行政の動き-電話リレーサービス制度化への期待

「新ノーマライゼーション」2020年3月号

一般財団法人全日本ろうあ連盟 副理事長
小中栄一(こなかえいいち)

全日本ろうあ連盟は、2013年11月「情報アクセシビリティ・フォーラム」を開催したことを契機に、電話リレーサービスの制度化に向けた運動を始めました。電話リレーサービス・モデルプロジェクトを進めた日本財団とともに、制度化への検討や啓発への学習会などに取り組んできた成果として、総務省と厚生労働省の共催によるワーキンググループ報告がまとめられ、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律案」が国会に上程されたことをうれしく思います。

現時点では不明な点が多いのですが、システムと運営の構築にあたって、障害当事者団体、オペレーターに関わる団体が参画し、当事者としての意見を反映できるようにすることが、質の良い制度のために必要と考えます。

音声言語と手話言語という2つの異なる言語、背景となる障害特性や文化の理解、通訳技術に習熟してメッセージをきちんと伝える手話オペレーターの養成と確保は、手話言語の普及と手話言語通訳者養成・認定、専門各分野での研修等、制度全体において整理していくことが大切と考えています。電話リレーサービスは、オペレーターを担当する人が生命線であり、専門性をもって健康で働ける環境を整備しなければなりません。

そして、これまで電話利用の経験が乏しいろう者が電話リレーサービスを積極的に活用していくための学習、聞こえる側が制度として理解して受けてもらえるようにする取り組みが欠かせません。

通信環境は大きく変わってきました。いよいよ、国民の誰に対しても必要な電話をいつでも、すぐにかけることができるようになります。生活を豊かにするだけでなく、緊急の場合の連絡は命にも関わります。就労分野でもより積極的に社会進出を果たすことができるでしょう。そして聞こえる人からの電話も受けられることで、私たち聴覚障害者の暮らしがどう変わっていくのか、不安と期待が交錯します。当事者として一歩一歩進めていきたいと思います。

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