[文科省]中教審「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して(答申)」をとりまとめ

令和3(2021)年1月26日、中央教育審議会は、第127回中央教育審議会総会において、「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」(中教審第228号)をとりまとめました。

本答申は、平成31(2019)年4月に文部科学大臣による「新しい時代の初等中等教育の在り方について」の諮問に答えたものです。初等中等教育分科会の下に置かれた「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」を中心に、約1年9ヶ月にわたって審議を重ねた結果です。

本答申においては「令和の日本型学校教育」の実現に向けて、これまでの日本型学校教育の良さを受け継ぎながら、更に発展させ、学校における働き方改革やGIGAスクール構想を強力に推進するとともに、新学習指導要領を着実に実施することが求められています。また、学校における授業の中で「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実することの重要性が示されています。

特別支援教育関連は、次のような内容になっています。

(1) 基本的な考え方
〇特別支援教育への理解・認識の高まり,制度改正,通級による指導を受ける児童生徒の増加等,インクルーシブ教育の理念を踏まえた特別支援教育をめぐる状況は変化
〇通常の学級,通級による指導,特別支援学級,特別支援学校といった連続性のある多様な学びの場の一層の充実・整備を着実に推進
(2) 障害のある子供の学びの場の整備・連携強化
① 就学前における早期からの相談・支援の充実
• 関係機関や外部専門家等との連携による人的体制の充実
• 幼児教育の観点から特別支援教育を充実するため,教師や特別支援教育コーディネーター,特別支援教育支援員の資質向上に向けた研修機会の充実
• 5歳児健診を活用した早期支援や,就学相談における情報提供の充実
② 障害のある子供の就学相談や学びの場の検討等の支援について
• 就学相談や学びの場の検討等を支援する教育支援資料の内容の充実
③ 小中学校における障害のある児童生徒の学びの充実
• 特別支援学級の児童生徒が,特別支援学級に加え,在籍する学校の通常の学級の一員としても活動する取組の充実,年間指導計画等に基づく教科学習の共同実施
• チェックリストの活用等による通常の学級に在籍する特別な支援を必要とする児童生徒の特性の把握・支援,在籍する学校で専門性の高い通級による指導を受けるための環境整備
• 通級による指導の担当教師等の配置改善や指導体制の充実
• 学校施設のバリアフリー化の推進に向けた学校設置者の取組支援
• 通常の学級,通級による指導,特別支援学級といった障害のある児童生徒の多様な学びの場の一層の充実・整備等
④ 特別支援学校における教育環境の整備
• ICTを活用した職業教育に関する指導計画・指導法の開発
• 必要な最低基準としての特別支援学校の設置基準策定,教室不足の解消に向けた集中的な施設整備の取組推進
• 特別支援学校のセンター的機能の充実や設置者を超えた学校間連携を促進する体制の在り方の検討
• 知的障害者である児童生徒が各教科等において育むべき資質・能力を児童生徒に確実に身に付けさせる観点から,著作教科書(知的障害者用)を作成
• 特別支援学校に在籍する児童生徒が,地域の学校に副次的な籍を置く取組の一層の普及推進
⑤ 高等学校における学びの場の充実
• 小中学校から高等学校への適切な引き継ぎを行い,個別の教育支援計画や指導計画の作成・活用による適切な指導・支援を実施
• 通級による指導の充実や指導体制,指導方法など,高等学校における特別支援教育の充実,教師の資質向上のための研修
• 本人や保護者が障害の可能性に気が付いていない場合の支援体制の構築
• 卒業後の進路に対する情報の引継ぎなど,関係機関等の連携促進
(3)特別支援教育を担う教師の専門性向上
① 全ての教師に求められる特別支援教育に関する専門性
• 障害の特性等に関する理解や特別支援教育に関する基礎的な知識,個に応じた分かりやすい指導内容や指導方法の工夫の検討
• 教師が必要な助言や支援を受けられる体制の構築,管理職向けの研修の充実
• 都道府県において特別支援教育に係る資質を教員育成指標全般に位置づけるとともに,体系的な研修を実施
② 特別支援学級,通級による指導を担当する教師に求められる特別支援教育に関する専門性
• 個別の指導計画等の作成,指導,関係者間の連携の方法等の専門性の習得
• OJTやオンラインなどの工夫による参加しやすい研修の充実,発達障害のある児童生徒に携わる教師の専門性や研修の在り方に関する具体的な検討
• 小学校等教職課程において特別支援学校教職課程の一部単位の修得を推奨
• 特別支援学校教諭免許取得に向けた免許法認定講習等の活用
③ 特別支援学校の教師に求められる専門性
• 幅広い知識・技能の習得,専門的な知見を活用した指導,複数障害が重複している児童生徒への対応
• 広域での研修や人事交流の仕組みの構築,教員養成段階における内容の精選やコアカリキュラムの策定
• 特別支援学校教諭免許状取得に向けた国による教育委員会への情報提供等の促進,免許法認定通信教育の実施主体の拡大検討
(4)関係機関との連携強化による切れ目ない支援の充実
〇関係機関等と家庭の連携,保護者も含めた情報共有,保護者支援のための連携体制の整備,障害の有無に関わらず全ての保護者に対する支援情報や相談窓口等の情報共有
〇地域の就労関係機関との連携等による早期からのキャリア教育の充実
〇特別支援教育を受けてきた子供の指導や合理的配慮の状況等の学校間での引き継ぎに当たり,統合型校務支援システムの活用などの環境整備を実施
〇個別の教育支援計画(教育)・利用計画(福祉サービス)・個別支援計画(事業所)・移行支援計画(労働)の一体的な情報提供・共有の仕組みの検討に向け,移行支援や就労支援における特別支援学校と関係機関との役割や連携の在り方などの検討
〇学校における医療的ケアの実施体制の構築,医療的ケアを担う看護師の人材確保や配置等の環境整備
〇学校に置かれる看護師の法令上の位置付け検討,中学校区における医療的ケア拠点校の設置検討

なお、外国人児童生徒等に対する特別な配慮等として、「障害のある外国人児童生徒等に対して,障害の状態等に応じたきめ細かい指導・支援体制の構築」、「障害のある外国人児童生徒等の在籍状況や指導・支援の状況把握」も取り上げています。
詳しいことは下のサイトをご覧ください。(寺島)
https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2021/20210126.html

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