ひと~マイライフ-可能性は、無限大

「新ノーマライゼーション」2020年3月号

加賀明音(かがあかね)

1997年愛知県生まれ。全盲、全ろう、車いす使用。盲学校高等部を卒業後、リハビリテーションセンターへ。現在は、盲ろう者を対象にしたグループホームで生活し、日中は、週5回、就労継続支援B型作業所に通っている。平成30年度の点字技能師試験に合格。趣味は読書。

人との出会いで、人生は、大きく変わります。全盲ろうになって3年、いろいろなことがありました。よく泣きよく笑い、よく怒ります。今この時間を、精いっぱい楽しんでいます。

現在の生活

私は、2年前からグループホームで生活しています。また、週5回作業所に通っています。作業所での活動は、牛乳パックを細長く裁断して作った紙細工の小物入れやティッシュケースなどの自主製品の製作や内職が中心です。バザーに参加し、自主製品の販売もしています。

盲学校高等部卒業後に行ったリハビリテーションセンターの職員や盲ろうの先輩、支援者からたくさんのことを教えていただくことができ、私の世界は大きく広がりました。

コミュニケーションをとるために、指点字、指文字、手書き文字(カタカナ)、手話などの方法を練習し、多くの人と直接話ができるようになりました。また、パソコンに点字ディスプレイをつないで、インターネットを検索し、独力で情報を集められるようにもなりました。SNSも始めました。

外出先でもメールのやりとりができるようになりました。一人で電車に乗るときにも安心です。

3年という時間は、長くも短くもありました。車いすも使用するようになり、自力でできることがどんどん減っていくことに、不安な気持ちになることもあります。いくつもの障害からくる困難や状況の複雑さがあり、周囲の人に説明しても理解をえられないこともよくあります。それでも、挑戦を続けたいという気持ちが消えないのは、成功体験があるからです。

点字技能検定試験に挑戦

きっかけは、新聞記事でした。盲ろう者も受験できる試験があるなんて、思ってもみませんでした。

聞こえなくなってすぐのことで、これからどうしたらいいのだろうという不安がとても強い時期でした。もうぎりぎりの状態のとき、それなのに、ちょっとやってみたい、と思えたのです。新しい知識を学ぶことと、知識を深めることには常に強い関心があります。そのことが動機につながったのでしょう。全盲ろうになってから初めて、少し前向きな考えを持つことができました。

努力は、裏切りません。合格の知らせを聞いたとき、なぜだかまず気持ちが軽くなり、そしてうれしい気持ちになりました。目標が達成できたことで私にもできるという、自信をつけることができたのです。

将来の夢

「ちょっとそれは難しいんじゃないかな…」なんて明確な理由もなく否定されると、「絶対やってやる!」とむきになる私です。だからこれからも、前へ前へと進んでいきます。

将来は一人暮らしをしたいと考えています。ヘルパーの力を借りて、あるがままの自分でいられる、そんな生活がしたいです。もっとたくさんの知識や技術を身につけるために大学で学ぶこと、就職することなど、やりたいことはたくさんあります。どれも簡単なことではなさそうで、だからこそ、やってみたいのです。

盲ろうになってもできることがたくさんあります。見えなくて聞こえない盲ろう者が、自分の力で知ることのできる情報は本当に限られています。私は、全盲ろうになってすぐに、人や環境に恵まれ、支援を受けることができました。だから、今こうして文章を書くことができているのです。世界には、いえ、日本にも、サポートを受けられていないたくさんの盲ろう者がいます。だれにでも、可能性があります。そのことをたくさんの人に伝えたいと、考えています。

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