行政の動き-電話リレーサービスに係るワーキンググループの報告概要

「新ノーマライゼーション」2020年3月号

総務省総合通信基盤局電気通信事業部事業政策課 課長補佐
長谷川準也(はせがわじゅんや)

1.経緯

電話リレーサービスは、耳の聴こえない人と耳の聴こえる人とを、オペレーターが「手話」や「文字」と「音声」とを通訳することにより、即時双方向につなぐサービスです。わが国では、平成25年から日本財団が電話リレーサービス・モデルプロジェクトを開始し、平成29年から厚生労働省が電話リレーサービスを実施する情報提供施設に対して財政的支援を行っています(図参照)。

電話リレーサービスの概要拡大図・テキスト

こうした中、総務省及び厚生労働省においては、平成31年1月に、デジタル活用共生社会実現会議ICTアクセシビリティ確保部会の下に電話リレーサービスに係るワーキンググループ(主査:酒井善則 東京工業大学名誉教授・津田塾大学客員教授)を設置し、当事者の意見等を踏まえながら、専門的に検討し、令和元年12月に、公共インフラとしての電話リレーサービスの実現に向けた基本的な方向性について報告書を公表しました。

2.報告書概要

(1)基本的な考え方

  • 安定的・継続的な提供(持続可能な「ヒト・モノ・カネ」を確保できる実施体制)
  • 適正性かつ効率性(適正なサービスを、効率よく実現)
  • 実現可能性(技術、スケジュール、費用、国民理解などのバランス)

などに配慮し、電話(携帯電話を含む。)の利用環境と同等の利用環境を整備することを目指し、可能なものを段階的に導入することを基本的な考え方として検討を行いました。

(2)公共インフラとしての電話リレーサービスの内容

1.サービス内容:通訳方式は手話と文字の両方とし、提供時間は24時間365日を目指す。/音声通話(固定電話、携帯電話)の利用料金と同程度の従量制の料金体系とする。/利用者の範囲を限定せず、通話の双方向化を目指す。

2.財源:安定的・継続的な財源が不可欠であることから、費用負担については、「ユニバーサルサービス交付金制度による負担金」「電気通信事業者による負担」「音声サービスの利用者による負担(ユニバーサルサービス交付金制度と類似制度)」などが考えられる。

3.緊急時の利用:可能なものを段階的に導入することとし、当初は他のサービスも活用することなどにより取り組み、改善を重ねて、最終的には可能な限り電話による緊急通報と同等の利用環境を整備することを目指す。

4.技術開発:音声認識技術やAIなどの最新技術を活用した耳の聴こえない人と耳の聴こえる人との間の遠隔コミュニケーションについて、電話リレーサービスの実現を前提として、音声認識等の技術開発は「車の両輪」として、並行して進める。

5.オペレーターの養成・確保:利用実態に応じた電話リレーサービスの提供に必要な通訳者の確保のため、通訳者の養成や質の向上に関する取組を進める。

(参考)電話リレーサービスに係るワーキンググループ 報告(総務省ホームページ)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000658394.pdf

3.今後の取組

総務省では、電話リレーサービスに係るワーキンググループの報告を踏まえ、令和2年2月に、聴覚障害者等による電話の利用の円滑化を図ることを目的として、1.国による基本方針の策定等、2.電話リレーサービスに関する交付金制度の創設などを内容とする「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律案」を第201回通常国会に提出しました。

今後、公共インフラとしての電話リレーサービスの実施に向けて、総務省と厚生労働省で連携し、令和3年度中の開始を目指して取組を進めていくこととしております。

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