行政の動き-つくば市の合理的配慮支援事業に対する補助金交付制度の創設 ~バリアフリーな社会を目指して~

「新ノーマライゼーション」2019年11月号

つくば市保健福祉部障害福祉課

つくば市は茨城県の南西部にあり、市の北部に名山筑波山を擁する田園風景が広がる自然豊かなまちです。一方で、1960年代以降、筑波研究学園都市として整備が進み、さまざまな研究機関や企業が存在する自然と科学が調和したまちです。2019年9月1日現在での常住人口は240,274人で、稲敷郡茎崎町編入時(2002年11月1日常住人口195,272人)と比較すると、1.2倍超となっています。

2018年に合理的配慮支援事業補助金交付制度を開始

2013年6月、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(「障害者差別解消法」)が制定され、2016年4月1日に施行されました。この法律は、障害のある人にとっての社会的障壁を取り除くため、不当な差別的取扱いと合理的配慮の不提供を差別と規定し、行政機関等及び事業者に対して差別の解消に向けた具体的な取り組みを求めています。

法律の施行を受けて、つくば市では障害のある人への職員の対応要領を整備し、研修を行うなどの措置を講じています。このような中で、2017年6月、障害当事者団体から、民間の事業者等が合理的配慮を提供するための環境づくりに対する支援制度を設置する請願が提出されました。これを受け、市では、事業者では努力義務とされる合理的配慮の提供に積極的に取り組んでもらえるように、「つくば市合理的配慮支援事業補助金交付要綱」を設けることとし、2018年5月に施行の運びとなりました。茨城県内では初の試みとなります。

合理的配慮支援事業の概要と実施状況

要綱に定めた支援は、商業者や地域の団体が障害のある人に必要な合理的配慮提供にかかる費用を助成するものであり、具体的には、点字メニューの作成や手すり設置等にかかる費用に対して補助金を交付するものです。補助金の交付対象となるものは、社会的障壁の除去に資するもので、次の3つの区分に分類しています。

補助対象事業の区分 具体例 補助金の額
コミュニケーションツールの作成、作成に必要な物品の購入 点字メニュー、コミュニケーションボード等 上限1万円
物品の購入、物品の設置等に要する費用 筆談ボード、折り畳み式スロープ等 上限5万円
工事の施工 段差解消工事、手すり設置工事等 上限10万円

これらの中から同時に2種類以上の購入費・工事費の助成を受けることが可能ですが、他の補助金等を受ける場合、過去に同一の補助対象事業の区分について補助金を受けた日から3年を経過していない場合は、補助金を受けることができません。また、工事の施工に関しては、改修のみを対象としています。

制度がスタートした2019年度は、2件の事業者に、折りたたみ式スロープの購入と筆談ボードの購入に対して補助金を交付しました。つくば市商工会にもお願いして補助制度のチラシを市内の事業者に周知してもらい、今年度は、申請の相談を数件受け付けているところです。

今後の展開について

つくば市では、市政目標の一つとして「頼れる福祉」を掲げ、各種政策を推進しているところです。この制度を知っていただくことで、合理的配慮の具体的内容や障害のある人のニーズなどの認知度向上につながると考えます。また、実際に制度を利用していただくことで市内の商業施設等で合理的配慮の提供が進み、障害のある人が出かけやすくなるまちづくりにつながるとも考えます。今後はステッカーを作成するなど周知活動を充実させ、制度の利用促進を図りたいと思います。

menu