ひと~マイライフ-大人になっても地域で暮らしてゆくために

「新ノーマライゼーション」2019年10月号

川合千那未(かわいちなみ)

小学校から大学まで地域の学校で学び、大学卒業後、1年間の準備期間を経て、2014年から親元を離れ、一人暮らしをしている。現在は、自らの経験を生かして障害のある学生がより良い学生生活を送るための支援をしたいと思い、全国障害学生支援センターでスタッフとして活動する他、東京インクルーシブ教育プロジェクトにもかかわっている。一方で、自立生活を広めるための講演活動や身近な友人を中心に一人暮らしをするためのサポートを行っている。

私は東京都内で自立生活を始めて今年で6年目になります。一人では食事をすることも、着替えをすることも、寝返りをすることも難しいため、1日ほぼ24時間の介助を受けながら生活をしています。

私が今活動していることは、主に障害児者の教育を考えて、障害のない人と共に、すべての人が同じ場で学べるように推進する取り組みをしています。また、それと並行して、障害者が家族や施設から離れて地域で暮らす「自立生活」という生き方を広めて、地域で生活したいと望む障害者のサポートをしています。

なぜ教育と自立生活の両方に携わっているかというと、私自身が経験したことが関係しています。せっかく地域の学校で学んで卒業できたとしても、その後の生活の知恵やサポートがなければ、それまで培った「つながり」が切れてしまう可能性があるからです。

大学卒業後、私は介助者を入れて生活していく方法で地域とつながり、未来を拓いていこうと思いました。

しかし、小学校から大学まで地域の学校で過ごしてきた私は、大事なことをおろそかにしてきたことに気づきました。それは、自分と似たような障害をもつ人と接点を持ってこなかったことです。一人暮らしを始めるまで障害をもつ知人や友人がおらず、学校での困りごとや将来のことをすべて自分や家族、インターネット上の情報だけで考えてきて苦労しました。

一人暮らしをしてみたいと思ったものの、情報だけでは具体的なイメージがわきませんでした。「私にも自立生活ができるかもしれない!」というビジョンを持つことができたのは、障害者団体を訪ねて、話を聞いて実際の生活や制度などについて学んだ後のことでした。

今、過去に戻ることができたら、自分に「もっと積極的に他の障害者と関わった方がいい」とアドバイスしたいところですが、そもそも当時は、障害のある人とつながる機会がなく、自立生活ができることさえ知らなかったのです。学校でも、自分に似た同世代の障害者はいませんでした。

でも、地域の学校で学ぶことができて良かったと思っています。理由はたくさんありますが、その中でも、障害のない同世代と一緒にいることが私自身にとって自然であるという感覚が身についたことは、今の生活をしていく上での大きな要因となっています。

私のように障害があるにもかかわらず、障害者と接する機会がない人は、意外と多いと思います。今までの経験から、教育を受ける大切な時期にいかに障害のある人と障害のない人が分離されているかを思い知り、教育と地域社会の問題は強く結びついていることに気づかされました。そして、障害者の卒業後のビジョンの一つとして、「自立生活」という選択肢があることを一人でも多くの人に知ってほしいと思い、現在の活動に至っています。

自立生活をする上で私が心がけていることは、いろいろな人の意見を聞きつつ、自分の心に素直になることです。このような生活をしていると、楽しいことばかりではなく、時には大変なこともありますが、気持ちに正直にいることで、自分らしい充実した生活ができています。現在でも、介助を受けながら生活している人は決して多くはありませんが、いつか当たり前に、誰もが自立生活できる社会になるように活動を広げていきたいです。

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