ユーザーの声-点字によるコミュニケーション機器の活用

「新ノーマライゼーション」2019年10月号

富山盲ろう者友の会 会長
九曜弘次郎(くようこうじろう)

私は全盲難聴の盲ろう者である。目は生まれつきまったく見えず、耳は25年ほど前から少しずつ聞こえにくくなり、現在補聴器を使用している。コミュニケーション手段は普段音声だが、言葉をはっきりと聞き取ることができないため点字による通訳を併用している。

私が初めて点字による通訳を受けたのは、2007年、地元の漢点字協会で行われた初心者向けの勉強会に参加することになったのだが、先生や周りの会話が聞き取れなかったので、点字による通訳をお願いすることにした。ケージーエス株式会社から発売されているブレイルメモという点字ディスプレイにはチャット機能がある。このブレイルメモとPCを接続して、パソコンから文字を打ってもらい、それをブレイルメモで読むという形での通訳である。これは点字による通訳なので、仮名でまた点字の規則に沿って入力する必要がある。通常のPC要約筆記のように連携入力や文字の訂正といった機能がないため、通訳者は1人で入力しなければならず、入力できる文字数には限界がある。

また、聴覚障害者向けの全体要約筆記ではIPtalkというソフトが使われているが、これを点字で読むために、静岡福祉大学で開発されている「まあちゃん」というノートテイクソフトで受信し、その画面の点字への変換にはオープンソースのWindows用スクリーンリーダー「NVDA」を使用している。まあちゃんは一般向けに開発されたソフトウェアのため、最初NVDAと点字ディスプレイとの組み合わせではあまり使いやすくはなかったのだが、2015年に静岡で開催された第24回全国盲ろう者大会の席で、知人からまあちゃんの開発に携わっていらっしゃる静岡福祉大学の森直之先生をご紹介いただき、私が実際にまあちゃんを使用している様子を見ていただいたことがきっかけで、点字で読みやすいように改良をしていただいた。まあちゃんはIPtalkやUDトークといった他の情報保障ソフトウェアとの連携機能が備わっているため、UDトークで音声認識したものを点字で読むといったことも可能なので、今後活用していきたいと考えている。

最後に課題と展望であるが、上記で紹介した手法はPCと点字ディスプレイを接続して使用するため、やや機器の設定が難しく、ITに慣れていない初心者には敷居が高いと思われる。最近ではAndroidで動作する点字ディスプレイも開発されているので、点字ディスプレイ単体でこれらの情報保障が受けられたらと考えている。

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