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III.基本的な施策の方向


1.地域の社会資源の充実と有効活用
・ 障害者の自立と社会参加を支援する上で、身近な地域における保健福祉サービス等の社会資源の充実が重要であり、今後ともこのための諸施策を進めていくことが必要である。
・ この場合、障害者の需要に的確に対応したサービス種目や施設の整備、福祉機器の開発普及等を図るとともに、在宅で障害者を介護する家族等への支援も充実すぺきである。
・ また、地域の資源としての障害者施設が有する専門機能の有効活用、関係機関の連携、民間事業者の参加の拡大等により、的確かつ効率的なサーピス提供が図られることが必要である。

2.障害保健福祉施策の総合化

・ 障害児、身体障害者、精神薄弱者及ぴ精神障害者に対する施策はこれまで各障害種別ごとに施策の充実が図られてきた。このため、施策の実施体制についても障害種別により相違があるが、障害者が地域の中で生活を送れるようにするためには、身近なところで適切な保健福祉サービスを受けられるようにするという観点からその見直しを行うことが必要である。
・ このためには、都道府県による支援や障害特性に応じた専門性を確保しつつ、障害者が市町村において地域の実情に応じて総合的に調整されたサービスを受けられるような体制づくりが必要である。このため、保健福祉サービスの決定の権限を市町村に揃えるとともに、総合的な相談の実施等、障害の種別を超えた総合的な施策を推進するため、各制度間の施策の整合性を図るべきである。
・ 市町村においてサービスを提供する上で、障害者施設の有する施設設備や専門的な知識、経験等を地域に開放し活用していくことが有用であるが、入所施設の整備については、市町村域、都道府県域の中間に位置し、二次医療圏及ぴ老人保健福祉圏域を参考に、広域市町村圏、福祉事務所等の行政機関の管轄区域等を勘案して設定される複数市町村を含む広域圏域(障害保健福祉圏域)での適正な配置を行い、市町村と施設相亙間の協力関係を構築するとともに、障害者施設に係るサービスはこの圏域内で需要に応えられるようにすることが必要である。
・生涯を通じた各段階において、予防、早期発見、早期療育、治療、リハビリテーション、在宅保健福祉サービス、施設福祉サービス、社会参加促進事業といったサービスが適時、適切に提供される体制の確保が重要である。こ れらと教育施策や雇用施策が相まって、生活・教育・労働の場面で可能な限り早期かつ円滑に障害者の自立と社会参加が図られるようにする必要がある。
・ また、合併症を有する障害者、内部障害者等医学的管理を必要とする障害者が増加傾向にあり、障害と疾病の境界がはっきりしなくなりつつある。このため、保健、医療、福祉の分野の施策の連携強化がますます必要となっており、児童相談所、更生相談所、福祉事務所、障害者施設、精神保健福祉センター、保健所、市町村保健センター、精神病院、一般病院、診療所等の関係諸機関の連携の緊密化も求められている。

3.障害特性に対応する専門性の確保
・ 市町村で総合的なサービスを提供できるようにするとともに、障害種別ごとの特性に対応する施策も充実していくためには、特に、専門的機関による支援体制の強化を図ることが必要である。このため,県域単位で設けられている身体障害者更生相談所、精神薄弱者更正相談所、精神保健福祉センター等を中心に総合的なリハビリテーション体制を整備していくことが必要である。
・また、障害特性に応じた需要を満たすためには、これに対応しうる専門職を関係諸機関に配置するとともに、これら専門職の研修体制の整備を図ることが必要である。

4.障害者の過度・重複化、高齢化への対応
・ 障害の過度・重複化の傾向が見られる中で、重度の身体障害と精神薄弱が重複した障害者、医学的管理を必要とする障害者、強度の行動障害のために処遇が困難な障害者などについて、施設サービス及び在宅サーピスのそれぞれの場面での適切な対応に関して検討する必要がある。
・ また、高齢化の進展の中で、介護を必要とする高齢者が増加しており、これに対しては介護保険制度の創設により対応を図ることとしている。障害者施策においては、「障害者プラン」により介護保険制度による給付と比咬して遜色のないサービスを提供することとしているが、介護保険との関係でサービスの提供方法や費用負担の在り方についても検討が必要である。

5.障害者の権利擁護と参画

・ わが国はこれまで社会構造、生活観等から権利意識を強く持つ社会ではなかったが、今後、地域及び施設においても、障害者の人権の尊重や権利擁護についての啓発を進めることや、権利が侵害され、障害者から申し立てがあった場合等において、迅速かつ適切に対応できる仕組みを整備していくことが必要である。
・ 特に最近、就労あるいは、施設入所している障害者の財産権や人権を侵害する事件が発生しており、障害者の財産管理を支援するシステムの整備や権利擁護に関する相談事業の強化が必要である。
・ また、障害者の権利擁護のための基盤として、意志伝達や情報確保の手段が保障されるようにするため、手話通訳者、要約筆記者の養成・派遣・設置、宇幕放送、解説放送、点字による文書や録音物の作成、情報機器の研究開発・普及等の充実を図っていくことが必要である。
・ 加えて、障害者が家庭生活を築き、子供を養育できるようにする環境整備を図ることも障害者の人権の尊重という観点から重要である。
・ さらに、今後、障害者の当事者活動の強化を支援するとともに、行政施策の決定に当事者の意向が十分に反映されるように、障害者施策推進協議会や関係審議会への障害者等の積極的な参画などを推進していくことも、障害者の権利擁護の推進に寄与するものと考えられる。


主題:
今後の障害者保健福祉施策の在り方について(中間報告)

発行者:
身体障害者福祉審議会
中央児童福祉審議会障害福祉部会
公衆衛生審議会精神保健福祉部会
合同企画分科会

発行年月日:
平成9年12月9日

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