行政の動き-豊中版ジョブライフサポーター養成講座の取り組み~障害者の雇用(労務)管理は多様な人材の雇用(労務)管理につながる~

「新ノーマライゼーション」2020年1月号

とよなか障害者就業・生活支援センター

第1回の「豊中版ジョブライフサポーター養成講座」(以下、養成講座)を開催したのは、2008年3月のことです。当時、大阪府では福祉施設・事業所内で障害者の就労支援を行う人材を育成し、就労移行を行う取り組みとして、「ジョブライフサポーター登録派遣事業」が行われていました。この取り組みを参考に、私ども特定非営利活動法人豊中市障害者就労雇用支援センターと豊中市の労働部局が協働し、企画したものでした。

このような取り組みを行う理由として、就労支援を行う側から見ると企業の障害者就労についての理解が十分でなく、また企業と支援者がコミュニケーションをとれる機会が少ないことがありました。その頃の企業と就労支援側の障害者雇用を通したコミュニケーションは、主に企業の社会的責任に訴えかけるものが多く、一方的なものになりがちでした。そのため、就業を希望する当事者を中心に、企業と就労支援機関の相互理解が進むことが望ましいと考えました。

本講座の特徴は、受講対象を企業の担当者としていることです。障害者の雇用(労務)管理は多様な人材の雇用(労務)管理につながり、企業の中でサポーターという理解者、応援者、支援者を養成することで、障害者だけでなく多様な労働人材を活用できる職場になるという視点が大切であると考えています。

第1回の養成講座は、プログラム内容と実施までのノウハウを構築することを目標に5日間、主に支援機関を対象にして実施しました。2回目以降は企業の担当者を中心に支援機関の方もアドバイザー参加をしていただいています。

講座の企画及び運営は豊中市の労働部局と協働して行い、以降、豊中市や大阪府等の財源を活用して行ってきています。2018年度からは豊中市の委託事業として、当法人が受託し、とよなか障害者就業・生活支援センターが中心となって実施しています。

プログラムについては試行錯誤を繰り返し、2013年からは受講者同士のコミュニケーションと講座の時間を見直し、現在は2日間で、最後のプログラムではグループディスカッションで障害者雇用を通した意見交換を行っています。その他、障害特性についての理解や制度、関係法令の理解の講座、企業見学を通して実際に障害のある方が働く現場の見学を行っています。

また、事例発表として障害者雇用を行っている複数の企業の担当者を講師に招き、雇用までのプロセスや環境整備、成功事例や失敗談を話してもらうことで、障害者雇用に対するイメージをより具体的に受講者に考えてもらえるように努めています。12年間続いていることで、受講した企業担当者が講座で学んだことをベースに障害者雇用を行い、数年後に講師として事例報告を行うなど、当初は想定していなかった好循環も生まれています。

昨今、障害者雇用を取り巻く環境も変化してきています。障害者総合支援法(旧障害者自立支援法)の施行により、就労系の障害福祉サービス事業所に民間企業が参入し、事業所数が急増しました。法定雇用率の引き上げや算定基礎の対象に精神障害者を加えることにより、障害者雇用は中小企業にとっても身近なものになっているという状況があります。そうした情勢の中で、「豊中版ジョブライフサポーター養成講座」を通し、障害の理解、就業環境の整備が進み、企業と就労支援側の双方の障害者雇用に対するモチベーションが高まることで、障害者雇用を実現させる企業が一社でも増えることを期待しています。

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