海外への支援活動-一般財団法人全日本ろうあ連盟の国際活動の取り組みについて

「新ノーマライゼーション」2020年4月号

一般財団法人全日本ろうあ連盟 理事 アジアろう児・者友好プロジェクト 委員
世界ろう連盟アジア地域事務局
嶋本恭規(しまもとやすのり)

一般財団法人全日本ろうあ連盟(以下、連盟)の4つの国際活動(アジアろう児・者友好プロジェクト、アジア地域事務局活動、アジアろう女性調査、災害救援活動)を紹介したいと思います。

アジアろう児・者友好プロジェクト

連盟は、1996年に創立50周年を記念し、旧・アジアろう者友好基金をスタートしました(2013年、一般財団法人への移行により「アジアろう児・者友好プロジェクト」に名称変更しました)。

目的は、アジアのろう者の実情に学び、支援を通して連携を深めることです。1996年の設立以来、多くの方々の善意に支えられ、アジア各地で支援活動を行ってきました。

2008年5月には「障害者の権利に関する条約」(障害者権利条約)が発効されるなど、世界的には障害者の権利を求める運動が成果を挙げつつありますが、アジアでは障害者の「完全参加と平等」の実現にはほど遠い国が多いです。

ネパール・ポカラにおいては、ガンダキろう学校がありますが家から遠方であることや家の手伝いや畑仕事などの働き手がほしいことから寄宿舎は難しい、また電車やバスなどのインフラも発達しておらず、学校へ通学ができない子どもたちがたくさんいました。そこで連盟に安全かつ安心で早く通学できる通学用バスがほしいと要請がありました。

通学バスを支援した後、現地に近いところでアジア地域代表者会議を開催する機会があったので連盟理事長をはじめ、数名のメンバーでガンダキろう学校へ視察に行きました。

通学バスには連盟のロゴマークが描かれており、乗車もしました。ポカラ地区の道路事情はお世辞にも良いとはいえず、怖い思いもしましたが、バスに乗っていると安心感が違いました。

通学バスを使って通学する子どもたちに話を聞くと「学校へ行ける!将来の夢が開けてきた!」「親もこれなら学校へ行ってもいいと言ってもらえた」「頑張って勉強して000になるのが目標」と目を輝かせながら話をする子どもたちの声をたくさん聞くことができました。現在も元気に通学バスは走っています。

連盟では、国内外において、1口3,000円の友の会会員加入と集まったカンパをもとに、アジア地域のろう者の支援を行ってきました。主に奨学金やろう学校の校舎増築など、教育面におけるろう児支援も行っています。

アジア地域事務局活動

世界ろう連盟の組織として8つの地域事務局があり、その1つとしてアジア地域事務局があります。1984年に世界ろう連盟からの要請により連盟にアジア太平洋地域事務局の事務所を構えました(全日本ろうあ連盟は1959年に世界ろう連盟に加盟)。その後、アジア太平洋地域内において持ち回りで世界ろう連盟アジア太平洋地域事務局代表者会議を開催し、アジア太平洋地域のろう団体の強い信頼関係を築いてきました(2008年にアジア太平洋事務局から太平洋地域が分離独立し、「オセアニア地域事務局」を設置し、それぞれ活動していくことになりました)。

現在は日本を含め、17か国がアジア地域事務局に加盟しています。しかしアジア地域には約54か国あり、どの国にもろう者コミュニティはあるのですが、さまざまな背景により団体設立や運営などが確立できていない等、まだまだ加盟増加につながっていません。

これまで31年間、連盟がアジア地域事務局を支えてきました。2015年からはマカオろう協会がアジア地域事務局を担うことになりましたが、当面、連盟がフォローをし、さらにアジア地域における結団力を深めています。

また、アジア地域事務局の役割として、世界ろう連盟が国際連合(UN)の諮問機関となったことに関連して、タイ・バンコクにある国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)関連の会議に出席し、アジア地域のろう者を代表して、発言・発信をしてきました。

世界ろう連盟は1983年国連総会で採択された、障害者の機会均等化に関する基準規則の文面作成に積極的に加わり、1994年に特別支援教育(アクセスと特性)における世界会議での「サラマンカ宣言」や「特別支援教育における行動の枠組み」の策定過程にも関わりました。

また、国際障害者同盟(IDA)とともに「障害者の権利および尊厳を保護、促進するための包括的かつ総合的な国際条約」の国連アドホック委員会の準備作業に代表として参加しました。

障害者権利条約が2006年12月13日、ニューヨークの国連本部にて採択されました。これは21世紀初の包括的な人権条約であり、各国の総合的な組織によって署名のために開放された初の人権に関わる国際協定です。障害者権利条約は2008年5月3日に発効しました。

アジア地域事務局は世界ろう連盟の規約に従って、アジア地域のろう者が、他者との対等な人権を持てるよう、手話言語認知などの権利確立やネットワークの形成に取り組んでいます。これらについてアジア地域においても各国政府へ度重なる働きかけが課題となっています。

また連盟は1991年にアジアで初めて東京で世界ろう者会議を開催し、アジア地域に貢献しています。

アジアろう女性調査

連盟として、2014年6月から11月までアジア地域で暮らす、ろう女性の実態調査を実施しました。目的は、ほとんど情報がない生活実態を探るとともに、ろう女性の自立と参加、ネットワークづくりに向けてどのような活動、支援が必要なのか検討するためです。調査対象国は、ネパール、マレーシア、タイの3か国。

調査は国際委員会のほか、女性部と青年部の代表が加わり、女性メンバーを中心に進められました。

女性のろう児・者が十分な教育を受けることはとても重要であることから、調査は新規支援も念頭に行われました。

この調査について、2014年8月に開催された世界ろう連盟アジア地域事務局代表者会議(マカオ)の会期中に開催された「ろう女性の集い」で中間報告と意見交換を行いました。近い将来、アジア女性部を立ちあげ、ろう女性の権利を主張し、活動が拡大していくことを期待したいと思います。

災害救援活動

連盟としてアジア地域における災害救援を実施しています。国内でも数え切れないほど災害が起こり、その度に、情報が得られず苛立ち苦しんできた経験から災害時の不安を少しでも払拭するために、支援をしてきました。

近年では2015年4月25日にネパールで発生した地震は甚大な被害をもたらしました。ネパールろう連盟等関係者を通じて現地調査を行いました。やはり災害が起こった直後の現場は混乱し、6つのろう学校が被災、多くのろう者の家屋が被害を受けました。避難所や非常食などの情報も得られない状態でした。

これらの被害状況を把握、収集をする準備を行い、災害に対する予備知識やメンタル面の支援をするための講習会を計画したいと要請がありました。この要請を受けて連盟は日本各地で寄付金を集める活動をし募った寄付金を義援金として支援しました。

この他、地球温暖化や異変の影響から来る予測外の自然災害や不明病原体の発生など未曽有の危機が起こった際、お互いに助け合う支援をしていきます。

まとめ

連盟ではアジア地域において活動及び支援などを継続して行っていきます。これらの活動が支援モデルとなり、また、アジア各国のろう協会やコミュニティから学び、お互いを支え合うアジア地域の構築に尽力していきたいと思います。

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