視覚障がいのランナーと並走するガイドランナー 絆・選手と一心同体の信頼関係でゴールを目指す

「新ノーマライゼーション」2019年12月号

日本ブラインドマラソン協会
強化委員長
安田享平(やすだきょうへい)

パラリンピックの陸上競技で実施される視覚障がいのトラック種目には、伴走者といわれるガイドランナーが並走するクラスがある。また、ロード競技のマラソンにおいても同様である。国際ルール上は、障がいの程度に応じて視覚障がいクラスは3つに分かれる。最も重いT11(全盲)クラスは「ガイドランナー必須」、真中のT12(弱視)クラスは「ガイドランナー選択」、最も軽いT13(弱視)クラスは「ガイドランナー不可」となっている。

ガイドランナーと選手をつないでいるテザー(伴走ロープ)は、2018年10月より国際ルールが改訂され、形状や長さなどが厳格に明記された。さらに明記されたテザー以外での国際大会出場は不可となった。

次に、主な国際ルールを、5つにまとめる。

1.選手はガイドランナーより口頭で指示を受けても良い。2.2人は、ガイドランナー交代時を除き、スタートからゴールまで常にテザーでつながっていなくてはならない。3.ガイドランナーは、競技中のいかなる時でも選手を押したり引いたりしてはいけない。4.5000m以上の競技については、途中でガイドランナーを1回交代できる。5.ガイドランナーは、自走によって任務を完了しなくてはいけない(自転車などの使用は不可)。

ガイドランナーは国際ルールに則り、選手に口頭でコースの状況や路面の状態などを逐次伝えながら並走する。同時に、選手の通過タイムや順位を伝えることはもちろん、走行中はガイドランナーの目に入ってくる情報を選手に実況中継するように伝える。安心して走ることに集中するには、選手とガイドランナーの信頼関係構築が何よりも重要となる。その信頼関係は、走行中だけでなく、日々のトレーニングや遠征時の日常生活サポートなどにもおよび、選手とガイドランナーは、まさに一心同体となる。

T11クラス男子マラソンの日本記録は、2時間32分と、一般選手の準エリートと呼ばれるハイレベルなゾーンに到達している。並走するガイドランナーの記録はそれ以上を要求される。ハーフマラソンなら1時間6分以内、マラソンなら2時間19分以内の走力を有する2名のガイドランナーによるサポートがひとつの目安となっている。

東京パラリンピックでは、テザーでつながった2人が都内をさっそうと駆け抜ける。テザーを通じて心と体がシンクロしたその雄姿は、多くの方に勇気と感動を与えるに違いない。

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