行政の動き-電話リレーサービス、いよいよ制度化へ!

「新ノーマライゼーション」2020年3月号

日本財団公益事業部 部長
石井靖乃(いしいやすのぶ)

今年2月、交付金制度の創設などが盛り込まれた「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律案」が国会に提出され、今国会で成立する見通しです。その結果、2021年4月から電話リレーサービスが国による公的制度のもと、安定的、継続的に提供されることになります。

日本財団が電話リレーサービスに取り組むことになったきっかけは、2011年3月の東日本大震災でした。同年9月から2年間にわたり被災者支援事業として行った聴覚障害者向け遠隔情報コミュニケーション支援の中で、最もニーズの高かったサービスが電話リレーサービスだったのです。海外ではすでに25か国で公的なサービスとして提供されている電話リレーサービスに対し、日本にも大きなニーズがあることが証明されました。災害からの復興は震災発生前の状態に戻すだけではなく、以前よりもさらに柔軟で強靭な社会になることが求められます。電話リレーサービスを日本全国で継続的、安定的に使えるようにすることは、震災を経験した日本社会が取り組まなければならなかった課題だったといえます。

また、そもそも電話という極めて重要な通信インフラは誰もが使えるべきなのですが、残念ながら日本では聴覚障害者や発話困難者が利用できる環境は整っていませんでした。電車やバスなどの交通インフラのバリアフリー化が進む中、取り残されてきた分野であったといえます。電話は通信の課題でもあり、手話通訳も関係する福祉的な課題でもあることから担当省庁が明確でなかったこと、また、利用した経験がなく「今まで何とか暮らしてきたから……」という当事者の認識もあって強い要請活動もなく、手付かずの状態が続いてきたのだと考えられます。

メールやチャットなど情報コミュニケーションの方法は多様化しており、電話の利用機会は減少傾向にあるといわれています。しかし、電話でなければならない場面もまだまだ多くあることは間違いありません。

制度化により「誰もが平等に電話を使うことができる社会」に一歩近づきます。本当にうれしく思うとともに、聞こえる聞こえないにかかわらず、電話リレーサービスをもっと多くの人に知ってもらい、使ってもらいたいと願っています。

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