ボッチャBC3クラスのスポーツアシスタント 選手とアシスタントが感覚を一つにして臨む

「新ノーマライゼーション」2019年12月号

日本ボッチャ協会
強化指導部長
村上光輝(むらかみみつてる)

ボッチャ競技は、BC1~4の4クラスに分かれている。ここで紹介するBC3クラスは、ボッチャ競技の中で障がいの状態が最も重度なクラスであり、手や脚を使って投球することができないため、ランプという投球補助用具の使用と、ランプを操作するスポーツアシスタントの参加が認められるクラスである。BC3スポーツアシスタントは競技に参加することから、他のパラリンピック競技と同様にメダルを獲得することもでき、選手にとって重要な役割を担う。しかし、パラリンピックにおいてメダルを獲得できる、他の競技のガイドの役割とBC3スポーツアシスタントの役割は少し異なり、選手の指示を的確に遂行することが最も重要となる。選手はコートを見てボールを押し出す投球動作を行う。その投球動作の準備として、投球する方向にランプを動かし、複数種類あるボールを選択し、投球距離に合わせた場所にボールをセットする。すべて選手の指示どおり行うのである。言葉で示すと簡単に感じるが、投球時間制限がある中、選手と30kgほどあるランプ、そしてアシスタントが1m×2.5mのスペースの中で競技にすることは難しい。また、アシスタントはコート内を見ることはできず、選手の指示のみを頼りに競技するのである。

ボッチャ競技はボールを使ってフロアで行う競技であり、フロアの材質やその日の温度、湿度によってもボールの転がりが変わる繊細なスポーツである。さらに、ランプを使用するBC3クラスは、ボッチャの中でも繊細さを求められるクラスである。選手とアシスタントとの協力体制は、技術、戦術よりも感覚を一つにすることが重要になる。“少し”の感覚。選手が「もう少し右」と指示した時、選手の“少し”とアシスタントの“少し”が一緒でなければ正確な投球ができない。感覚を一つにすることは、普段の生活から得ることも多い。遠征では同室になることが多く、宿泊先のベッドマットの柔らかさ、掛け布団の重さであっても、重い、軽い、の感覚が一緒になっていくことを求められる存在である。競技だけではない選手とアシスタントの過ごした時間と、その協力体制が投球に込められている。

私は指導者として、小学生から企業研修まで、パラリンピック競技の視点から特別授業や研修会を依頼されることが多くある。「パラリンピックはどのような大会?」と質問すると「障がい者が参加する大会」と回答がある。ボッチャBC3スポーツアシスタントの話をすると、どのような方が参加しているのかなどの質疑があり、ボッチャ競技やパラリンピックに興味をもってもらえることが多い。現在は選手の発信からスポーツアシスタントとなるケースが多いが、今日のパラリンピックムーブメントにより、ボッチャBC3スポーツアシスタントを知ったことをきっかけに、ボッチャ競技に取り組む方がたくさん増えていくことを期待して、東京2020パラリンピックに参加したいと思う。

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