地域共生社会の実現に向けて ~支えあいでつながるまちづくり~

「新ノーマライゼーション」2019年11月号

神奈川県藤沢市
福祉健康部長
片山睦彦(かたやまむつひこ)

藤沢市の概況

藤沢市は神奈川県の南部中央に位置し、南には相模湾が広がり、北は相模野台地の緩やかな丘陵が続く、気候温暖で自然環境に恵まれたまちである。

人口は昨年4月に43万人を超えているが、年少人口はすでに減少傾向で、生産年齢人口の増加もあまり期待はできない。一方、市民の生活圏域である13地区は、人口構造やピークを迎える時期、高齢化率などはかなりのバラつきがあり、生活環境も社会資源の状況もかなり異なっている。各地区には行政サービスや地域活動の拠点となる市民センター・公民館があり、そのエリアを中心に地区ごとの特性を活かしつつ、さまざまな主体が地域福祉の推進に取り組んでいる。

「藤沢型地域包括ケア」の取り組み

当市では、高齢者はもとより「誰もが住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるまち」を目指す、「藤沢型地域包括ケアシステム」の構築に取り組んでいる。

その推進体制としては、地域包括ケアシステム推進室を核とした庁内横断的な検討会議と、さまざまな分野の関係者や市民で構成する推進会議を設置しており、「行政と多様な主体との協働による支えあいの地域づくり」を共通基盤としたうえで、6本の重点テーマを設定し、取り組みを進めている(図1)。

図1
図1拡大図・テキスト

以下に「藤沢型」の重点テーマに基づく、代表的な取り組みを紹介したい。

地域に寄り添う包括的な相談支援体制づくり

複雑化する地域生活課題に対応した、包括的な相談支援体制を構築するためには、公的支援におけるソーシャルワーク機能の強化は不可欠との考えにたち、生活困窮者自立支援制度の最大限の活用を図っている。

具体的には、直営による自立相談支援機関「バックアップふじさわ」を設置するとともに、NPO法人等との協働による「子どもの学習・生活支援」「就労準備支援」「家計改善支援」「一時生活支援」を実施し、さらには、市社会福祉協議会への委託により自立相談支援機関の機能拡充(バックアップふじさわ社協)を図っている(図2)。

図2
図2拡大図・テキスト

特に、市社会福祉協議会に配置している地区担当CSW(コミュニティソーシャルワーカー)は、民生委員児童委員をはじめ、地域包括支援センター、障がい相談支援事業所、子育て支援センター、教育関係機関などの支援機関や地域のインフォーマルな活動と連携しながら、経済的な困窮に限定せず住民のさまざまな困りごとに向き合い、寄り添いながら支援を行っている。そして、個別的支援にとどまらず、後述する「地域の縁側」をはじめ、自治会町内会、地区社会福祉協議会、民生委員児童委員協議会、老人クラブ、青少年育成協力会など、多様な地域団体等と協働し、地域の支援に日々汗を流している。

障がい者地域相談支援センターへの改編

障がい福祉分野の相談支援体制では、現在、委託相談支援事業所が6か所あるが、身体、知的、精神等障がい種別ごとを基本に、市域全体をカバーする形となっている。これを「藤沢型」に相応しい形へと、そのあり方について関係機関と議論を重ねてきており、「身近で総合的な相談窓口」と「アウトリーチと地域における連携強化」をコンセプトとした「障がい者地域相談支援センター」に改編する方向となった。

具体的には、発達障がい、高次脳機能障がい、重症心身障がいは現状どおり市域全体の専門的ニーズに対応するほか、市内を4ブロックに分け、障がい種別を問わず、障がい児者全体を対象とする「障がい者地域相談支援センター」をそれぞれ設置することを考えている。そして、このことにより、地域包括支援センターやCSW、民生委員児童委員等の関係機関との連携を深めながら、潜在的なニーズにも地域全体で対応できる体制づくりを目指すものである。

多世代交流の場「地域の縁側」

「藤沢型地域包括ケア」の基盤となる「地域のつながりづくり」を進めるため、誰もが気軽に立ち寄れる多世代交流の場であり、また、まちかどの相談室の機能も有する「地域の縁側」の設置・運営を支援している。

運営形態は、空き店舗活用型、公共施設一部利用型、自宅開放型、企業との連携型などさまざまで、運営主体も地域活動団体、住民グループ、社会福祉法人、NPOなど多種多様である。そして、お元気な高齢者が子どもたちを見守る縁側や、精神障がいのある方が気軽に足を運び、生活介護の利用者が運営に参加する縁側など、「支え手」「受け手」という関係を超えた、地域の居場所となっている(図3)。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で図3はウェブには掲載しておりません。

マルチパートナーシップによるまちづくり

当市では「郷土愛あふれる藤沢」を目指し、多様な主体との連携(マルチパートナーシップ)によるまちづくりを推進している。

具体的には、あらゆる業界の企業や大学等と包括的に、または事業単位で協定を結び、地域の活性化と市民サービスの向上を目指すもので、協定内容は多分野にわたるが、地域福祉の推進や地域包括ケアに関連する内容も多い。取り組みの例としては、店舗の一角を利用した「認知症カフェ」の実施や「地域の縁側」の場所の提供、子育て情報の発信、健康づくりイベントへの協賛など、さまざまな事業に協力をいただいている。

「地域福祉プラザ」を開設

現在、市役所分庁舎(7階建)のリニューアル工事を行っており、その1階と2階では、基本コンセプトを「地域をつなぐ~多様な主体による参加と協働」とする「地域福祉プラザ」の開設に向け準備中である。

主な機能として、ボランティアセンターの機能を拡充した「地域福祉活動センター」には、高齢者・障がい者団体等の活動室、地域で孤立しがちな方の社会参加スペース、キッズスペース、情報配信コーナーなどを設けるほか、バックアップふじさわ社協、あんしんセンター、在宅福祉サービスセンターなど市社会福祉協議会の相談支援機能、さらには、保護司会事務局と更生保護サポートセンター、市老人クラブ連合会事務局、就労継続支援B型事業所による喫茶室なども設置する予定である。

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