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30年のあゆみ

日本障害者リハビリテーション協会30年、戸山サンライズ10年

NO.7


4 国際障害者年以降の活動(1981年~1993年)

(1) 障害者リハビリテーション振興基金の創設と総裁宮殿下の推戴

 国際障害者年を迎えて、障害者福祉に対する一般の関心は高まっていったが、本協会の国内外における活動も飛躍的な発展を遂げていった。特に「障害者リハビリテーション振興基金」の創設を始めとして、多彩な国際障害者年記念行事を実施するなど、事業を支える体制づくりに努力し、関係機関・団体等の協力を得て、活発な事業活動が展開された。

障害者リハビリテーション振異基金の創設

 1981(昭和56)年の国際障害者年に当たり、天皇陛下には満80歳の誕生日を迎えられ、これを記念されて、障害者福祉事業奨励のために、厚生大臣に御下賜金を賜った。
 このご趣旨を将来にわたって永く伝えるため、「障害者リハビリテーション振興基金」を設け、この基金を造成し、これを活用して障害者リハビリテーション事業の振興、開発、増進を推し進めることとなった。
 この振興基金による主な事業としては、1 障害者リハビリテーションに関する調査、研究、2 障害者リハビリテーションに関する国際交流、3 障害者リハビリテーション事業に従事する職員の研修、4 障害者リハビリテーション思想の啓発及び普及、5 障害者リハビリテーションにおける研究業績に対する顕彰、その他、が大きな柱として計画された。
 また、翌1982(昭和57)年には、皇后陛下が満80歳の誕生日を迎えられたのを記念され、障害者福祉事業奨励のため障害者リハビリテーション振興基金に金一封を賜った。
 さらに、1990(平成2)年には、天皇即位記念として、5千万円の御下賜金が賜与された。振興基金の募金総額は15億円(財界から12億円、一般企業、団体、個人等より3億円)を目標額として、基金造成活動が進められた。募金に当たって、寄付金はいわゆる免税扱いができるように手続きがとられ、委員会を設けてその推進を図るとともに、厚生大臣からは次のような文書が関係先に送られた。

お願いのことば

 天皇陛下には、昭和56年4月29日、満80歳の誕生日を迎えられた際、昭和56年が国際障害者年に当たることを記念され、障害者リハビリテーション事業御奨励のため厚生大臣に金一封を賜りました。まことに感激の極みでございます。
 御下賜金の御趣旨を生かすものとして、障害者の自立と社会復帰の基盤となります、障害者リハビリテーション事業の振興が最もふさわしいと考え、御下賜金を核として各界からの浄財を募り基金を造成することとして、「障害者リハビリテーション振興基金」を設け、財団法人日本障害者リハビリテーション協会にその管理、運営をお願いしているところであります。
 この度、皇后陛下におかれましても、昭和58年3月6日、満80歳の誕生日をお迎えなるに際し、この基金に金一封を賜りました。重ねて御鳳志に新たな感激を覚えるものであります。
 障害者リハビリテーションの振興を図ることにより、天皇陛下・皇后陛下の御高志を永くお伝えしてまいりたいと存じますので、各界の皆様の御賛同と御協力を改めてお願いする次第であります。

  昭和58年3月  

 厚生大臣  林 義郎  

   障害者リハビリテーション振興基金委員会委員
委員長  永野 重雄  日本商工会議所会頭
副委員長 花村 仁八郎 社団法人経済団体連合会副会長
     大宰 博邦  財団法人日本障害者リハビリテーション協会会長
委員   葛西 嘉資  身体障害者福祉審議会会長
     五島 貞次  中央児童福祉審議会委員長
     武見 太郎  社団法人日本医師会会長
     辻  敬一  国民金融公庫総裁
     津山 直一  東京大学教授 日本リハビリテーション医学会会長
     中島 章   順天堂大学教授 身体障害者福祉審議会審査部会長
     堀  秀夫  身体障害者雇用促進協会会長
     三木 安正  東京大学名誉教授 財団法人精神薄弱者福祉連盟理事長
     山田 雄三  中央心身障害者対策協議会会長
     若松 栄一  国立身体障害者リハビリテーションセンター総長
監事   上村 一   社会福祉事業振興会会長
     瀬戸 新太郎 社会福祉法人浴風会理事長
顧問   灘尾 弘吉  日本身体障害者団体連合会会長 全国社会福祉協議会会長


 1993(平成5)年度における障害者リハビリテーション振興基金は、天皇・皇后80歳記念御下賜金による基金が、734,162,604円、天皇陛下即位記念御下賜金による基金が50,700,000円となっている。

総裁宮殿下の推戴

 国際障害者年に当たり、天皇陛下の御下賜金を核として「障害者リハピリテーション振興基金」が創設されたのを機に、常陸宮正仁殿下を本協会の総裁に仰ぐこととなり、1982(昭和57)年4月24日、宮内庁から殿下が総裁に就任することをご承諾いただいた旨通知があって、ここに内外ともに評価される名誉ある法人になった。

(2) 国際障害者年への取り組み

国際障害者年日本推進協議会への協力

 国際連合が、1981(昭和56)年を国際障害者年と決議し、その目的など詳細な動きを伝えたのが、「国際リハビリテーションニュース第31号」(1978〈昭和53〉年3月30日発行)であった。リハビリテーション関係の刊行物としては、これが国際障害者年について紹介したわが国において初めてのものであった。翌1979(昭和54)年8月13日、数人の有志の間で、初めてこの国際障害者年について理解し、活動を展開しようという話し合いが本協会内でもたれ、これを契機として、8月20日「国際障害者年についての有志懇談会」が開かれ、さらに9月に開催された「リハビリテーション交流セミナー’79」に招待された国際連合のコスーネン(Esko Kosunen)国際障害者年事務局長により、国際障害者年の意義、目的、概要、世界各国の取り組みなどが紹介されて、事業関係者に対して関心を喚起したことが大きな推進力となった。
 「有志懇談会」は国際障害者年日本推進委員会と名称を変えて本協会内に置かれ、やがて1980(昭和55)年4月19日に発足した国際障害者年日本推進協議会(Japanese Society for International Year of Disabled Persons)の母体となったのである。日本推進協議会の事務局は本協会に置かれたが、1981(昭和56)年には、本協会が日本船舶振興会の補助金の受け皿となり、1 国民会議の開催、2 国際障害者年「子どもの集い」の開催、3 アジア・リハビリテーション中堅指導者研修の実施、4 国際機器展示会への派遣、障害者海外研修の派遣、5 国際障害者年記念誌の発行、等々の事業を行うのに協力した。

ふれあいの生活広場の開催

 「ふれあいの生活広場(福祉機器展)」は、総理府の委託を受け、障害者年中央記念事業展示会として行ったもので、1981(昭和56)年8月7日から19日まで、東京渋谷のファッションコミュニティ109で、8月20日から25日まで東京町田市のまちだ東急百貨店でそれぞれ開催した。この事業は、「盲導犬ロボット」(通商産業省工業技術院・盲導犬の機能を代行)、「手書き電話」(日本電気・聴覚障害者が独力で自由に筆談できる電話)、「盲人用歩行補助器」(東伸電機・超音波で障害物を検出)、「環境制御装置」(東京都補装具研究所・呼吸気圧により身の回りの機器類を操作)などの最新の福祉機器を含めた障害者の日常生活上の福祉機器を紹介するとともに、盲目のエレクトーン奏者大島彰氏のエレクトーン演奏などがあった。お手玉教室、折り紙教室などの創作教室という楽しい催し物を繰り広げるなどして、障害者や福祉機器の専門家に限らず、数多くの一般市民の方々の参加をつのり、障害者問題をみんなの身近な日常生活の問題として考え、理解、認識を深めてもらうことを目的としたものである。
 延べ19万人という多数の一般市民の方々が来場し、熱心に展示機器担当者に質間するなどの姿が会場全体に見られ、大きな反響を呼んだ。
 そのほか、国際障害者年に当たって実施した事業については別項で記述する。

(3) 国際リハビリテーション交流セミナーの開催

 国際障害者年における記念事業として、1981(昭和56)年10月15日から17日までの3日間、東京池袋のサンシャインシティ、ワールド・インポート・マート及び文化会館を会場に、国際リハビリテーション交流セミナーが開かれた。
 本セミナーは、総理府国際障害者年推進本部、厚生省、文部省、労働省、東京都が後援し、国際障害者年を記念する意味から、次の四つの目的、すなわち、1 わが国の障害者のリハビリテーションに携わる専門職と関係者が一堂に会しそれぞれの分野の現状を確認し、将来への指針を得る、2 国際障害者年を期して、わが国の障害者リハビリテーションの将来を担う人たちの育成を図る機会とする、3 海外の専門家、特にアジア太平洋地域開発途上国に対する指導援助等、国際協力を推進する、4 リハビリテーションの重要性を日本国民及び世界にPRする、を掲げたが、内容としては、リハビリテーション交流セミナー、リハビリテーション工学セミナー、アジア義肢装具セミナーの三つを合併させた形となった。リハビリテーションを支える医学、教育、心理、社会、工学等の諸科学を土台として、障害者を全人的にとらえ、社会的統合を図る上で、国際的な規模で交流セミナーが行われたことは高く評価されたことと思われる。セミナーには世界20か国から48名、国内から600名が参加した。
 開会式には、皇大子殿下並びに同妃殿下が御臨席になり、次のようなお言葉を賜った。


写真  皇太子殿下
開会式で皇太子殿下からお言葉を賜わる

皇太子殿下お言葉

 国際リハビリテーション交流セミナーの開催に当たり、全国各地から参加された皆さん、また世界各国からお招きした皆さんと共に開会式に臨むことを誠にうれしく思います。
 この交流セミナーが昭和52年以来、日本のリハピリテーションの専門家により毎年開催され、回を重ねるごとに内容の充実を見ておりますことは、リハビリテーションに携わる人々の強い参加意欲と日ごろの研鑚によるものでありますが、それと同時に関係者の温かい協力も忘れてはならないと思います。ここに皆さんの努力に対し深く敬意を表するものであります。
 特に本年は国際障害者年であり、これを記念してリハビリテーション工学セミナーも加わり、すべてのリハピリテーション分野を網羅するこのセミナーが、海外から20数名のリハビリテーション専門家の参加を得て開催されますことは誠に意義深いものであります。
 障害者の社会への「完全参加と平等」を目指す上で、リハビリテーションの果たす役割は誠に重要なものがあります。様々な経験を積んだ皆さんがこのセミナーで寄り集いお互いの知識と意見を交換し合うことは、それぞれの地域のリハビリテーション事業に大きな貢献をすることと思います。
 この交流セミナーが所期の成果を収め、身体に障害のある人々の福祉を増進する上に役立つよう切望し、この国際セミナーに寄せる言葉といたします。


 このほか、視覚障害のある著名な演奏家和波孝穂氏によるバイオリン演奏が開会式に花を添えた。
 プログラムは次のとおりである。

第1日(10月15日(木))

開会式 映画会 リハビリテーション機器展
   総会1 完全参加、平等、リハビリテーション
        砂原茂 (国立療養所東京病院)
       障害者の自立生活
        Edward V.Roberts(アメリカ)
        アジア地域におけるリハビリテーションの諸問題
        T.Keokarn(タイ)

第1部会

(リハビリテーション交流セミナー)

障害とは何か
  上田 敏(東京大学)
障害者の生活環境
  T.J.Nugent(アメリカ)

障害者に対する社会の態度と偏見
<司会>
蜂矢英彦(東京都立世田谷リハビリテーションセンター)
小川 孟(国立職業リハビリテーションセンター)
<シンポジスト>
今野敏彦(東海大学)
寺島笑子(石川県精神薄弱者育成会)
L.H.Thompson(国際社会福祉協議会)
谷中輝雄(やどかりの里)

第2部会

(リハビリテーション工学セミナー)

工学のリハビリテーションに対する寄与
 J.B,Reswick(アメリカ)

<司会>舟久保煕康
障害者の移動
H.Roesler(西ドイツ)
中村 雄(元国立身体障害者リハビリテーションセンター)

第3部会

(アジア義肢装具セミナー)

各国のレポート
<司会>
土屋弘吉(横浜市立大学)
M.S.Moon(大韓民国)
<レポーター>
1.Than Toe(ビルマ)
2.Sim-Fook Lam(香港)
3.P.K.Sethi(インド)
4.Surya Wijaya(インドネシア)
5.加倉井周一(日本)
6.Myung Sang Moon(大韓民国)
7.Zaliha Omar(マレーシア)
8.J.M.Pujalte(フィリピン)
9.I-Nan Lien(台湾)
10,Tay Chong Kam(シンガポール)
11.T.Keokarn(タイ)
レセプション

第2日(10月16日(金))

   総会2 リハビリテーション行政における専門家の役割
       <司会>小池文英(日本障害者リハビリテーション協会)
           澤村誠志(兵庫県リハビリテーションセンター)
           Bo Klasson(スウェーデン)
           T.Nugent(アメリカ)
           Sim-Fook Lam(香港)
           今田 拓(宮城県拓杏園)
           河野康徳(厚生省)
映画会 リハビリテーション機器展

第1部会

世界各国における国際障害者年のとりくみ
丸山一郎(総理府)

障害児の統合教育
 L.S.Jorgensen(デンマーク)

障害者の自立生活を保護するもの
<司会>仲村優一(日本社会事業大学)
<シンポジウム>
吉田あこ(日本建築学会)
    近藤秀夫(町田市役所)
見浦康文(東京都立世田谷りハビリテーションセンター)

第1分科会-職業リハビりテーションの諸問題
<司会>調 一興(東京コロニー)

第2分科会-重度・老人障害者の地域リハビリテーション
<司会>二木 立(代々木病院)

第3分科会-障害者の社会教育
<司会>
加藤寛二(東京都立府中養護学校)
三ツ木任一(東京都心身障害者福祉センター)

第4分科会-障害者の自立生活
<司会>仲村優一(日本社会事業大学)

第5分科会-障害者の移動
<司会>野村 歓(日本大学)

第2部会

レクリエーション機器
田中理(神奈川県総合リハビリテーションセンター)
大西昇(労災義肢センター)<司会>土屋弘吉(横浜市立大学)
イギリスにおける福祉機器開発の現状
R.M.Davies(イギリス〕
<司会>加倉井周一(東京都補装具研究所)
リハビリテーション機器の試験と規格
U.Boenik(西ドイツ)
加倉井周一{東京都補装具研究所)
井口信洋(早稲田大学)

第3部会

各国の生活様式にあった義肢装具
<司会>
J.M.Pujalte(フィリピン)
佐藤和男(中央鉄道病院〕
<リ一ドスピー力一>
P.K.Sethi(インド)
    川村次郎(大阪労災病院)
渡辺英夫(佐賀医科大学)
専門職員の教育
<司会>
Sim-Fook Lam(香港)
武智秀夫(岡山大学)
<リードスピーカー>
I-Nam Lien(台湾)
M.S.Moon(大韓民国)
T.C.Kam(シンガポール)
初山泰弘(国立身体障害者リハビリテーションセンター)
A.Staros(アメリカ)

第3日(10月17日(土))

第1部会

リハビリテーション医学の進歩(1)
-日本的生活様式に即した義足-
 澤村誠志(兵庫県リハビリテーションセンター)

リハビリテーション医学の進歩(2)
-バイオフィードバック療法-
 千野直一(慶応大学)
 石田暉(慶応大学)

精神薄弱児・者のリハビリテーション
 武田幸治(おしまコロニー〕

地域社会における重度障害者のリハビリテーション
 C.Aitken(イギリス)

リハビりテーションにおける国際協力
-療育サーピス供給システムの形式をめぐつて-
 高橋彰彦(愛知県心身障害者コロニー)

第2部会

リハビリテーション機器の実用化における問題点
 Bo Klasson(スウェーデン)

リハビリテーション機器の実用化における問題点
 <司会>加藤一郎(早稲田大学)

第3部会

開発途上国における義肢装具サービス
<司会>
Thamrongrat Keokam(タイ)
川村一郎(川村義肢)
<リードスピーカー>
Zeliha Omar(マレーシア)
Surya Wijaya(インドネシア)
Than Toe(ビルマ)
土屋和男(労災義肢センター)

アジア諸国間の義肢装具情報交換の今後
    I-Nan Lien(台湾〕
<司会>Zaliha Omar(マレーシア)
<リードスピーカー>
J.M.Pujalte(フィリピン)
    川村一郎(川村義肢)
Yeung Sik-Lam(香港)
    A.Staros(アメリカ)
映画会 リハビリテーション機器展
   総会3 第1部会   小川 孟(国立職業リハピリテーションセンター)
       第2部会   加藤一郎(早稲田大学)
       第3部会   土屋弘吉(横浜市立大学)
       精神障害者のリハビリテーションー日本と外国の比較
         林 宗義(カナダ)
       リハビリテーション工学開発評価における最近の傾向
         A.Staros(アメリカ)。 
       リハピリテーション行政のあゆみと展望
         板山賢治(厚生省)
閉会式

   国際リハビリテーション交流セミナー運営委員
大会長  太宰 博邦  日本障害者リハビリテーション協会会長
委員長  小池 文英  日本障害者リハビリテーション協会常務理事
委員   板山 賢治  厚生省社会局更生課長
     上田  敏  東京大学医学部講師
     小川  孟  国立職業リハビリテーションセンター職業指導部長
     加倉井周一  東京都補装具研究所長
     加藤 一郎  早稲田大学理工学部教授
     菊池 貞夫  厚生省児童家庭局障害福祉課長
     小島 蓉子  日本女子大学文学部教授
     澤村 誠志  兵庫県リハビリテーションセンター長
     調  一興  東京コロニー常務理事
     初山 泰弘  国立身体障害者リハビリテーションセンター病院診療部長
     舟久保煕康  東京大学工学部教授
     三澤 義一  筑波大学心身障害学系教授
     宗石 文男  日本障害者リハビリテーション協会常務理事
     若林 之矩  労働省職業安定局業務指導課長


 本セミナー開催に当たり、ご助成項いた厚生省、東京都、日本小型自動車振興会、丸紅基金、日本アイ・ビー・エム株式会社には、ここに改めて深い謝意を表したい。

(4)「国連・障害者の10年」での取り組み

 「国連・障害者の10年」の期間、本協会では、特に海外において開かれた国際会議への援助、協力を積極的に推進した。

第7回アジア太平洋リハビリテーション会議への参加

 1983(昭和58)年に開かれた第7回アジア太平洋リハビリテーション会議は、RIの地域会議として、マレーシアのクアラルンプールにおいて4月10日から16日まで開催された国際会議で、「予防とリハビリテーション-社会、そして家族と障害者の役割」をテーマとして、開催国マレーシアを始め、インドネシア、オーストラリア、香港、インドなど30か国から371名が参加した。日本からは50数名の派遣団を編成して参加したが、特に同時通訳を用意して、会議の内容が同時に理解できるよう伝達し、理解を深めるよう努めた。東南アジアにおける日本への期待される役割を果たすためにも、会議への協力と各国からの参加者との交流と友好を深めたことは、大きな成果であったと思われる。


写真  講演する永井昌夫博士
第7回アジア太平洋リハビリテーション会議で講演する永井昌夫博士


 会議は、総会、分科会、専門視察から構成され、12に及ぶテーマ、すなわち、1 聴覚言語障害、2 てんかん、3 医学リハビリテーション、4 整形外科的障害、5 ソーシャルワーク、6 特殊教育、7 視覚障害、8 職業リハビリテーション、9 脳性マヒ、10 ハンセン病、11 薬物依存、12 産業リハビリテーションが、八つの総会、五つの分科会において討議された。

国際障害者レジャー・レクリエーション・スポーツ大会の開催

 国際障害者年の趣旨を生かして、世界各国の障害者の参加の下に、すべての人が一人の人間として、レジャー・レクリエーション・スポーツを通じ、個人の生活の充実と幸福を追求しその可能性を達成することを目的として、1984(昭和59)年4月21日から22日までの2日間、第1回国際障害者レジャー・レクリエーション・スポーツ大会(The 1st International Meeting on Leisure,Recreation and Sports for the Disabled、略称 RESPO-レスポ)が開催された。国際障害者リハビリテーション協会、愛知県身体障害者福祉団体連合会及び本協会の3団体が共催し、厚生省、愛知県、名古屋市、豊橋市、岡崎市、豊田市、蒲郡市、幡豆町、幸田町、愛知県教育委員会、蒲郡市教育委員会、愛知県市長会、愛知県町村会、愛知県社会福祉協議会、蒲郡市社会福祉協議会が後援した。


写真  RESPO参加者
国内外からのRESPO参加者

 国際障害者リハビリテーション協会では、障害者レジャー・レクリエーション・スポーツ委員会の委員長が、日本の太陽の家中村裕理事長であったことから、第1回の大会を是非とも日本で開くよう決議が採択された。これを受けて、おりから建設中であった愛知太陽の家の地元である蒲郡市に打診したところ、是非とも成功させようとの意見が出て、蒲郡市を中心とする愛知県下の市町村で準備が進められ、開催する運びとなったのである。
 「障害をこえてふれあう国と国」を大会のスローガンとして、蒲郡市民体育センターを会場に、常陸宮殿下ならびに同妃殿下をお迎えして開かれた開会式では、殿下よりおことばを賜り、国際障害者リハビリテーション協会ハリー・ファン会長(Dr.the Hon.Harry S.Y.Fang)のあいさっなど、盛大なセレモニーが行われ、多くの多彩な行事が繰り広げられた。また、大会に前後して、4月20日にはシンポジウムとレセプションが、23日には観光とショッピングがそれぞれ行われた。

4月21日
  開会式     蒲郡市民体育センター 1,000名
  潮干狩     蒲郡市竹島海岸      300名
  三河湾周遊   竹島より         450名
  ヨット     幡豆町日産マリーナ東海   50名
  ボウリング   幸田町セントラルボウル  200名
  展示会・映画会 蒲郡市民会館

4月22日
  オリエンテーリング・ウォークラリー  幡豆町愛知こどもの国   200名
  三ヶ根山周遊             三ヶ根山         250名
  バドミントン・インディアカ      蒲郡市中央小学校      50名
  卓球                 蒲郡市中部中学校      50名
  カラオケ・音楽会           蒲郡市民会館        50名
  ダンス                蒲郡市民体育センター   400名
  車いすテニス(デモンストレーション) 蒲郡市民体育センター 1,000名
  展示会・映画会            蒲郡市民会館
  閉会式                蒲郡市民会館
  さよならパーティ           蒲郡競艇場      1,000名


 大会に参加した海外からの参加者は24か国154名で、そのうち障害者は58名であった。国内からは、愛知県下から1,363名、県外より105名、合計1,468名で、障害者は1,200名の多きにのぼり、障害の種別も知的障害も含めてすべての障害にわたっている。この種の大会としては初めてのものであったが、盛会のうちに終了することができたのは、愛知県をはじめ開催地元の蒲郡市を中心とする市町村や、特に障害者団体の活躍によるものだった。
 本大会終了に際して、愛知宣言が採択されたが、スポーツこそパラリンピックを項点として盛んになってきているが、レジャー・レクリエーションを楽しむということはほとんど発展していないようであり、残念なことにこのような大会が以後開催されることなく今日まで至っている。

愛知宣言

 国際障害者年のモットー「完全参加と平等」の下に、第1回国際障害者レジャー・レクリエーション・スポーツ大会が世界各国から多数の参加を得て、1984年4月、日本国愛知県で開催された。
 障害をもつ人々も健常者と同様にレジャー・レクリエーション・スポーツ活動を必要としている。レジャー・レクリエーション・スポーツ施設を障害者も健常者も楽しめるものとすることは、国及び社会の責任である。
 そして、大切なことは、レジャー・レクリエーション・スポーツの計画や施設の推進にあたり、障害者自身が中心になって動くことである。
 障害者のレジャー・レクリエーション・スポーツの国際的活動の今後の発展は、広範な研究と調査、より包括的かつ効果的な経験、情報交換をもとに国連機関、各国政府、関係団体がこの方針をいかに推進していくかにかかっている。
 我々はここに宣言する。リハビリテーション・インターナショナル、レジャー・レクリエーション・スポーツ委員会は、愛知での第1回国際大会の経験にのっとり、誰もがよりよい人生を生きるため、この宣言の理念を現実のものとするよう効果的な活動を期待してやまない。あらゆる所のあらゆる人が、障害者、健常者にかかわらずこの試みに参加することを心から呼びかけたい。

第1回国際障害者レジャー・レクリエーション・スポーツ大会
会長 太宰 博邦


第15回リハビリテーション世界会議への参加

 1984(昭和59)年6月4日から8日までの5日間、ポルトガルのリスボンにおいて、リハビリテーシヨン世界会議が開催された。参加国78か国、参加者2,200名を数えた。この世界会議には、次回の世界会議が日本で開催することが決まっているだけに、日本から60名をこえる参加者があり、日本での会議開催準備のための調査も行われ、日本を紹介するPRなども行われた。
 「障害者と社会の統含達成のための情報・認識・理解」を会議のテーマとして、開会式、総会、分科会、ディスカッション・グループによる特別ミーティング、聴衆参加によるパネル・ディスカッション、特別部会、常任委員会によるワークショップ、閉会式などが行われた。
  この世界会議において、国際リハビリテーション協会副会長並びにアジア太平洋地域委員長に津山直一氏、また第16回リハビリテーション世界会議会長に太宰博邦氏が、それぞれ選出された。

第8回アジア太平洋リハビリテーション会議への参加

 1986(昭和61)年9月15日から20日まで、インドのボンベイで開催され、わが国からは17名が参加した。会場と宿泊に当てられたオベロイタワーズホテルは32階建てのボンベイでは最高クラスのホテルの一つであっただけに、ある参加者はホテルを一歩出た時の強烈な印象-付きまとう物乞い、歩けぬ人は道路に座って、座れぬ人は歩道に寝ころんで、金銭を乞う姿、至るところに居並ぷ路上生活者、障害者の多いこと、巨大なバラックの群れ、貧困と悲惨が街中にあふれていること、ポリオが全盛でワクチンが行き渡っていないこと、インドのカースト制度のことなどにふれ、インドで見た貧困をさておいて、リハビリテーションを語ることのおこがましさと複雑な気持ちを記述している。


参加記念写真
第8回アジア太平洋リハビリテーション会議参加記念

第6回ISPO世界会議の開催

 1989(平成元)年11月12日から17日まで、第6回ISPO世界会議が、神戸市国際会議場で開催された。ISPO(International Society for Prothetics and Orthotics、国際義肢装具連盟)は、国際協力を通じて、義肢装具やリハビリテーション工学に関する情報交換・教育・研修を行い、義肢装具の技術の向上により障害者のニーズをより一層満たしていくことを目的としている団体で、世界会議には、45か国、国外662名、国内1,097名、計1,759名の参加があった。
 国際的にはISPO本部、国内的にはテクノエイド協会と本協会の共催によるもので、特別講演、10テーマの主題討議、15テーマのパネル討議、12コースの教育研修、関連行事としての展示会の開催などで会議の内容を構成した。


写真  開会式
常陸宮殿下並びに同妃殿下をお迎えした開会式

第9回アジア太平洋リハビリテーション会議への参加

 1990(平成2)年10月26日から30日まで中国北京市で開催された第9回アジア太平洋リハビリテーション会議には世界47か国から457名が参加し、多彩なプログラムが展開された。
 会議は、北京市の人民大会堂で幕を開けた。会議の参加者のほかに、中国の福祉関係者が招待されたせいか、広大な人民大会堂の席は隙間なく埋めつくされた。人民大会堂は、日本でいえば国会議事堂に当たる。ここに開会式をもってきたことは中国の福祉関係者のこの会議にかける並々ならぬ意気込みを感じさせるものであった。
 開会式は、勇ましい行進曲の中、舞台上にRI各国関係者、楊尚昆中国国家主席、李鵬首相ほか関係者が席につき、中国障害者連合会会長・会議の組織委員会代表の鄧撲方が会議の開幕を宣言した。続いて会議のテーマソング「同一地平線」が障害を持った人で組織された合唱団によって歌われた。この歌はカセットテープに収録され、会議参加者の資料袋に入れられていた。
 まず、李鵬首相が中国政府を代表して、会議参加者に歓迎のあいさつをし、「中国政府は障害者問題に重大な関心を示し、政府として取り上げる義務がある。しかし障害者福祉の推進は、それぞれの国の現実的状況と関連すべきであり、各国の経済文化の発展に見合ったものであるべきである」と述べ、さらに障害者問題における国際的な交流と連帯を高めようと訴えた。
 続いて、フェンモア・シートン(Dr.Fenmore R.Seton)RI会長が次のようにあいさつした。「北京でのこの画期的な会議を開催できるのは組織委員会の3年にわたる努力の賜物です。今、組織委員会がどのように素晴らしく、かつ注意深く種を植え付けたかを見ることができます。リハビリテーションに関する医学・社会・教育・職業の各分野についての極めて重要な情報を提供する会議の花が咲こうとしています。それはアジア太平洋地区の障害者に将来大変役立つものとなることを約束します。私たちは偉大な鄧撲方氏の指導下に結集した中国障害者連合会に感謝します。」
 会議では、3会場に分かれて分科会が開かれたが、それぞれのテーマは次のとおりである。

  第1分科会 立法と政策動向における政府の役割
  第2分科会 特殊教育-地域からの報告
  第3分科会 障害の予防とリハビリテーション分野の優先すべき調査報告
  第4分科会 重度障害者の雇用推進における具体的行動
  第5分科会 障害者理解促進のためのマスメディアの利用
  第6分科会 バリアフリーデザインと交通移動問題
  第7分科会 家庭生活を維持するための障害者への援助
  第8分科会 障害者のスポーツ・レクリエーション・文化活動への参加

 以上の分科会では、活発な討議がなされたが、公式用語は中国語と英語であった。また、会議と並行して、RI総会、地域委員会も開かれた。

第17回リハビリテーション世界会議への参加

 1992(平成4)年9月7日から11日までケニアのナイロビ市で開かれた。会議は全体会と同時並行に、福祉機器展、映画祭、野外展示が行われ、本会議終了後に、各種セミナー、委員会が開かれた。日本からも役員を中心に出席した。
 RIの年次総会は9月4日から5日まで同じくナイロビ市のケニアッタ国際会議場で開催されたが、RI規約改正により、常任委員会の委員の任期は、申し出のない限り、さらに4年間、自動延長されることとなったほか、RI会長にジョン・ストット(ニュージーランド)、アジア太平洋地域副会長にピーター・チャン(香港)、同次席副会長はスパリ(インドネシア)の各氏が選出された。アジア太平洋地域リハビリテーション委員会は、同じく9月6日、ケニアッタ国際会議場で行われたが、委員会の副会長に本協会の上田敏が選出されたほか、第10回アジア太平洋地域リハビリテーション会議を、1995(平成7)年9月13日~19日、インドネシアのジャカルタで開くこと、また、期間内に地域の小委員会を開くこと、「アジア太平洋障害者の10年」の推進について、NGOシンポジウム(11/30)を中国の北京で開くことなどを決定した。
 RI専門部会は、世界会議期間中ナイロビで行われ、医学、職業、組織、補助機器・住宅の各部会に日本からそれぞれ出席したほか、社会委員会については、故小島蓉子理事が委員長としてセミナーを開催している。


主題・副題:

30年のあゆみ
日本障害者リハビリテーション協会30年 戸山サンライズ10年

発行者:
財団法人日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
TEL 03-5273-0601 FAX 03-5273-1523

頁数:87頁~99頁

発行年月:平成6年11月30日