委員  :孫田信一、松田素子、仙波りつ子、中西圭子、佐野 護

 共通培養室と超純水装置が問題なく使用できるように管理を行った。本年度は特に、特殊培養室のエアコン更新、超純水装置のカートリッジ交換、および特殊培養室の冷凍冷蔵庫修理を行った。また、クリンベンチと炭酸ガス培養器を各1台ずつあらたに搬入するために、特殊培養室の整理や不要備品の廃棄を行った。委員会管理備品としてエアコン(所属:組織培養委員会)、炭酸ガス培養器2台(生化学部、発生学部各1台ずつ)、クリンベンチ(発生学部)が加わった。

生理工作委員会

委員長:赤滝久美

委員  :慶野宏臣、浦本 勲、大島章子、望月 昭、島田博祐

 昨年度に引き続き、地下工作室と生理工作系共同機器の管理運営を行った。さらに、昨年度よりの懸案事項であった工作室の粉塵収集装置を作成した。その他は工作室の消耗品補充、清掃などの作業が行なわれた。

コンピュータ委員会

委員長:島田博祐

委員  :中川千玲、松田素子、松井ふみ子、正木茂夫、渡部真三、大島章子、伊藤晋彦、渡部匡隆、青葉寿美子  

 前年度に引き続き、インターネット接続及び所内LAN構築に関する資料収集及び検討等を中心に活動を行った。主な活動経過は以下の通りである。
 5月:県庁事務管理課へ出張、当方の導入計画を説明すると共に県レベルの導入計画に関し聴取。ホームページ案の提出を求められ、6月に提出。7月:委員数名で愛知県立がんセンター研究所のシステムを見学、結果報告を所内回覧。8月:高額実験機器購入希望に際し、スライド作成機を申請。12月:コロニー全体の将来的利用計画を検討する「インターネット利用計画検討委員会」が発足。研究所代表として委員長が出席。報告書は運用部がまとめ、総長に提出(3月)。1月:県本庁より研究機関のインターネット導入を進める由の指針が出され、総長から委員会に準備作業を進めるよう指示が出、1月の運営会議で承認を得る。委員会内外のメンバーで導入準備案作成の為の作業グループ「インターネットサーバ選定作業小委員会」を発足、提示された予算案に見合った準備計画案を作成し、3月に提出、各部門委員を通じ所内回覧。
 次年度の課題として、適当なプロバイダーの選定、管理運営に関する検討等が必要と思われる。なおコンピュータ委員会は、機能の多極化に伴い発展的解消を遂げ、次年度より「マルチメディア委員会」として刷新されることとなった。

臨床施設委員会

委員長:綿巻 徹

委員  :三田優子、原 幸一

 プレイルーム、訓練室、および面談室の管理運営をおこなってきた。プレイルームのビデオカメラ1台が経年変化により老朽化し、作動不能になったので交換修理した(10月)。残りのカメラも性能劣化が著しい。できるだけ早い時期に更新されることを希望する。

DNA委員会

委員長:武藤宣博

委員  :米澤 敏、時田義人、滝澤剛則、慶野裕美、川端優男

 組み替えDNA実験室(RI施設内)とDNA sequencerの管理を行ってきた。多くの研究室がP2レベルの組み替えDNA実験室として認定されているため、組み替えDNA実験室の使用頻度は低くなってきた。昨年度購入されたDNA sequencerは年度後半から使用頻度が高くなり、ほとんど連日使用される状況になってきた。今年度はDNA sequencerのガラス板洗浄のために、生化共同室にガス湯沸かし器を設置した。

電子顕微鏡委員会

委員長:長浜眞人

委員  :孫田信一、竹内郁夫、慶野宏臣、渡辺貴美、続木雅子

 電子顕微鏡室およびウルトラミクロトーム室の機器の管理運営を行ってきた。昨年同様、清掃・暗室管理等が良好に行われた。各機器は研究室内外の研究者により活発に利用されたが、経年変化により老朽化し、真空蒸着機・透過型電子顕微鏡(JEOL 1200EXⅡ)の修理を依頼した。本委員会所属の技師の続木は、日本電子顕微鏡学会による第7回電顕サマースクールにて、電顕試料作製技術と各種機器に関する講習を受けた。
 導入が予定されている共焦点レーザー顕微鏡や、既存の形態系機器の管理を充分に行うため、次年度より組織形態委員会と名称を変更し、業務の拡大をはかることとなった。

剖検委員会

委員長:佐賀信介

委員  :加藤兼房、大平敦彦、竹内郁夫、鬼頭浩史、河村則子

 剖検室の管理運営、スライドを含む保存剖検標本の処理と管理、剖検処理補助、剖検試料の研究活用の援助、コロニー内各施設と剖検資料の検討などが行われた。

動物委員会

委員長:孫田信一

委員  :米澤 敏、仙波りつ子、正木茂夫、渡部眞三、柏井明子、花井敦子

 今年度、トランスジェニック(Tg)マウス導入に備えて飼育室を一部整備し、他研究機関で作製されたTgマウスを初めて導入した。この他にも複数の導入計画があり、最新の研究に対応できる設備の整った飼育・実験スペースの確保が早急に望まれる。動物舎研究助手の業務として昨年度から実施してきた系統動物の胚凍結保存では、これまで4系統のマウス胚について保存を完了した。ラットおよびチャイニーズハムスター胚の凍結保存も試みた。また、動物舎職員の協力を得て、良好な動物飼育環境の維持に努めた。大型オートクレーブなどを始め、動物舎の機器はほぼ順調に作動したが、予防衣洗浄用など2台の洗濯機を更新し、乾燥機については修理を実施した。平成9年3月末現在の飼育動物の総数は6種、約2,100頭で、入舎登録者は61名である。

平成8年度 実験動物飼育頭数

動物種/月 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3
マウス 1212 1262 1289 1248 1310 1223 1246 1157 1050 1021 879 1002
ラット 328 350 333 333 340 344 316 278 274 302 281 335
チャイニーズハムスター 620 665 640 662 632 628 576 602 566 586 556 523
スナネズミ 149 154 154 166 168 173 169 172 161 164 164 166
ウサギ 18 14 14 14 12 10 10 10 16 17 19 19

        他にネコも若干飼育している。

平成8年度 実験用動物新規導入状況

動物種 マウス ラット ウサギ スナネズミ チャイニーズハムスター ネコ
件数 9 44 7 1 2 7
頭数 143 359 18 11 11 27

C 管理委員会

組替えDNA実験安全委員会

委員長:伊藤宗之

委員  :武藤宣博(安全主任者)、宮崎正澄(名古屋大・理)、滝沢剛則、佐野 護、渡辺勧持、長瀬二郎

 1996年4月8日の委員会では新規実験計画5件を承認し、実験従事者変更届け2名、搬出入届3件を受理した。今年も名古屋大学理学部の宮崎教授には快く所外委員をお引き受け頂いた。

感染予防委員会

委員長:伊藤宗之

委員  :加藤兼房、佐賀信介、渡辺勧持

 本委員会はこれを構成する3つの小委員会の小委員長と、社会科学系学部代表1名でもって構成される、所長の諮問機関である。実験用動物管理小委員会は、研究所動物舎を中心に所内の実験用動物を介しての感染を予防する。感染動物実験安全小委員会は、感染動物実験室の安全を目的としており、バイオハザード対策小委員会は、生体材料を所内で取り扱う際の安全を計るために設けられている。

実験用動物小委員会

小委員長:佐賀信介

委員   :慶野宏臣、孫田信一

 本年度も賢症候性出血熱のモニタリングのため、大阪大学微生物研究所よりHFRS抗原スライドの供与を受け、ラット、スナネズミについて抜き取り検査を施行したところ、すべて陰性であった。トランスジェニック動物の飼育要望に対応して、発達障害研究所遺伝子導入動物飼育管理規約および細則を立案し、運営会議の承認を得た。これに基づき、トランスジェニック動物用飼育室の開設と必要な設備の調達を行い、平成8年11月よりトランスジェニックマウスの飼育を開始した。

感染動物実験安全小委員会

小委員長:加藤兼房

委員   :伊藤宗之、孫田信一

 今年度は計画書の提出が一件も無かった。

バイオハザード対策小委員会

小委員長:伊藤宗之

委員   :大平敦彦、滝沢剛則

 今年度は当小委員会の届け出規定に該当する実験材料の搬入の報告はなかった。

動物実験委員会

委員長:伊藤宗之

委員  :加藤兼房、佐賀信介、三田勝巳、渡辺勧持

 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所動物実験指針ができ、これに基づいて動物実計画書の提出を求めている。

Ⅴ 研究交流

研修者(平成8年4月1日~平成9年3月31日)

  1. 高橋 良吉(滋賀医大) 8. 4. 1~9. 3. 31(周生)
  2. 大橋 浩泰(株・生命情報分析センター) 8. 4. 1~9. 3. 31(遺伝)
  3. 福井 一裕(名古屋大) 8. 4. 8~9. 3. 31(周生)
  4. 谷田啓太郎(名古屋大) 8. 4. 15~9. 3. 31(遺伝)
  5. 久野 弘明(中部大) 8. 4. 1~9. 3. 31(治療)
  6. 安藤 幸司(中部大) 8. 4. 1~9. 3. 31(治療)
  7. 小柳 芳樹(中部大) 8. 4. 1~9. 3. 31(治療)
  8. 近藤 晃平(中部大) 8. 4. 1~9. 3. 31(治療)
  9. 井川 俊正(中部大) 8. 4. 1~9. 3. 31(治療)
  10. 小島 善治(中部大) 8. 4. 1~9. 3. 31(治療)
  11. 濱田 尚人(名古屋市立南押切小学校) 8. 6. 25~9. 3. 31(能開)
  12. 砂原 利夫(名古屋市立松栄小学校) 8. 8. 20~9. 3. 31(能開)
  13. 加藤ひとみ(名古屋市立広路小学校) 8. 8. 1~9. 3. 31(能開)
  14. 藤原 俊伸(名古屋市大) 8. 10. 1~9. 3. 31(遺伝)

共同研究者(平成8年4月1日~平成9年3月31日)

  1. 片平 智行(国立名古屋病院) 8. 4. 1~9. 3. 31 (遺伝)
  2. 安田 陽子(大阪大学) 8. 4. 1~9. 3. 31 (周生)
  3. 藤本 和則(名古屋大) 8. 4. 1~9. 3. 31 (遺伝)
  4. 中村 みほ(名古屋大) 8. 5. 1~9. 3. 31 (治療)
  5. 伊東 保志(鈴鹿医科技大) 8. 4. 1~9. 3. 31 (治療)
  6. 野中 壽子(名古屋市大) 8. 4. 1~8. 3. 31 (治療)
  7. 林  基治(京都大霊長類研究所) 8. 4. 1~9. 3. 31 (形態)
  8. 時々輸浩隠(県立看護大) 8. 4. 1~9. 3. 31 (生理)
  9. 鈴木 伸治(伊豆医療福祉センター) 8. 4. 1~9. 3. 31 (治療)
  10. 景山  節(京都大霊長類研究所) 8. 4. 1~9. 3. 31 (発生)
  11. 山田 晴生(愛知医大) 8. 5. 1~9. 3. 31 (遺伝)
  12. 佐藤  浩(滋賀医大) 8. 7. 1~9. 3. 31 (周生)
  13. 酒井 忠博(名古屋大) 8. 9. 10~9. 3. 31 (形態)
  14. 水谷 浩樹(名古屋大) 8. 9. 12~9. 3. 31 (遺伝)

見学者(平成8年4月~平成9年3月)

平成8年
5月2日
ニューヨーク州立発育障害研究所 2名
6月26日~28日
日本精神薄弱者福祉連盟研修生 1名
7月25日・30日
日本福祉大学社会福祉学部 10名
9月6日・3日
日本福祉大学社会福祉学部 10名
12月16日
Kimberly Forsetti 1名
3月12日
藤田保健衛生大学衛生学部 2名

共同セミナー(平成8年4月~平成9年3月)

平成8年
5月24日
金澤一郎(東京大、医)「CAGリピート病をめぐって」
6月6日
池内達郎(東京医科歯科大)「染色体転座の切断点と疾患関連遺伝子座の解析」
9月26日
Kwok-fai So (University of Hong Kong) Modern advances in the neural regeneration in the adult mammalian CNS
10月11日
RoyA.Quinlan (University of Dundee) The beaded filament of the eye lens:an expected key to intermediate filament structure and function
11月15日
古家喜四夫(岡崎生理研)「乳腺におけるカルシウムシグナリングと細胞間相互作用」
12月6日
Lars Kebbon (University of Uppsala)「スウエーデンにおける知的障害者地域生活援助の現状-QOLの視点から-」
平成9年
1月31日
加藤哲文(つくば国際大)「インテグレーション支援のためのスタッフトレーニング:就学前通園施設指導員と特殊学級教員への訓練プログラムの検討」
2月24日
桜庭 均(東京都臨床研、臨床遺伝)「リソゾーム病の分子病理と治療法の開発」
3月6日
尾張部克志(名古屋大、情報文化)「ヘミデスモゾームの分子機構について」
3月13日
東山繁樹(大阪大、医)「Tumor Survival Factorとして機能する膜アンカー型ErbBリガンド」
3月18日
森 望(国立長寿医療研)「長寿科学への分子的アプローチ-長寿は神経細胞の延命から-」
3月25日
菅 由美子(園芸療法士)「知的障害者の園芸療法」

招待セミナー(平成8年4月~平成9年3月)

平成9年
9月25日
伴野辰雄(名古屋市大、病院)「RI使用について」(共同研究科)
8月1日
塩井純一(The Mount Sinai Medical Ctr.) Appican: proteoglycan form of Alzheimer's amyloid precursor protein(周生期学部)
12月13日
羽渕脩躬(愛知教育大)グリコサミノグリカン合成にかかわる硫酸転移酵素遺伝子のクローニング(周生期学部)
平成9年
3月15日
金子尚弘(白梅学園大)、安部治幸(豊田市立能美小)「インターネットは障害者教育・福祉の実践にどう使えるか」(能力開発部)

 

研究所セミナー

第1回(通算67回)平成8年5月31日
1)小野教夫(遺伝学部) 遺伝性肝炎発症LECラットの銅代謝異常に関する遺伝学的研究
2)渡部眞三(生理学部) 末梢神経架橋によるネコ膝状体系視覚路の再形成の可能性-パターン反転網膜電図と順行性および逆行性標識による検証-
3)島田博祐(社会福祉学部) 知的障害者及び精神障害者の職業準備の為の求職面接訓練プログラムついて
第2回 6月28日
1)三田勝己(治療学部) 運動機能障害の計測と評価-循環調節障害と自律神経活動-
2)佐藤 衛(形態学部)  コラーゲン特異的分子シャペロンHSP47とプロコラーゲンの細胞内相互作用に関する研究
3)上田 浩(生化学部)  脳における新奇ホスホリパーゼAについて
第3回 7月18日
1)伊藤宗之(生理学部)   X線小頭症ラットの体性感覚領ニューロン
2)渡壁 誠(治療学部)   バイオメカニクス-膝前十字靱帯損傷とその保護機構-
3〉山田憲一郎(遺伝学部) 第21番目のアミノ酸Selenocysteineの哺乳類におけるタンパク質への取り込み機構
第4回 8月23日
1)竹内郁夫(発生学部)   Groggyラットは劣性遺伝性脊髄小脳変成症-Friedreich? EOCA?-
2)佐久間邦弘(生理学部) 骨格筋筋線維組成の部位特異的変化
3)松田素子(発生学部)   抗Wnt-1抗体処理ラット胚における中枢神経系の形態形成異常
第5回 9月23日
1)加藤兼房(生化学部) 微小管脱重合とαBクリスタリンの発現
2)青木 久(治療学部)  ヒトの大脳皮質磁気刺激と随意動作
3)成瀬一郎(形態学部) Greig cephalopolysyndactyly syndrome(GCPS)の相同疾患マウスpdn-pdn
第6回10月25日
1)滝沢剛則(生化学部)    インフルエンザウイルスによる病原性発現とICEプロテアーゼファミリー
2)赤滝久美(治療学部)    Mechanomyogram(MMG)-基礎とその応用-
3)大島正彦(社会福祉学部) 障害者の居住場所の選択-保護者の意向調査の結果等から-
第7回11月22日
1)三田優子(社会福祉学部) 知的障害者の本人活動の現状と支援のあり方
2)時田義人(周生期学部)   NMDA型グルタミン酸受容体を介した神経細胞死の機構
3)武藤宣博(遺伝学部)     Schizosaccharomyces pombeの活性酸素超感受性変異株の解析
第8回12月20日
1)孫田信一(遺伝学部)   染色体逆位-分離と組み換え体発生について
2)伊東秀記(生化学部)   αBクリスタリンのリン酸化
3)大平敦彦(周生期学部) 脳の神経回路形成および損傷修復とプロテオグリカン
第9回 平成9年1月24日
1)大島章子(形態学部)    スナネズミ研究の後半戦-中間報告-
2)戸塚 武(生理学部)   筋ジストロフィー症DMD患者とdyマウスの発症のタイミングは一致する
3)青野幸子(周生期学部) 神経接着分子(NCAM)のノックアウトマウス作成をめざして

発達障害研究所 公開シンポジウム'97

会場:名古屋国際会議場
日時:平成9年2月28日
開会の辞                  所長 小笠原信明
基調講演:歴史に見る障害者像    こばと学園長 篠田達明

第一分科会「障害者の健康と生活環境を考える」 司会:三田勝己
  三田勝己 寝たきりの弊害-廃用症候群-
  関根千佳 (日本アイ・ビー・エム)障害者がパソコン通信/インターネットに出会うとき
  青木 久  重度肢体不自由児のパソコン操作環境

第二分科会「知的障害を持つ人の『自己決定』-理念から援助技術へ-」司会:小野 宏
  望月 昭  最重度の障害を持つ人の選択決定
  渡部匡隆 本人たちによる職場環境の改善の可能性
  落合俊郎 (国立特殊教育総合研究所)FCあるいは表出援助をめぐる諸問題

第三分科会「発達障害児の言葉とコミュニケーション」司会:伊藤宗之
  飯高京子 (上智大学)発達障害児の動詞学習について
  綿巻 徹  障害児のためのコンピューター支援学習
  西村辨作 自閉症児のコミュニケーションを考える

第四分科会「障害者の地域生活援助と人権」司会:渡辺勧持
  三田優子 本人たちはどう考えているか-本人活動を通して-
  大島正彦 重度の障害をもつ人々の昼間活動と家庭援助
  大井英子 (東海大学)地域生活における人権擁護の課題-QOLの視点から-

閉会の辞                 副所長 伊藤宗之

Ⅵ 人事異動

(平成8年4月1日~平成9年3月31日)

就職・転入者

平成8年4月1日

  • 遺伝学部第一研究室研究員  小野 教夫(新規採用)
  • 遺伝学部第二研究室研究員  山田 憲一郎(新規採用)
  • 生化学部第一研究室研究員  上田  浩(新規採用)
  • 生理学部第二研究室研究員  佐久間 邦浩(新規採用)
  • 生理学部第三研究室助手    岡  博子(新規採用)
  • 形態学部第三研究室研究員  佐藤  衛(新規採用)
  • 治療学部第二研究室研究員  渡壁  誠(新規採用)
  • 共同研究科専門員        青葉 寿美子(芸術文化センター図書館から)
  • 共同研究科嘱託員        岩本 郁子

平成8年7月1日

  • 治療学部第一研究室助手    久野 裕子(新規採用)

平成8年8月1日

  • 発生学部長             鈴木信太郎(南カリフォルニア大学から)

平成8年10月1日

  • 能力開発部第二研究室研究員  中村 みほ(新規採用)

転出・退職者

平成8年4月1日

  • 共同研究科主任専門員      吉田 茂(芸術文化センター図書館へ)

平成8年9月30日

  • 形態学部第一研究室長      成瀬 一郎(京都大学へ)

平成9年3月31日

  • 所長                  小笠原 信明(兼務の解除)
  • 形態学部長             佐賀 信介(愛知医科大学へ)
  • 遺伝学部第三研究室助手     後藤 治子

昇任・昇格者

平成8年4月1日

  • 同職課長級              浅野 富子
  • 遺伝学部第一研究室長      孫田 信一
  • 治療学部第一研究室長      青木  久
  • 同職専門員              木村 礼子

Ⅶ 1996年度予算

総額         821,062千円
○人件費      685,026千円
○一般管理費    6,819千円
○研究費      116,360千円
○実験備品購入費 4,857千円
○図書購入費    8,000千円

(附) 設備備品(100万円以上)

NO 品名 形式
1 遠心機 日立20PR-52D
2 遠心機 日立工機CR20B2
3 顕微鏡 RA-38カールツアイスケイコウ
4 顕微鏡 オリンパス
5 顕微鏡 ニコン VFD-R型
6 超低温槽 フォーマ8118型
7 液体クロマトグラフシステム 東ソーCCPM
8 核酸分析装置 フオルマシア
9 炭酸ガス培養装置 ナプコ6300
10 自動密度勾配分取装置 LKB1130
11 遺伝情報処理システム マイクロコンピュータ始め13点
12 超低温フリーザ MDF-382
13 冷凍機 三洋MDF-490
14 顕微鏡 ニコンタイアフオトTMDセット2
15 顕微鏡 ニコン VFD-R型
16 顕微鏡 オリンパスAHBS-514
17 液体クロマトグラフ 東ソー
18 ダブルビーム分光光度計 日立124
19 クリーンベンチ 日立PCV-1602BRG
20 ミクロトーム ユング電動式回転ミクロトー
21 超低温フリーザー サンヨーメディカMDF-390AT
22 透過型微分干渉顕微鏡 ニコンXF-NTF-21
23 液体クロマトグラフ フアルマシアFPLC
24 二波長クロマトスキャナ 島津CS-910
25 ダブルビーム分光光度計 島津UV-210A
26 電子天秤 メトラーHK60
27 炭酸ガス培養装置 ナショナルナプコ5100
28 クリオスタット リップショウデラックス
29 ミクロトーム サーバルJB-4A
30 分離用超遠心機 日立65p
31 分離用超遠心機 日立65p
32 高速冷却遠心機 日立20PR-52
33 超低温フリーザー サンヨーMDF-390
34 超低温フリーザー DLTRALOW
35 超低温フリーザー DLTRALOW
36 高速冷却遠心機 日立SCR-20B
37 遠心機 日立CR0
38 遠心機 日立CPB5べータS
39 真空凍結乾燥機 FD-1東京理化
40 液体クロマトグラフシステム 東ソー
41 液体クロマトグラフシステム PPLCシステム
42 分離機 日立70P-72
43 ガスクロマトグラフ 島津GC-5AP3TEE
44 ガスクロマトグラフ 日立063-6015
45 質量分析装置 日立RMV-6GC
46 自動化学分析装置 島津PPSQ-10
47 分光光度計 日立356
48 分光光度計 日立650-40
49 分光光度計 島津UV-240
50 原子吸光光度計 日立z-700
51 分光光度計 島津UV-2100S
52 超音波洗浄機 海上電気CA-6316
53 培養器 フオーマ3157
54 N2-O2-CO2インキュベータ タバイBNP-110
55 シンクログラフ TFG-10
56 万能工作機 エコムマキシマウント10
57 オシロスコープ 日本光電VC-9
58 落射蛍光顕微鏡 ニコンXF-EFD2
59 刺激反応自動
60 制御測定記録装置 UNICON-1
61 分光光度計 日立
62 電気泳動装置 UV-S40M2
63 多用途監視記録装置 日本光電RMP-600
64 脳波分析装置 日本光電MAF-5
65 脳波計 日本光電ME-950
66 脳波計 日本光電EEG-4214
67 クリオスタットミクロートム ブライトOT/FAS
68 データレコーダ ソニーマグネスケールA-414-7
69 データ処理用電子計算機 日本光電ATAC-501-1
70 ミクロトーム研磨器 シャドン
71 高速冷却遠心機 日立CR-20B-2
72 ワードプロセッサ 東芝JW-7
73 核酸分析装置 フオルマシア
74 分離用超遠心機 日立70P-72
75 ガスクロマトグラフ 島津GC5AP3TFF
76 ガスクロマトグラフ 日立063-6015
77 質量分析装置 日立RMV-6GC
78 分光光度計 日立356
79 自動化学分析装置 島PPSQ-10
80 真空蒸着装置 日本電子JEE-4B
81 超低温フリーザー サンヨーメデイカMDF-390
82 ウルトラフオト カールツアイスⅢ
83 電子顕微鏡 日本電子JEM-100B
84 倒立顕微鏡 ニコンMD-A
85 走査電子顕微鏡 日本電子JSM-25S3
86 顕微鏡 ニコンTMD-2S
87 液体クロマトグラフ 東ソー
88 紫外線吸収計 LKBユビコードⅡ
89 分光光度計 オリンパスDMSP-2
90 アルゴンレーザー装置 AC-2000
91 炭酸ガス培養装置 フオーマ3158
92 マイクロマニプレーター ライツラボルックス
93 ウルトラミクロトーム サバールMT-2B
94 ウルトラミクロトーム サバールMT-2B
95 ウルトラミクロトーム LKB-8800A
96 テトランダーミクロトーム カールツアイス
97 ピラミトーム LKB-11800
98 標本薄切機 プラトスOT/FAS/XT
99 画像解析システム コントロンMOP/AMO3
100 ナンバーリング装置 日本電子JSM-25SⅢ
101 引伸機 ダストレーL-138S
102 吸気ガス分析装置 日本電気三栄1H21A-SP
103 歩行解析装置 共和産業R-56-1295
104 プレイルーム観察装置 ソニーETV300
105 脳波分析装置(オムニコーダー) 8M15
106 N2-O2-CO2インキュベータ タバイBNP-110
107 多用途監視記録装置 日本光電WEB-5000
108 多用途監視記録装置 NEC,日本光電
109 多用途メーター 三栄271ガタ
110 レスピロモニター ミナトRM-300
111 トレッドミル 八神ATM-7018-S
112 テープレコーダー テイアックSR-51ポータブル型
113 ビデオカメラ ソニーDXC-1850
114 AV調整卓 ソニー
115 重心波形解析装置 FAD-1
116 パーソナルコンピューター NECPC9801VM12
117 カラーカメラシステム ソニーDXC-1821H
118 パーソナルコンピューター マッキントッシュ2CX
119 眼底カメラ 竹井-919
120 多用途テレメータ 日本電気三栄システム
121 パーソナルコンピューター NEC9801VMO
122 磁気記録再生装置 ソニーDFR3515
123 パーソナルコンピューター 汎用複数同時処理
124 視聴覚関係装置 ソニー編集装置
125 炭酸ガス培養装置 フオーマ3157
126 オートクレーブ 岩楯F204-A
127 高圧蒸気滅菌装置 岩楯F202L
128 自動ケージワッシャー 清和産業SW-200
129 クリーンアイソレーター 岡崎産業F215
130 クリーンアイソレーター 岡崎産業F215
131 クリーンアイソレーター JIC6段
132 クリーンラック JIC
133 クリーンラック JIC
134 クリーンラック 夏目KN-735B
135 動物飼育器 夏目KN-715ゼット
136 パーソナルコンピューター NECPC9801E
137 分離機 日立55P-2
138 分離機 日立18PR-52
139 真空凍結乾燥 ラブコンコFD-8
140 ハンドフット・クローズモニター アロカMBR-51
141 放射能量計測機器 ベックマンLS9000
142 オートウエルガンマシステム アロカARAC-301
143 放射能量計測機器 ベックマンLS-6000IC
144 放射能量計測機器 ベックマンLS-3100
145 放射能量計測機器 アロカMBR-51
146 X線照射装置 東芝KXC-19-7
147 ソフテックス CSM
148 動物飼育フード W-1200
149 クリーンベンチ CCI740
150 RI有機廃液焼却炉 富士工業FRB-20
151 ワードプロセッサ 東芝JW-7
152 遠心分離機 パーソナル超遠心機アバテイ30
153 顕微鏡 オリンパスBX60-3
154 呼吸率計 医用ガス分析計ミナト医科学MG-360

Ⅷ おもな研究材料

1.実験動物(動物委員会)

マウス

系統名 由来 入手年 世代数 標識遺伝子および特性
BUS/Idr JSR/Idrより分離 1985 F37 bus,聴覚・平衡感覚障害(行動異常)
CFO Jic→Idr 1976 F59 貧血,リピドーシス
CTA/Idr Shi→広島大→Idr 1972 F113 ABc,Cts(白内障,小眼球症)
C57BL/6J-dy Jic→Idr 1972 F64 dy(筋ジストロフィー症)
DW/J Jax→Idr 1978 F73 dw(小人症)
KYF/Ms Ms→Idr 1982 F60+77 abCS
SAM-R/1/Ta Ta→Idr 1988 F52+34 P/8の対照群
SAM-P/8/Ta Ta→Idr 1988 F62+34 老化促進マウス、記憶障害
(トランスジェニックマウス)
NGC-tg C3HxC57BL 1997 F2 NGC(rat)遺伝子導入(蛋白質の発現未確認)

その他研究に用いている系統:BALB/cAnNCrj, BALB/cCrSlc, Crj:CD-1, C57BL/6J-bm, C57BL/6J-js,KRCS(C), KRCS(G), Slc:ICR, CRF-hyt+

ラット

系統名 由来 入手年 世代数 標識遺伝子および特性
Gro Slc:Wistarより分離 1989 F18 gr,運動失調
SDGR Jcl:SDに導入 1980 F42 j(黄疸)

その他研究に用いている系統:Slc:SD, Slc:Wistar, BN/Sea

チャイニーズハムスター

系統名 由来 入手年 世代数 標識遺伝子および特性
CHS/Idr cy→がん研→愛知がんセンター→Idr 1972 F58
T(1;4)1Idr CHS/Idr 1979(作製) F34 相互転座染色体を保有
T(2;10)3Idr CHS/Idr 1979(作製) F36 相互転座染色体を保有
T(2;8)5Idr CHS/Idr 1979(作製) F37 相互転座染色体を保有
T(1;3)7Idr CHS/Idr 1979(作製) F35 相互転座染色体を保有
T(1;3)81dr CHS/Idr 1979(作製) F39 相互転座染色体を保有
T(1;2)9Idr CHS/Idr 1979(作製) F40 相互転座染色体を保有

その他研究に用いている系統:異なる相互転座染色体を保有するもの(15系統)、逆位染色体を保有するもの(3系統)

スナネズミ

系統名 由来 入手年 世代数 標識遺伝子および特性
MGS/Idr Yok→Idr 1973 F29 てんかん様痙攣発作高発

その他の実験動物

 ウサギ(JW)、ネコ

2.細菌・バクテリオファージなど(DNA委員会)

1. Hosts

Name Species Comments Owner
BNN103 EC host for λgt10, λgt11 MT
C600 EC F-supE44 MT
HB101 EC recA13 MT
JM83 EC host for M13 Δ lacpro lac1Z Δ M15 MSK
JM101 EC host for M13 idem MT
JM110 EC host for M13 idem,dam' dam' MT
RR1 EC F-, recA MT
Y1088 EC host for λgt10, λgt11 MT
Y1089 EC idem MSK
Y1090 EC idem MT
DBY746 SC haploid α, leu2-3, trp1,ura3, his3 MT
IFO1265 SC diploid MT
T27 SC haploid α MT
HM123 SP h-, leu1-32 MT
IFO0345 SP haploid MT
IFO1086 SP haploid MT
JY741 SP h-, ade6-M216,leu1, ura4-D18 MT
L972 SP haploid h- MT

Abbreviation: EC;Escherichia coli, SC; Saccharomyces cerevisiae, SP; Schizosaccharomyces pombe

2. Vector

Name Species Comment Developer Possessor
pBR322 P for EC Apr, Tcr Bolivar MT
pBR325 P for EC Cmr, Apr, Tcr Bolivar MT
pSEY101 P for EC & SC lacZ fusion vector Emr MT
pGEM-3Z P for EC Apr, lacZ' , promoter of T7,SP6 - OSM
pUC18 P for EC Apr, lacZ' Messing MSK
pUC19 P for EC Apr, lacZ' Messing MSK
pUC119 P for EC Apr, lacZ' Messing MSK
mp18 M13 ss bacteriophage - MT
mp19 M13 ss bacteriophage - MT
λgt10 λ-phage cDNA cloning vector Hunfh et al MSK
λgt11 λ-phage exprssion vector Yung & Davis MSK
EMBL3 λ-phage replacement vector - MT
pKK223-3 P or EC exprssion vector Brosius MT
pDB248' P for EC SC, SP Apr, Tcr, Leu2 Beach MT
YEp24 P for EC & SC Apr, URA3+ ? MT
YCp50 P for EC & SC Apr, Tcr, URA3+ ? MT
pSP64 P for EC for RNApreparation Melton MT
pSP65 P for EC for RNA preparation Melton MT
pSPT18 P for EC for RNA preparation - MT
pSPT19 P for EC for RNA preparation - MT

3.Genes

Name Definition DNA type Size Developer Owner
pYS11 Cd resistancy gene SP 1.5kb Mutoh MT
pCG3 ura4 gene SP 6.7kb Grimn MT
pYS41 GSH synthase gene SP 3.9kb Mutoh MT
9f paravalbumin cDNA rat 0.3kb Berchtold OSM
hpV paravalbumin cDNA human 0.7kb Berchtold OSM
IVS-1 HPRT 1st intron human 2.9kb-pUC9 Caskey OGS
DSX10 HPRT-linked DNA human 1.4kb-pUC9 Kunkel OGS
hAPRT APRT gene human 1.6kb-pUC8 OGS
phARG6 arginase cDNA human 4.0kb-pUC9 Mori OGS
pHPT31 HPRT cDNA human 1.6kb-pUC9 Caskey OGS
rAMPD AMPD-1 cDNA rat 2.4kb-pUC9 Sabina OGS
pmMT-Ⅰ MT-Ⅰ cDNA mouse 1.5kb-pBR322 Palmiter MT
pmMT-Ⅱ MT-Ⅱ cDNA mouse 2.0kb-pBR322 Palmiter MT
pNCAN7 neurocan gene rat 0.9kb Watanabe WTN
pNS N-syndecan rat 1.2kb Watanabe WTN
pHGC1 NGC rat 0.7kb Watanabe WTN
pAMP1 amphoterin rat 0.9kb Keino KIN

4.DNA libraries

Name and definition Size Vector Developer Owner
human spleen cDNA 2.0 kb λgt10 Ohno OGS
human spleen cDNA 0.6-3.3 kb λgt11 Clonetech OGS
S. pombe genomic DNA 20 kb EMBL3 Mutoh MT
S. pombe cDNA 1.5 kb λZAPⅡ Mutoh MT
rat lens cDNA 2.0 kb λgt11 Toyobo MSK
HeLa cell cDNA 0.6-4.0 kb λMax1 Clonetech MT
rat brain cDNA 4.0 kb λgt11 Watanabe WTN

主題:
発達障害研究所年報 第25号 No.4
73頁~102頁

発行者:
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所

発行年月:
1997年09月

文献に関する問い合わせ先:
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
〒480-03 愛知県春日井市神屋町713-8
TEL.0568-88-0811 FAX0568-88-0829