トピックス-当事者のリカバリーという視点 ―第42回総合リハビリテーション研究大会報告

「新ノーマライゼーション」2019年11月号

第42回総合リハビリテーション研究大会実行委員長
(福島県立医科大学 会津医療センター)
丹羽真一(にわしんいち)

「当事者のリカバリーという視点」とは、障害をもつ当事者がいだく主観的障害を当事者自らが克服して「社会参加」を達成するというリハビリテーションの大切な領域に焦点をあてることを今回の研究大会のテーマにしたいという希望を表すフレーズです。このテーマを掲げ、去る9月13日、14日に郡山市の「ビッグパレットふくしま」にて第42回総合リハビリテーション研究大会を開催しました。

1日目の「障害者をめぐる動向」では、松井亮輔先生(日本障害者リハビリテーション協会副会長)に障害者権利条約の履行・進展状況について国連から求められている締約国報告と日本障害フォーラムによるパラレルレポートをめぐる取り組みについて、藤井克徳先生(日本障害フォーラム副代表)には、この1年間の国内における障害者の動向を障害分野の歴史的節目、最新の障害者数、看過できない事象、主な政策動向についてお話しいただきました。私は今回のテーマを深めたいと思い、基調講演「精神障害のリハビリテーション」で、精神障害とは何を指すのか、精神障害のリカバリーとは何が達成されることか、精神障害のリハビリテーションの現況といったことを話しました。シンポジウム1「被災障害者への生活とこころのケア」では、米村一磨(相馬広域こころのケアセンターなごみ)、渡邊忠義(アイキャン)、大関彰久(福島大学)、関根徳雄(いわせ長寿会)、萩原せつ子(日本てんかん協会宮城県支部)の5氏が、東日本大震災時の障害者、高齢者支援の経験を語り、今後の災害時に向けて課題となることを話されました。その話をまとめ、避難生活における障害者の支援のポイントと生活不活発病予防の意義について大川弥生先生(元国立長寿医療研究センター)が話されました。

夕方のICF研修会では、上田敏先生(日本障害者リハビリテーション協会顧問)と大川先生がICFの意義とICFを用いた目標志向型のリハビリテーションの解説、およびその実際的な進め方について話されました。

2日目のシンポジウム2「障害者のリカバリー」では、藤原美和(頚椎損傷、画家)、大嶺清治(ほっとハウスやすらぎ)、仲川明秀(放課後デイサービス マカセッセ)、土田加奈子(福島県立会津支援学校)、五島勉(県北障害者就業・生活支援センター)の5氏が自身の障害からのリカバリー体験と支援者の立場から経験された当事者のリカバリーの姿を話されました。それらのリカバリー・ストーリーを受けてまとめとして上田敏先生がリハビリテーションにおけるリカバリーの歴史的な意義を話されました。特別講演「知的障害のある子ども・成人におけるスポーツとパーソナル・リカバリー」では、野口和人先生(東北大学)がサッカーを通じて知的障害のある子ども・成人のメンバーが主観的障害を克服して成長される姿を生き生きと話されました。プログラム最後に、来年横浜ラポールにて開催される第43回研究大会について、実行委員長の高岡徹先生(横浜市総合リハビリテーションセンター)からご紹介をいただきました。

研究大会を閉じた後に市民公開講座「障害があっても活躍できるぞ! 松本ハウスがやってくる」を企画しました。Eテレのバリバラなどでも活躍しているお笑いコンビ「松本ハウス」のハウス加賀谷さんは統合失調症の当事者です。お二人に障害と仕事、生活について語っていただきました。実感のこもったお話に、参加者は気づかされたことがたくさんあったと思われます。

今研究大会の実行に当たり、県内各領域の方々に実行委員としてご参加いただきました。また、実行委員および実行委員とともに運営にご尽力いただいた方々に感謝申し上げます。

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