「パラアート」を世界へ

「新ノーマライゼーション」2020年2月号

公益財団法人日本チャリティ協会
パラアートプロデューサー&ディレクター
瀬川乙女(せがわおとめ)

日本チャリティ協会(以下、当協会)は、1966年の設立以来55年間にわたり、福祉文化の育成振興を理念として多彩な事業を展開し、それを通じて、障がいのある人や高齢者が健康で生き甲斐をもって積極的に社会参加をする暮らしづくりを推進してきました。

その中で最も力を注いできた事業がパラアート(障がい者アート)です。

その中心的な存在であるパラアートスクールは障害のある人々の才能や個性を見いだし、育成し社会へ送り出すこと、文化芸術活動へ積極的な参加、生活の質の向上を目的に日本で初めての障害のある人のためのスクールとして設立し、今年で35年になります。

また、1986年から東京都と共催で実施している「東京都障害者総合美術展」は、作品の審査、展示、発表の機会を通じて、障害のある人がもつ芸術文化的能力を広く社会に披露するとともに、障害のない人との交流など社会参加の促進を目的に、初回より高円宮家より熱い激励をいただいて開催しており、パラアートスクールとともに障害者美術活動の原点ともいえるでしょう。

こうした事業を推進するにあたり、「障害者」という表現に代わる良い言葉はないかと常に考慮してきました。

2008年に厚生労働省と文部科学省の共同提案で、「障がい者アート推進のための懇談会」が催されましたが、ここでも有識者の皆さんが「障害」という言葉を避けながら会が進められました。これを機に、当協会では新たな名称を発案する必要性を痛感し、翌年オリンピック招致活動に協力して開催した「2009アジア・パラアートTOKYO」のシンポジウムにて、各国有識者の方々の賛同を得て「パラアート」を障害者アートの呼称として使うようにいたしました。

「パラアート」とは、障害者芸術を障害区分、技法、表現(障害特性)にとらわれることなく障害のある人の幅広い活動とその作品を包括した呼称です。

こうした流れの中で、国際「パラアート」事業を一過性のものとせずに、2013、2016、2017、2018、2019年と障害者アートの国際的な認識を強化するために継続し、また、全国各地において大小様々の美術展を開催してきました。そして、この場から羽ばたいていった数多くの才能豊かなアーティストたちが、世界の舞台で活躍されていることを大変うれしく心強く思っております。

また、「パラアート工房展」は、パラアート事業の一環として取り組んでいる日常商品の試作品の展示会です。愛用される商品として販売されることにより、障害のある人の就労促進の一助になることを願い、優れた作品による商品開発、流通開拓の試みとして展開しています。

このように、パラアートは文化と福祉と生活の融合で結ばれた芸術ともいえるでしょう。今、障害のある人たちの芸術文化活動は、国際的に注目されつつありますが、活動の支援は未だ不十分であり、福祉、文化、経済産業、それぞれの観点からの発信支援や活動環境を整えるサスティナブルサポート(持続可能な支援)により一層の進化を遂げます。

芸術は、国境も人種も障害も越えて、豊かな感情や多彩なテーマを伝えることのできる人類共通の表現方法です。

2020年東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。この好機に当協会では、「障害者のスポーツ」とともに「障害者の文化」の重要性を「パラアート」という呼称の国際的周知ともに、障害者アートの国際的な拡大を図りパラアート国際交流展を開催いたします。

どうぞ皆様におかれましても「パラアート」にご賛同いただき、「2020パラアートTOKYO国際交流展」の成功をご支援くださいますよう、お願い申し上げます。

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