千葉県の台風による停電被害と視覚障害者情報提供施設での対応~台風15号の被害聞き取り調査から思うこと~

「新ノーマライゼーション」2020年1月号

視覚障害者総合支援センターちば 所長
川崎弘(かわさきひろし)

台風15号、19号、10月25日の大雨で被害を受けられた皆様に謹んでお見舞い申し上げます。

2019年9月9日(月)午前5時前に千葉市付近に上陸した台風15号は、当初、私たちが予想できなかった大きな爪痕を残し、いまだに(2020年1月16日時点)その被害の全貌が把握できていないという状況です。10月12日(土)の台風19号や10月25日(金)の台風21号による大雨被害とは大きく異なる被害をもたらしました(表1参照)。

表1 被害報告数の比較(上段:発生1週間後、下段:2020年1月16日時点)

  死者(人) 全壊 半壊 一部損壊 床上浸水 床下浸水
台風15号 0
関連死2
3
374
5
3,980
2,779
66,273
20
35
24
57
台風19号 1
1
9
14
25
76
736
2,219
16
25
53
69
台風21号
大雨被害
10
11
10
22
5
1,657
25
1,719
1,318
422
1,104
804

(出典:千葉県防災ポータルサイトによる被害報告)

台風襲来当日、「人的被害なし」という情報に安心させられました。停電は60万2,300戸もありましたが、東電は11日までにすべて復旧させるとの見解を発表しました。

9月10日(火)、被災した利用者や職員から情報が入り始めました。県からの被害状況最終報(第6報)で、前日の内容と違いがないことに違和感を覚え、11日(水)午前より利用者への聞き取りを開始しましたが、停電のため電話がつながらない地域が多いことにあぜんとしました(表2参照)。

表2 聞き取り結果(再調査含む)対象者 停電が長引いている方215名

質問内容 回答
1.避難勧告等の情報は伝わったか 伝わった(72) 伝わらなかった(49)  
2.避難したか 避難した(3) 避難できなかった(2) 避難しなかった(103)
3.ライフラインの被害 停電(49) 断水(15) ガス不通(1)

利用者への聞き取り調査をした結果、情報が伝わらなかった理由として、「防災無線が聞き取れなかった」が多数でした。避難先は避難所ではなく「親類、知人宅」でした。その他の被害状況は、「屋根や瓦の被害」が多く25件。その他には、「家屋の被害はなかったが、停電が長引いたことで冷蔵庫の中のものが無駄になった」「携帯がつながらず外部と連絡が取れなかった」という訴えがありました。

当施設は、情報提供施設として情報を提供する立場にありながら、今回は千葉県や東電の情報に振り回されました。県南部12市町から被害情報が入らないままの数字で、1週間近くポータルサイトで被害まとめ速報として発信し続けた県の感覚がどうしても理解できませんでした。(当然、被害報告数は少なくなります。表1参照)

14日(土)以降、多くの地域で停電の解消とともに利用者とも電話連絡がとれるようになりました。自主的に親類や知人宅へ避難した方への連絡は、連絡先として携帯番号の登録をしていない方が多かったために連絡の取りようがありませんでした。今後は、携帯番号の登録は必須であると強く感じました。

その後の10月25日の大雨被害で犠牲者が出た多くの地域は、土砂災害避難の対象外の地域でした。また、ハザードマップが10年以上更新されていない地域があることも明らかになりました。

今回の経験を通して、日ごろから災害への備えをすることの大切さや多すぎる情報の中から利用者に最小限の必要な情報を提供することの大切さも痛感しました。

各市町村では、避難行動要支援者名簿に情報提供をしている方へは優先的に安否確認等支援を行うとのことです。情報提供をされていない方が多いということですので、まだの方に「ご自身の存在を知ってもらうところからの災害対策も必要です」という情報提供もしていきたいと思います。

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